【滋賀】 北国街道 木之本宿 で「本」にゆかりのあるスポットをめぐる旅
歴史旅を連載する旅色LIKESライター・長月あきです。江戸時代、近畿と北陸を結ぶために幕府によって整備された北国街道。その街道沿いに栄えた宿場町である、滋賀県長浜市の木之本は、昔の面影をあちこちで感じられる町です。JR木ノ本駅から街道周辺を散策してみると、「本」にまつわるスポットが複数あることに気づきます。そのひとつで、以前ご紹介した私設図書館「江北(こほく)図書館」の建物が令和6(2024)年3月、国の登録有形文化財に登録されました。今回改めて訪れ、魅力的だった木之本の「本」スポットを5つご紹介します
目次
地域住民が守り続ける「江北図書館」が国の登録有形文化財に
江北図書館はJR西日本北陸本線「木ノ本駅」のすぐ近くにあります。明治35(1902)年に設立された杉野文庫を前身に、明治39(1906)年に誕生した私設図書館で、滋賀県内に現存する最古の図書館になります。開設以降、本と本棚を抱えながら、空き物件への引っ越しを繰り返していた同館は、現在の建物に、昭和50(1975)年に移転しました。国の登録有形文化財に登録されたこの建物は、昭和12(1937)年に、もと伊香郡農会の庁舎兼公会堂として建てられた建物です。文化財として、歴史的価値を認められた建物と、長い歴史を持つ江北図書館の組み合わせはとてもしっくりきます。
前回の記事で「古い本と建物が醸し出す空気感だけでなく、館長やスタッフの方の柔らかで朗らかな雰囲気、この図書館を愛する方々の思いが居心地の良さを作っているよう」と書きました。何度か訪れていますが、いつも同じことを感じます。今回の訪問では、お父さんと一緒に本を借りにきたお子さんに「返却は2週間後です。でも期限より遅くなっても別にいいからね。ゆっくり読んでね」と話しかけるカウンターのスタッフさんを見かけました。こんな温かい図書館のある地域で育つ子どもたちが羨ましい……。
さらに、クラウドファンディングなどで集まった資金を使い、令和6(2024)年3月31日に図書館の南隣に新館「Lib+」(リブプラス)がオープンしました。館内は本の閲覧室だけでなく、サラダパンで知られる「つるやパン」(本店が木之本町)のテイクアウト専門店「つるやカフェ」が併設。江北図書館と「つるやパン」がコラボした絵本『パンやのポポさん」に登場するパンが同店限定で販売されていました。新館の完成により、図書館が地域の集いの場になり、ますます素敵な場所になる予感がします。
◆江北図書館
住所:滋賀県長浜市木之本町木之本1362
電話番号:0749-82-4867
開館時間:10:00~16:00
休館日:火・水曜日、12月29日~1月4日
◆つるやカフェ
住所:滋賀長浜市木之本町木之本1362(江北図書館 別館)
営業時間:10:00~16:00
定休日:火・水曜日
滋賀に関する書籍が充実「本のセレクトショップ ますや書店」
「湖北と観音と街道の本」というのれんの掛かった、北国街道沿いの本屋さん「本のセレクトショップ ますや書店」。「北近江」「観音さま」「街道」をキーワードにした、本のセレクトショップです。店内には、テーマに沿った本や地域情報紙のバックナンバーなどがずらり。最近、こういった地域やテーマを絞り込んだ個性派の小さな本屋さんが気になり、旅先で見つけるとつい立ち寄ってしまいます……。今回も次の旅の参考になりそうな本がたくさんあり、ついつい手に取り買ってしまいました。店内には座って本が読めるコーナーも。
◆本のセレクトショップますや書店
住所:滋賀県長浜市木之本町木之本1066
電話番号:0749-82-2039
営業時間:平日9:00~18:00 、 土・祝日10:00~17:00
定休日:日曜日
本屋さんの自家製郷土料理?「いわね書店」
外観は地方でよく見かける昔ながらの本屋さんですが、本以外にも、書店を切り盛りするおばあちゃんが作る自家製の郷土料理を販売している書店です。地元に伝わる発酵食「にしんと大根のこうじ漬け」を購入したことがあるのですが、今回は店頭に並んでいた「えび豆」を購入してみました。えび豆は滋賀県湖北地域の郷土料理で、大豆とスジエビを甘辛く炊いたおそうざいです。琵琶湖のエビと、湖北産の大豆や醤油を使ったまさに地元の味。
軒先の看板に出ていた「食べる甘酒」も気になりお店の方に伺ってみたところ、最近の新商品で濃い麹甘酒を凍らせたものでシャーベットのように食べるのだとか。飲む美容成分とも言われる甘酒。食べたい……!冷凍販売だそうなので次回はクーラーバッグを持っていきます。
◆いわね書店
住所:滋賀県長浜市木之本町木之本1115
電話番号:0749-82-2226
定休日:日曜日
地元主婦たちが営む憩いの場「book cafe すくらむ」
木ノ本駅から徒歩約3分の古民家を利用して営業している「book cafe すくらむ」。「book cafe」というだけあり、レトロな雰囲気の店内にはあちこちに本がずらり。本は自由に読むことができ、気に入った本は購入も可能です。
地元の主婦が協力して経営し、地元の季節の食材を活かした郷土料理をランチで提供しています。野菜たっぷりのランチは1,430円。4月のメインは古漬け白菜を入れた旨味たっぷりの「おかん自慢の手作り春巻き」か、塩糀を入れた地元の酒蔵の酒粕をペーストにし、とりももを漬け込んだ「塩糀酒粕の唐揚げ」を選択できました。ワンプレートに盛り合わされた一品一品が滋味深くおいしい! 予約して行く価値ありです。以前は週末にカフェ営業もしていたそうですが、コロナ禍以降は行っていないようです。営業日以外には1万円以上の注文で貸し切り営業を行ったり、お弁当販売もしたりしているそう。
◆book cafe すくらむ
住所:長浜市木之本町木之本1312-2
営業日:第2土・日曜日 ※月別予約専用フォームから要予約
復活希望? 木ノ本駅の待合室に設置された「まちあい文庫」
半年ほど前、木ノ本駅の待合室の中で見かけた「まちあい文庫」。幅広いジャンルの本が並ぶこの本棚は、鉄道旅のお供に本を借りられるコーナーです。貸出期限に決まりはなく、借りる人が自分で名前と本のタイトル、返却予定日を貸出カードに書き込んで借りるスタイル。名前はペンネームでもOKという緩さと、「~の本といっしょに旅にでます」という貸出カードが、なんだかとても温かいのです。
現在は駅構内にある、観光案内所併設の産地直売所「ふれあいステーションおかん」が改装工事のため、5月中旬まで待合室が観光案内所として使用されています。4月に訪れた際に、ぱっと見たところ、このコーナーが見当たりませんでした。わたし自身がここで本を借りる機会はないと思いますが(いつも車で来るので)、素敵なコーナーなので、改装工事終了後にまた復活することを願います。
おわりに
木之本宿の「本」にまつわるスポットを5つ紹介しました。色々な時代の古い建物やお店がいくつも残る木之本宿は、JRの駅から近く、徒歩で散策しやすい範囲内だけでも、見どころがいくつかあります。よかったら以前の記事も参考にしてみてくださいね。