旅色プラス
地方都市には“いいビル”が多く現存していますが、イベントごとや老朽化により一気に建て替えられてしまうケースも少なくありません。今回ご紹介する札幌の街もまた、2030年の札幌オリンピック誘致に向けて急速に再開発が行われています。
札幌の建築といえば、明治期の木造やれんがの洋風建築のイメージが強いですが、高度経済成長期に建てられたいいビルもたくさん。紅葉真っ盛りの北海道は、今、まさにビルさんぽにちょうどいい気候。しかも雪まつりシーズン前でお安く行けるとあっては、ビル旅をしない手はありません。
Text&Photo: 西村依莉
札幌の観光スポットとして知られる北海道庁といえば、明治期に建てられた赤れんが庁舎ですが、いいビル的には1968年築の新庁舎(本庁)をまずは推したいところ。まずは外観のかっこよさ。ファサード(建物の正面部分)いっぱいにびっちりと並んだ窓がとてもクールですが、枠が角アール(曲線デザインのこと)になっていてささやかな一手間が見て取れます。両サイドが開閉できる仕様の窓も好ポイント。
中に入ると吹き抜けのロビーがあり、その壁には開拓使設置以前から北海道開拓の基盤が確立された時代(1800年代初頭〜1900年代初頭ごろ)までを模したレリーフが。
まさに、北の大地の豊かな恵みと、その礎を作った開拓者たちの物語に思いを馳せるための場所です。
階段の壁のタイルの貼り方もランダムに縦ラインのアクセントが入り、利用者を飽きさせません。別の階段室(階段だけが設けられた空間)はアール使いの有機的なデザインになっているのでそちらもぜひチェックを。
特筆すべきは2階の壁のタイル! 雪の結晶を思わせるハニカム(正六角形を隙間なく並べた構造のこと)タイルなのです。それに加えて柵の形がまたキュート。雄々しさとかわいらしさが絶妙なバランスで混じり合う新庁舎の設計をしたのは久米設計。とにかく北海道庁新庁舎は、個人的には赤れんが庁舎に勝る名建築だと思います。
◆北海道庁
住所:北海道札幌市中央区北3条西6丁目
電話:011-231-4111(大代表)
アクセス:JR札幌駅から徒歩約8分
ブラウンのタイルに白いパイピングが効いた過剰な数の窓が、生クリームをあしらったチョコレートケーキを彷彿させる北陸銀行札幌支店。1966年に建てられたこの店舗は、北欧調のデザインを意識したもの。テレビ塔と大通駅のすぐそばという、見に行きやすい場所も嬉しい。屋上には札幌に縁ある彫刻家の山内壮夫氏が製作したオブジェ「鶴の舞」で華やかにデコレーションされています。高度経済成長期らしい有機的でモダンなデザインでかっこいい! このオブジェは、札幌支店にしか設置されていないので建物と併せてぜひチェックを。
それにしても、なぜ札幌なのに北陸の銀行? というと、古くから北陸からの移住者が多く、1910年(明治43年)に十二銀行札幌支店として開業し、100年以上この街で根を張った営業をしてきたから。他の北陸銀行の建物が軒並みいいビルというわけでもなく、札幌支店だけがずば抜けておしゃれなチョコレートケーキなので、ビル好きのみならずスイーツ好きも(?)必見です。
◆北陸銀行札幌支店
住所:札幌市中央区大通西2-5
電話:011-241-7531
最後にご紹介するのは、札幌パークホテル。北の大歓楽地・すすきのの先、中島公園のほとりに建つ青いタイル張りの建物は、この辺りのランドマーク的存在です。端正なこのホテルの外観は、小田急百貨店やアンスティチュ・フランセ東京、中産連ビルなどで知られる建築家・坂倉準三氏の設計。ぽってりとしたかわいらしいホテル名とロゴ、スリットが入った塔屋(建物の屋上に突き出した部分)、各階で位置をずらした窓、そして目の覚めるような青いタイル! 重厚なのに清々しさも感じる佇まいに、思わず見入ってしまいます。
外壁のタイルは有田焼で、1年に渡ってテストを行った、積雪寒冷地という気候に耐え得るもの。まめなメンテナンスで竣工当時と変わらない美しさを保っています。
(写真提供:札幌パークホテル)
ラウンジ「パーククラブ」は竣工当時から変わらぬ内装。宿泊客だけでなくビジターも利用可能なので、ちょっと背伸びしておしゃれな夜を過ごしたい時にぴったりです。
中島公園近辺は、札幌の中でも再開発著しいエリアのひとつ。パークホテルもどうなるかわからないので、今のうちに泊まっておきたい!
◆札幌パークホテル
住所:札幌市中央区南10条西3-1-1
電話:011-511-3131(代表)
チェックイン:14:00
チェックアウト:11:00
営業時間:17:30~23:00(LO22:30)会員制クラブ パーククラブ
アクセス:地下鉄南北線中島公園駅から徒歩約1分
札幌は地下街が広く、寒い時期はついそちらを歩いてしまいますが、札幌駅からすすきの方面にかけては、とってもビルさんぽのし甲斐があるコース。 【関連記事】今見るべき! 高度経済成長期生まれな東京の“いいビル”【連載第1回】 絶えず新陳代謝し続けている東京の街。高度経済成長期(1950-70年代)は日本独自のデザイン... 【関連記事】今見るべき! 高度経済成長期生まれな中野の“いいビル”【連載第2回】 高度経済成長期に建てられた“いいビル”を求めて街を歩くと、見慣れた風景がいつもとは違って... 【関連記事】今見るべき! 高度経済成長期生まれな浅草橋の“いいビル”【連載第3回】 街を歩けば大体出合える、高度経済成長期に建てられた“いいビル”。東京オリンピックに向けて...
今回ご紹介した3ビルがツボな方には、北海道庁新庁舎と同じ久米設計が手がけた札幌グランドホテル(1966年築、以下同)や札幌三越(1971年)、札幌市役所(1971年)などもおすすめ。雪の結晶を思わせるタイルの張り方で、その遊び心に嬉しくなります。床といえば、書籍『足の下のステキな床』(グラフィック社)でも紹介している北海道ビル(1962年)は、1階のハニカム張りにしたテラゾー(大理石のように仕上げた人造石のこと)の床も見ごたえのあるかっこいい床なので、中に入っている喫茶店でお茶しがてらチェックしてみてください。
◆西村依莉(にしむら・えり)
フリーランスの編集者・ライター。東京ビルさんぽメンバー。ファッション誌・ライフスタイル誌を中心に活動しつつ、高度経済成長期のステキな建築や街の風景を日々記録している。グラフィック社から『足の下のステキな床』『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』(共著)、大福書林から『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(東京ビルさんぽ)が発売中。
旬な旅行・グルメ・旅ファッション情報や連載コラムを毎日配信する、女性向けニュースメディア。
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