京都在住のわたしが考えた「これからの京都観光・国内旅行」について

国内の観光地として常に人気上位の「京都」。特に、これからの紅葉時期(京都は例年11月中旬~下旬)に足を運んでみよう、と思う方も多いのではないでしょうか。しかし、京都では地域住民が公共交通機関に乗れないほどの混雑で、生活や自然環境、景観などにマイナス影響を与えている=オーバーツーリズムが問題になっています。であれば主要地を外して郊外にいけばのでは? というわけでもなさそうです。今回は京都在住のLIKESメンバー・つるさんが観光主要地で感じたオーバーツーリズムの実態や郊外の現状、今後の展望を語ります。京都に限らず、旅行へ出かける際に心にとどめておきたいポイントがありました。
目次
京都在住のわたしが感じている「オーバーツーリズム」
改めて言うまでもないが、京都は観光客が本当に多い。私の記憶が正しければ、最初にそう実感したのは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件の後だ。それまではハワイやグアム、東南アジアや韓国のような海外が人気の旅行先だったような気がしている。「安近短(あんきんたん)」という費用が安く、距離が近く、日程が短いレジャー・旅行が主流だった。それが9.11をきっかけに国内旅行が一気に増えた気がしている。2001年の秋のある日、散歩がてら嵐山に行くと駅から大勢の観光客が出てきたのを見て驚いた。中学生の頃に遊びに行った東京の竹下通りや、バブル期にテレビで見た長野の旧軽井沢銀座通りを彷彿させられたのだ。しかし、この頃は観光名所でないスポットや繁忙シーズンでなければ、人気の少ないところやのんびりできる場所はたくさんあった。より観光客の多さを実感するようになったのは、確か確か2015年頃(京都市を訪れた年間観光客数、2001年は約4,132万、2015年は約5,684万人。京都市観光調査年報より)。京都市産業観光局が出している「京都観光総合調査」を見ると、2014年~2015年にかけて一気に外国人観光客が増えているので間違いではない。そして現在。もう市内の主要観光スポットはじっくり見られるところはないんじゃないか、と思うほどの混雑ぶり。朝一に行けば……なんて話もあるが本当かどうか怪しいところ。
京都郊外で感じた問題点とは
もう、京都でのんびり過ごせる場所はないのか!? もちろん、あることにはある。たとえば、京都の左京区にある花脊(はなせ)や久多(くた)、右京区にある水尾(みずお)あたりは観光客が少ない。花脊には高さ日本一を誇る杉「花脊の三本杉」、久多にはまるで薄紫色の絨毯が広がっているように見える「北山友禅菊」、水尾には秋の七草のひとつである「フジバカマ」など……京都の郊外へ目を向ければ、オーバーツーリズムとは無縁のお楽しみがいろいろある。ただし、どこも車でないとアクセスできないほど遠く、道中が険しかったりするのがネックだ。花脊には路線バスが走っているが、バスマニアにはよく知られたつづら折りの峠道を進んで行くのだ。京都在住の私でも酔い止めを飲まないと酔ってしまうほど。水尾へのルートはすれ違いも困難な道しかなく、それなりに運転に自信がない場合はおすすめできない。JR保津峡駅から自治会が運行する1日4往復のみのバスやお店の送迎車を使うしかないのだ。久多は住所こそ「京都市左京区」ではあるが、アクセスするにはいったん隣県の滋賀県大津市に出なければいけない。市内から行けなくもないがこちらも難易度の高いドライブコースで、しかも冬季は通行止めになってしまう(余談だが、郵便番号も京都市ではなくなんと大津市のものが振られている)。自治会バスなどもなく、最寄りバス停から1時間半ほど歩かなければいけないという場所だ。このようにアクセスが限られていて行く人が少ないからこそのんびりできるので、私はこういう辺鄙なところに行くのが嫌いではない。

水尾集落
ただ、やっぱりこういったエリアへ観光するのにも悩みどころがある。こういう集落はいわゆる限界集落だ。花脊も久多集落全体の人口は100人を切っている。水尾は50人を切っているため、遠くない未来で集落全体が消滅するかもしれない。そんな集落を訪れて「わー綺麗」と言いながら写真を撮って、動画を撮って、特産品をちょこっとだけ買って「あー楽しかった。癒やされた~」と満足して帰る。それでいいのかなと、帰途につくといつも思ってしまう。
どうやって「暮らしている場所を守っていくか」を考え続ける
「県外から来る方にとっては観光地でも、そこには地元民の生活がある」。観光都市・京都に暮らす人間として常に感じている。しかし私自身、観光に出かけたときは、地元の人たちの生活に多かれ少なかれ踏み込んでいる、お邪魔しているのだ。どうせならこのお邪魔が、地域の将来に役立てばいいと思う。具体的にどう役立てられるかはまだわからない。だから私は、写真や動画を撮り、ブログやSNS、紙の日記を書いて残す。何ができるかわからないけど、少なくとも、記録と記憶に残すことなら私にもできるから。そしてせっかくお邪魔せさていただいているんだから迷惑をかけないように、地元の人はせっかく来てもらっているんだから、楽しんで過ごしてもらえるように考える。これに尽きると思う。
◆この記事を書いたメンバー

つるさん(8期生)
京都在住のフリーランス。鉄道旅とドライブが好き。忙しくて最近なかなか出かけられないのが悩みの種。