浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。幻想的な宿泊体験を切り取る写真連載。第34回は、文化薫る庭園、そこにただよう東京とは思えない雲海、居心地のよい客室……夢うつつのようなホテルです。
写真家 浅田政志の宿旅
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標高約15メートルの“東京雲海”

Vol.34「 ホテル椿山荘東京」東京都文京区

第3代、第9代内閣総理大臣・山縣有朋の庭園、邸宅として生まれた椿山荘。2022年11月の開業70周年を記念し、特殊なミストで雲海を作り出す演出が人気です。ちなみにミストは雲の粒子と同じサイズ。東京の真ん中で、雲の中に入れます。
マスク越しでも伝わる「ようこそ」
ドアマン・須賀さんいわく、「お客様がホテルで一番最初に会い、最後に会うスタッフでもあるというのは心に留めています」。常連さんのお顔や車のナンバーを覚え、お客様から激励や感謝のお手紙をもらうほど心を掴むホスピタリティは、マスクでも隠しきれません。
WELCOME TO MY HOME
優美なインテリアは、「第2の我が家としてくつろいでほしい」という思いから。ロビー奥の、緑色の大理石が敷き詰められた階段も、華美すぎず落ち着いた雰囲気。スタッフも親しみやすく、ほっと心が落ち着く空間が広がります。
シンボル
山縣有朋が愛した樹木や建物は東京大空襲で喪失する一方、危機を免れたのが御神木。いまもホテルの主として、この地を見守っています。庭園には施設名の由来ともなった椿も多数。その数、約100種2300本。高低差のある庭には、外界の音がほぼ届かず、別世界のようです。
3時のおやつ
庭園を望むロビーラウンジ「ル・ジャルダン」で人気のアフタヌーンティー。季節ごとの食材を使い、目も舌も楽しませてくれます。そのなかで不動のエースは、約30年間変わらぬレシピのスコーン(プレーン)。どうぞ期待してください。決して裏切らない味です。
東京の、新“冬の風物詩”
日が落ちたあとは、「東京雲海」で使用しているミストに特殊なライトを当てて、オーロラを出現させる演出を。庭園から見上げれば、実際に見たことはなくても、きっとオーロラです。ゆらゆら美しい光のカーテンは、雨でも楽しめます。ちなみにオーロラは3月18日まで。
ここがオアシス
庭園を堪能したら、客室へ。お部屋のタイプのほか、庭園を望むガーデンビューと、都心を見渡せるシティビューと眺望の希望を伝えましょう。また、客室ではルームサービスでディナーを食べることもできるので、寝室であり、レストランであり、プライベート展望台でもあります。
宿泊者だけの、大雲海
翌朝は少し早く起きて、雲海を見下ろしてみましょう。22:00以降、翌朝の7:00台には通常より多くの霧が発生し、庭園の2/3を覆う「大雲海」が出現。庭園のみならずほとりの料亭の屋根まで及ぶ大雲海が望めるのは、宿泊者だけのお楽しみです。

「ホテル椿山荘東京」

南北朝時代より椿の名所として知られた場所に、山縣有朋公が庭園と邸宅を構えたのが椿山荘の始まり。以来「人々のオアシスでありたい」という思いで、ゲストに寄り添ったおもてなしを心がけ、それが支持され親子三世代で訪れる人もいるほどです。専任の庭師が手掛ける庭園は自然の森のようなおおらかさと美しさを兼ね備えるだけでなく、季節ごとに7つの絶景を演出しており、季節を通じて訪れる楽しみもあります。

住所 / 東京都文京区関口 2-10-8
料金 / 1泊58,300円~(サービス料別)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2020年、『浅田家!』として映画化された。著書に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)など。また、国内外で個展やグループ展を精力的に開催している。水戸芸術館で個展「だれかのベストアルバム」が開催中(~5月8日[日]まで)。
http://www.asadamasashi.com/