東北~北海道を巡る縄文旅は
フィールドを使った天体ショー
「行けるものならいつでも行きたい」と思っている、世界遺産に指定された北海道・東北の縄文遺跡群をたどる旅をおすすめします。厳選しましたがどこも外せず、1泊2日で1道2県を巡る行程になってしまいました…!
この旅プランでは、「合掌土偶」と「中空(ちゅうくう)土偶」という2つの国宝が見られます。特に「合掌土偶」は、膝を抱えながら、手を組んでいる姿が本当に愛らしい。それに、腕や足が細いため、折れずに完全な状態で出土しているというのも珍しいんです。あと、「伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡」で見られる手乗りサイズの「笑う岩偶」がすごく好きで、めちゃくちゃかわいいんですよ。これは岩製なので、鹿の角とかクジラの骨とかを研いで削り出していて。「一個作るのにどれだけ時間がかかってるんだ…!」ってことも、想像します。
博物館に行くとオモロイのは、土偶や岩偶の造形美の楽しさもあるんですけど、それを作ったであろう道具も見られるから、感動が増していくんですよね。さらに、“あそこにある大きな川が氾濫するから、丘に集落があるんだな”とか、“あっちに見える大きな山が信仰の対象になる山か”といったように、遺跡周辺の地形から縄文人たちの暮らしぶりが想像できるんです。「大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)」では、ストーンサークルから登ってくる太陽の位置で季節を計っていたという説もあって。これらすべてが縄文人にとっては自然の中で生きるための知恵だったと思いますが、私たち現代人にとっては、“フィールドを使った天体ショー”。大地や自然といったフィールドで、視覚や全身を使って遊べる旅を体感してほしいですね。
「伊勢堂岱遺跡」
縄文時代後期前葉の環状列石をメインにした遺跡。4つの環状列石が発見されているのは国内ではここだけ。また、環状列石がある段丘端部からは、白神山地などの美しい景色が見られる。遺跡に隣接する「伊勢堂岱縄文館」では、土偶やキノコ形土製品をはじめ、縄文人が祭祀、儀礼に使っていた道具など、周辺で出土した展示物が見られる。
【住所】秋田県北秋田市脇神字小ケ田中田 100-1
【TEL】0186-84-8710
【営業時間】9:00~17:00 ※遺跡は11月~4月下旬まで冬季閉鎖
【定休日】月曜日(祝・休日の場合は翌日)
★ 板状土偶は見逃せません! 土偶は立体的なものが多いのですが、ここの土偶は、ものすごく薄い板状になっているので、一見の価値があります
★ 遺跡を散策できる野外博物館にもなっているので、ミュージアムの展示品と合わせて見学すると、この地域の縄文文化や生活などが感じられますよ
「大湯環状列石」
大湯川の沿岸、標高約180mの台地にある、約4000~3500年前の遺跡。最大径44mの野中堂環状列石と、最大径52mの万座環状列石の2つの環状列石があり、荘厳な雰囲気が感じられる。ガイダンス施設の「大湯ストーンサークル館」が併設しており、遺跡についてのパネルや、ここで発見された遺物など展示されている。
【住所】秋田県鹿角市十和田大湯字万座45
【TEL】0186-37-3822
【営業時間】〈4月~9月〉9:00〜17:30〈10月〉9:00〜16:30 ※公開範囲を制限、〈11月〉9:00~16:00 ※11月中旬~4月中旬は冬季閉鎖
★ ストーンサークルだけでなく、復元された掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)跡や日時計状組石なども見られるので、本当に縄文人の集落があったということや当時の暮らしを感じることができます
★ ここにも、素敵な土偶がたくさん展示されています。そのなかでも、小さくてかわいらしい板状土偶には、ぜひ会ってほしいです
撮影/山下陽子、取材・文/小松孝裕(エンターバンク)、ヘアメイク/NEMOTO(HITOME)、スタイリスト/上野健太郎(KEN OFFICE)