富士山周辺の観光を堪能! 鉄道旅ライターが行く、富士急行旅【山梨】
愛読書は時刻表、旅色LIKESライターの鉄道旅担当・なおです。段々と暖かくなり、今年の富士登山シーズン(7月上旬〜9月上旬)も近づいてきました。今回は「富士山に一番近い鉄道」富士急行線に乗って富士山が見える神社や温泉など沿線の観光スポットを巡る旅をご紹介します。
目次
こんにちは、旅色LIKESライター・鉄道担当のなおです。
今回、わたしは富士山の麓にある山梨県大月市にやってきました。天気も良く一日中富士山がはっきり見える「富士見日和」です。大月駅から河口湖駅に向かう富士急行線に乗って、富士山の見えるビュースポットに行ってきました。
富士急行線とは
富士急行線は山梨県内を走る唯一の私鉄です。JR大月駅から富士山駅を経由し、河口湖駅まで26.6キロメートルを結びます。元々は富士急ハイランドを運営している富士急行株式会社が運営していたので、“富士急行線”と名付けられました。令和4年4月に富士山麓電気鉄道株式会社をつくり分社化しましたが、線名などの変更はなく富士急行線と呼ばれています。
列車は富士急行線内だけを走ることが多いですが、一部はJRへの乗り入れも行っています。なかでも、特急「富士回遊」はJR新宿駅から河口湖駅まで直通運転を行うので、東京方面からの旅行に非常に便利です。新宿駅に行ってみると、多くの外国人観光客が列車の出発を待っていました。今回の旅は月曜日だったということもあって列車、旅先にいた旅行客は殆ど外国人。インバウンドの拡大を肌で感じました。
◆特急「富士回遊」
運転区間:新宿駅(一部は千葉駅)~河口湖駅まで
運転日:毎日
絶好の富士山ビューを楽しみながらローカル線の旅
富士急行の起点となる大月駅は特急あずさ・かいじ号で新宿駅から1時間ほどで行くことができますし、中央線快速電車でも1時間半ほどで到着します。東京からアクセスしやすいのが魅力の駅です。
大月駅から乗った車両はトーマスを全面にあしらった車両でした。富士急ハイランドにあるトーマスランドとタイアップしているそうで、トーマスファミリーが至る所に登場します。
富士急行線は日本で最も富士山の近くを走る鉄道です。駅からも、列車に乗りながらでも富士山を眺めることができます。
世界的に有名な桜の名所・新倉山浅間公園へ
大月駅からトーマス列車に揺られて40分ほどで下吉田(しもよしだ)駅に到着しました。地元・富士吉田市出身のバンド・フジファブリックのボーカル・志村正彦さんのパネルがあり、列車接近音にフジファブリックの楽曲が採用されています。私はここで下車、ほかにも多くの乗客が降りていました。目的は、歩いて10分ほどのところにある世界的に有名な桜の絶景ポイントです。
それが、新倉山(あさくらやま)浅間公園。わたしが訪ねた4月中旬は桜が見ごろ、平日でしたが多くの観光客で賑わっています。新倉山は手前に鎮座する新倉山浅間神社の神域です。参拝も忘れずにするようにしましょう。
石段を登りながら時折振り返ると、富士山と桜の見事なコラボレーションを望むことができます。「咲くや姫階段」とよばれる階段は398(さくや)段。結構な階段で姫っぽさはありませんが、頑張って登ります。ここまでも桜の富士山のコラボは見ごたえのある景色だったのですが、この先更なる絶景が待ち受けているのです。
展望台から富士山と桜、五重塔が一度に見ることができます。富士山は天気が悪いと見ることはできず、見られるのは年に数日だけだそうで、今回見られて本当に運がよかったです。ここに来る方の多くは海外からの観光客。山梨県がタイの旅行会社にPRしたことで海外から人気に火がつき、今では欧米や中国からの観光客も多くなっています。千載一遇のチャンスにかけて来ているでしょう。今年の桜のシーズンは終わってしまいましたが、来年の花見候補の場所としてぜひ押さえておきたいスポットです。また、11月ごろからはもみじの紅葉も楽しめますよ。
◆新倉山浅間公園
住所:山梨県富士吉田市浅間2丁目4-1
喧騒を離れ鄙びた温泉で休憩を
新倉山浅間公園を後にして下吉田駅から再び富士急行線に乗車、ひと駅大月駅方面に戻って葭池(よしいけ)温泉前駅で下車しました。さっきまでの喧騒が嘘のように、ほとんど人がいません。ここには知る人ぞ知る日帰り温泉施設があるので小休止したいと思います。
駅から徒歩3分ほどのところにありました。江戸時代末期、安政3年に創業したという葭之池(よしのいけ)温泉です。今は日帰り温泉のみですが、戦前までは旅館で宿泊客を受け入れていました。駅名は「之」は入らず、名称が若干異なります。
お風呂は4人ほどがゆったり入れるような広さで、泉質は癖がなくさっぱりとしていました。窓の外に広がる自然を一人占めしているような、すごく得した気分に浸りながら堪能できます。休憩所は、なんだか田舎のおばあちゃんの家に遊びに行ったかのような雰囲気。懐かしさを感じます。ゆっくりしに来たい、と思える温泉でした。
◆葭之池温泉
住所:山梨県富士吉田市下吉田6698
電話:0555-22-3362
営業時間:9:00~21:00 ※火曜日のみ~17:00
定休日:水曜日
料金:2時間大人 750円、1日利用大人1,500円 ※夜間料金など別途設定あり
アクセス:葭池温泉前駅徒歩約3分
富士山駅から歩いて吉田のまちを巡る
再び列車に乗って河口湖駅方面へ。富士急行線最大の駅、富士山駅に到着しました。もともとはまちの名である富士吉田駅という名前でしたが、平成23年富士山への観光拠点として活用してもらおうと富士山駅に改名しました。
富士山駅に河口湖駅から来た「フジサン特急」がやってきました。特急「富士回遊」とは異なり富士急行線内のみの運転。もとは小田急電鉄の「小田急ロマンスカー」として活躍しました。様々な表情の富士山を車体に描く斬新なデザインは、見ているだけで楽しくなってきますね。
富士山駅の駅ビルの屋上は展望台になっていて、富士山を眺めることができます。あまり知られていないのか、人の少ない穴場スポットですよ。電車の待ち時間も富士の絶景を楽しんでいってください。
◆Q-STA 富士山展望台
住所:山梨県富士吉田市上吉田2丁目5-1 Q-STA6F
電話:0555-23-1111
営業時間:9:30~18:30
定休日:年中無休
富士吉田名物・吉田うどんをいただく
ちょうどお昼時だったので、富士吉田名物の吉田うどんをいただくことにしました。訪ねたのは「麺許皆伝(めんきょかいでん)」。平日だというのに人が大勢並んでいる人気ぶりです。
天ぷら冷やしうどんを注文すると、驚くほど大きな天ぷらが出てきました。これで650円はリーズナブルです。吉田うどんの特徴であるやわらかいのにしっかりコシのある麺は、讃岐うどんとはまた違った食感で食べ応えがありました。気持ちのいい接客も人気の秘訣です。
◆麺許皆伝
住所:山梨県富士吉田市上吉田東1丁目4-58
電話:0555-23-8806
営業時間:11:00~14:00 ※売切れ次第終了
定休日:日曜日
アクセス:富士山駅徒歩約12分
富士登山の玄関口・北口本宮冨士浅間神社で参拝
食事を終えたあとは富士山の北麓に鎮座する北口本宮冨士浅間神社へ参拝に。富士山が平成25年に世界遺産に登録され、その構成資産のひとつとして登録されています。
日本武尊が甲斐国(現:山梨県)に東征した際、ここから富士を拝むようにと仰られたことを受けて約2,000年ほど前に建立。富士山は長らく神宿る山として登ることは許されず、ここから拝むことで崇めたてられてきました。富士講(富士山信仰)とよばれる民衆信仰が現れてからは、富士山に登ることで祈りを捧げるようになったそう。多くの富士講が参拝したあと登山に向かっており、神社にはいくつもの記念碑が残っています。
◆北口本宮冨士浅間神社
住所:山梨県富士吉田市上吉田5558番地
電話:0555-22-0221
アクセス:富士急行線富士山駅から富士急バス浅間神社前下車すぐ
河口湖駅から水戸岡デザインの「富士山ビュー特急」に乗車
富士山駅からさらに2駅、終点の河口湖駅に到着。河口湖は東京からアクセスしやすく、古くから観光地として賑わっていましたが、インバウンドの影響でさらに観光客が増えました。平日もかなり混雑しています。駅からは、河口湖周辺の観光地にバスが出ておりそれぞれの目的地に向かっていきます。
わたしはというと、河口湖まで歩き、誰もいない展望台に登ってぼぉっと湖面を眺めていました。レジャー施設の多い河口湖で何もしない時間をつくる、贅沢な過ごし方です。
こんな時間の過ごし方をしたのは、お目当ての列車で大月駅に戻るため早めに駅に戻りたかったから。旅の最後に乗るのは「富士山ビュー特急」。JR九州などで多くの車両デザインを担当した水戸岡鋭治さんがデザインした列車です。車両は、特急「あさぎり」として小田急新宿駅から御殿場・沼津駅を結んでいたものをJR東海から譲り受けました。
土休日のみ1号車でスイーツプランが設定されており、ホテルのパティシエがつくるスイーツを楽しみながら約45分の列車の旅を楽しむことができます。あいにく平日なうえに満席……。今回は2号車を利用しましたが、木のぬくもりを感じられる暖かなデザインで快適な時間を過ごすことができました。車窓からは沿線のあちこちで桜を見かけるほか、三つ峠駅付近では最後の富士山を眺められ、大月駅近くではリニア実験線も仰ぎ見ることができました。
◆富士山ビュー特急
運転区間:大月駅から河口湖駅まで1日2往復
運転日:毎日
おわりに
天気にも恵まれて一日中富士山の眺めを楽しめる旅になりました。「富士回遊」「フジサン特急」「富士山ビュー特急」の3種類の特急やトーマス列車をご紹介しましたが、お好みの電車はどれでしたか? 7月1日には山梨県側の富士山ルートが開山予定です。「富士山に一番近い電車」富士急行線の魅力も味わいに来てください。