先代がこの景色に惚れ込み、露天風呂をつくったそう。都を落ちた平家が隠れた場所ともいわれています。
いまはただ静やかな時間が流れる里山の風景があります。
ホテルのシンボルは、昔懐かしい「ボンネットバス」。ルームキーのキーホルダーにもなっています。
このバスが誕生したのは、なんと50年以上前。きちんと整備され、今も団体向けの送迎車として現役です。
クラシックなバスに揺られれば、時空さえも飛び越せそうです。
東洋文化研究家のアレックス・カーが紹介したことから世界的な知名度も高い祖谷。同ホテルにも年間約50か国以上から観光客が来るそう。出身国に国旗のピンを指してもらう世界地図にはすでに旗がぎっしり!
「露天風呂まで少し遠いから」と設置されたのは小屋型のケーブルカー。エレベーターガールはいませんが快適にいざなってくれます。
湯上がり休憩所「半兵衛の家」は昔ながらの茅葺屋根。
夏でも毎日囲炉裏に火をいれることで雨漏りなどが防げるそう。
煙にいぶされた障子がオレンジに染まり、昔話の世界のようです。
ケーブルカーで上がったところには絶景が望める足湯も。さらに双眼鏡があり、覗いた奥には……ぜひご自身の目で確かめてください。
各客室には「天神(てんじん)」や「吾橋(あはし)」など
周辺の地名や集落の名前がついています。
それぞれの読み方はぜひスタッフに。
宿の食事は、昔ながらの郷土の味。串にそば団子、堅豆腐、こんにゃくを刺して自家製の味噌だれを塗った「でこまわし」。つなぎをほぼ使わず、うどんだしのような汁で食べる「祖谷そば」。華やかさはないけれど、ここにしかない味が待っています。
つる状のシラクチカズラでつくられた名所「祖谷のかずら橋」を訪れた人が、そのまま別の場所に流れてしまうことを残念に思った先代が創業した宿。ケーブルカーであがる天空露天風呂が名物で、お湯だけでなく絶景にも癒されます。貸し切り露天風呂や足湯もあり、ゆったりと滞在するのがおすすめ。お風呂上がりは囲炉裏のある食事処で祖谷の郷土料理を。親戚の家に泊まっているかのような居心地のよさが魅力です。
住所 / 徳島県三好市西祖谷山村善徳33-1
電話 / 0883-87-2171
料金 / 1泊2食付 1名16,000円(サービス料込、税別)
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。『浅田家』をもとにした映画『浅田家!』が2020年10月2日(金)公開予定。著書に、『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。国内外で個展、グループ展を精力的に開催している。