国の特別名勝に指定されている栗林公園
テーマのある旅 大名庭園で楽しむ紅葉
幻想的に彩られた旅のひととき 大名庭園で楽しむ紅葉

幻想的に彩られた旅のひととき 大名庭園で楽しむ紅葉

約300の藩があったとされる江戸時代、大名たちは江戸や各藩の屋敷に庭園を築造しました。江戸時代に確立された回遊式庭園は敷地内に山や川、滝や樹木があり、四季折々の風情を感じさせます。10月下旬~11月になると、モミジやイチョウが紅色や黄金色に染まり、諸大名たちが作り上げた庭園はさらに魅力を増します。そんな大名庭園に訪れて紅葉を楽しみながら、秋の深みを感じる旅に出かけてみませんか。

文/松尾好江(ランズ)

偕楽園
約170本のモミジやカエデが並ぶもみじ谷は、歩道が整備されているので鑑賞しやすい

Spot01 約170本の紅葉が彩る 偕楽園

茨城県水戸市
偕楽園
昭和33(1958)年に復元された好文亭
偕楽園
11/5(金)~11/21(日)は、日没から21時までライトアップされ、多くの人でにぎわう

日本三名園のひとつでもある偕楽園(かいらくえん)は、天保13(1842)年に水戸藩9代藩主・徳川斉昭によって水戸城下郊外に造られました。中国の古典『孟子』の一節「古の人は民と偕(とも)に楽しむ、故に能(よ)く楽しむなり」から偕楽園と名付けられ、園は堀などで囲まれることなく、広く領民に開かれていました。本園エリアの木造2層3階建ての「好文亭(こうぶんてい)」は、斉昭自らが設計し、領内の人を集めて詩歌などを楽しんでいたそう。本園エリアから沢渡川を挟んだ護国神社の南西には、「もみじ谷」が広がります。5種類のモミジと10種類のカエデが11月上旬から色鮮やかに染まり出します。シーズン中は日没から21時までライトアップが実施されているので、幻想的な雰囲気が楽しめます。

偕楽園 住所/茨城県水戸市見川1-1251(偕楽園公園センター)
開園時間/7:00~18:00(10月~2月中旬)、6:00~19:00(2月中旬~9月)
休/好文亭は12/29~12/31
料金/300円(茨城県民は無料。梅まつり期間は有料)
アクセス/電車:JR常磐線水戸駅からタクシーで約10分、車:常磐自動車道水戸ICから約20分
電話/029-244-5454(偕楽園公園センター)

偕楽園
偕楽園の正門「好文亭表門(こうぶんていおもてもん)」は、創立当時の面影を残している
西之丸庭園
8217平方メートルある広い庭の至るところで紅葉が鑑賞できる
和歌山県和歌山市

Spot02 城郭内の紅葉園 西之丸庭園

和歌山城内、虎伏山(とらふすやま)の斜面と、山から湧く泉を利用した池泉回遊式の西之丸庭園(にしのまるていえん)は、江戸時代初期に作庭されたといわれています。また、西之丸庭園は別名「紅葉渓庭園(もみじだにていえん)」と呼ばれ、名前の通り、秋が一番美しい景色を楽しめるのです。ビュースポットのひとつ、堀のそばに建つ釣殿風の建物「鳶魚閣(えんぎょかく)」とともに見る紅葉はさらに風情を感じます。また江戸時代、この庭園は殿様が風雅を楽しむ場所だったため数寄屋がありました。現在は、松下幸之助氏の寄附によって建てられた数寄屋造りの茶室「紅松庵」があり、落ち着いた空間で抹茶とお菓子を味わえます。

西之丸庭園 住所/和歌山県和歌山市一番丁3
開園時間/9:00~17:00(入園は~16:45まで)
休/12/29~12/31
アクセス/南海本線和歌山市駅から徒歩約10分、車:阪和自動車道和歌山ICから約15分
電話/073-435-1044(和歌山城整備企画課)

西之丸庭園
池に佇む姿が優雅な鳶魚閣
西之丸庭園
和歌山市出身の松下幸之助氏の寄附によって建てられた紅松庵では、お茶とお菓子(セットで470円)を楽しめる
西之丸庭園
西之丸庭園と二の丸大奥をつなぐ御橋廊下は、両岸の高低差により斜めにかかる珍しい橋。藩主と一部のお付きのみが通行を許されていた
栗林公園
飛来峰からの眺め。紫雲山と庭が一体となり、スケールの大きな景色は圧巻

spot03 船から黄金に輝く紅葉を望む 栗林公園

香川県高松市
栗林公園
カエデが多く植えられた道「楓岸」。11/19(金)~11/28(日)のライトアップ期間中はまた違った表情を見られる
栗林公園
広さ約7890平方メートルの南湖を和船で巡り、
風情ある時間を

江戸時代の大名庭園「栗林荘」を始まりとする栗林公園(りつりんこうえん)は、東京ドーム3.5個分の広さをもつ日本最大級の庭園。初代高松藩主の代から庭造りが着手され100年以上をかけて完成されました。紫雲山(しうんざん)を背景に、園内には6つの池と13の築山を有しています。富士山を見立てて造られた築山「飛来峰(ひらいほう)」は、偃月橋(えんげつきょう)や南湖を望む絶景ポイント。歴代の藩主も楽しんだといわれる南湖周遊和船に乗って、楓岸(ふうがん)の紅や黄色に色づくカエデや、水面から庭園の景色を約30分かけてゆっくりと楽しむのもおすすめです。南湖のほとりに建つ、17世紀後半建造の数寄屋造りの「掬月亭(きくげつてい)」は床が低く造られているので、まるで湖面から庭園を眺めているような雰囲気を味わえます。

栗林公園 住所/香川県高松市栗林町1-20-16
開園時間/6:00~17:30(10月)、6:30~17:00(11月)季節によって変動あり
料金/410円
アクセス/JR高徳線栗林公園北口駅から徒歩約3分、車:高松自動車道高松中央ICから約15分
電話/087-833-7411(栗林公園観光事務所)

栗林公園
園内のどこからでも出入りができる数寄屋造りの掬月亭は、床が低く、
手を伸ばせば湖面に触れられそうな雰囲気
水前寺成趣園
池を中心に築山、浮石、松などを眺めながら散策できる
熊本県熊本市

spot04 赤と緑のコントラストが美しい 水前寺成趣園

寛永9(1632)年、肥後細川家三代で初代熊本藩主・細川忠利が御茶屋を置いたのが始まりといわれる優美な回遊庭園。庭園の中央の池の面積は約1万平方メートルで、阿蘇山の清らかな伏流水を湛えています。昭和4(1929)年に国の名勝・史跡に指定され、今年築庭350年を迎えました。11月中旬以降、鮮やかな赤色の紅葉と緑の残る木々が混ざり合い、美しいコントラストの景色を鑑賞できます。池の西側には、大正元(1912)年に京都御苑の八条宮家邸内から移築された「古今伝授の間」が建ち、萱葺の屋根に加えて周囲の紅葉の姿が趣を感じさせます。園内の出水神社(いずみじんじゃ)は肥後細川家初代細川藤孝や細川ガラシャ、歴代藩主を御祭神としています。

水前寺成趣園 住所/熊本県熊本市中央区水前寺公園8-1
開園時間/8:30~17:00(入園は~16:30まで)
料金/400円
アクセス/電車:熊本市電健軍線水前寺公園駅から徒歩約3分、車:九州縦貫自動車道益城熊本空港ICから約15分
電話/096-383-0074

水前寺成趣園
紅葉した木々と緑が残る部分の両方を楽しめる園内
水前寺成趣園
京都御所から移築された古今伝授の間。お茶と和菓子をいただける
水前寺成趣園
明治11年創建の出水神社は歴代の細川藩主らを祀っている