【都内】祝・生誕100周年! 司馬遼太郎ゆかりの地を巡る

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2023.07.28

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【都内】祝・生誕100周年! 司馬遼太郎ゆかりの地を巡る

日本を代表する歴史小説の大家・司馬遼太郎(1923~1996年)。1923年に大阪で生まれ、戦後は新聞記者として過ごす傍ら小説を書き、1960年に『梟の城』で直木賞を受賞したのを機に新聞社を退社し作家に専念。1996年に72歳で急逝するまで東大阪の自宅にて、歴史小説を中心に、随筆や紀行文、伝記など数多く執筆しました。人生の大半を大阪で過ごした司馬遼太郎ですが、作品の中には東京を舞台にした作品も多くあります。今回は中でも建物が現存するスポットをピックアップ。今年の8月7日に生誕100周年を迎える司馬遼太郎を偲び、都内に残るゆかりの地を巡ってみてはいかがでしょうか。

Text:アントレース

目次

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『坂の上の雲』で正岡子規が愛したと描かれた「羽二重団子」

正岡子規が終焉を迎えた病室兼書斎のある自宅を再建「子規庵」

舞台になったのはこの本『坂の上の雲』

偏食・小食だった司馬遼太郎が饒舌にうまさを語った老舗「うるしや」の流れを汲む「九頭龍蕎麦」

舞台になったのはこの本『街道をゆく』

【番外編】物語を書くきっかけになった、司馬と播磨のつながりをたどる「姫路文学館 司馬遼太郎記念室」

つながりがあるのはこの本『播磨灘物語』

おわりに

『坂の上の雲』で正岡子規が愛したと描かれた「羽二重団子」

羽二重団子は昔ながらの生醤油の焼き団子と、渋抜き漉し餡の2種類。店内でいただく際はお茶のセットがある

現在、6代目に受け継がれている同店。店の脇には「芋坂も団子も月のゆかりかな」という子規の句碑が立つ

「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている」という一文で始まる、司馬遼太郎の代表作の一つ、『坂の上の雲』。この物語の主人公の一人である俳人・正岡子規は、上京して根岸に10年間住み、結核と闘いながら俳句・短歌の創作を続けていました。そんな子規の心を癒やしたのが、この家の近所に店を構える「藤の木茶屋」の羽二重団子でした。「藤の木茶屋」は文政2(1819)年に創業し、“ここの団子はきめ細かく、高級絹織物の羽二重のようだ”と江戸っ子の間で評判となり、いつしか店名も「羽二重団子」と呼ばれるように。
正岡子規は妹の律と暮らしていましたが、律が兄のためによく羽二重団子を買いに出かけたといいます。『坂の上の雲』では最終巻の最後、子規が亡くなって3年後、律と母が住む家に向かっていた秋山真之が途中に佇む「藤の木茶屋」に立ち寄り、団子を食す場面が書かれています。真之は子規の家の前まで来て中には入らず、子規の眠る「大龍寺」に赴き、多額の供養料を納めたのです。
「大龍寺」はJR田端駅から徒歩約10分にあり、羽二重団子のある日暮里からも近いため、こちらにも立ち寄ってみては? 山門脇には「子規居士墓所」の石柱が建ち、本堂の左手奥に正岡子規の墓があります。


◆羽二重団子 本店
住所/東京都荒川区東日暮里5-54-3
電話:03-3891-2924
営業時間:9:30~16:30(LO16:15)、土曜・日曜・祝日は10:00~16:30(LO16:15)
定休日:無休
アクセス:電車:JR日暮里駅から徒歩約3分
車:首都高速1号入谷出口から約5分

正岡子規が終焉を迎えた病室兼書斎のある自宅を再建「子規庵」

座って、横になって、子規の目線になれる唯一の史跡

座って、横になって、子規の目線になれる唯一の史跡

正岡子規は34歳11か月の若さで亡くなりました。『坂の上の雲』では、第3巻で子規が終焉を迎える様子が書かれています。子規が最後まで過ごしたのは根岸の子規庵で、元は旧前田侯下屋敷の御家人用二軒長屋と言われています。子規は明治25(1892)年に根岸へ移り住み、明治27(1894)年に子規庵へ転居。その後、松山から母と妹を呼び寄せて一緒に暮らしました。当時は子規の病室兼書斎としてだけでなく、句会・歌会の場にも活用され、多くの友人、門弟も出入りしていました。
子規庵は空襲で焼失しましたが当時のままの姿で再建され、現在は財団法人子規庵保存会によって維持・管理されています。見学者(入庵者)は誰でも子規と同じ目線で糸瓜棚のある庭の景観を楽しめます。


◆子規庵
住所:東京都台東区根岸2-5-11
電話:03-3876-8218
開庵時間:10:30~12:00(最終受付11:40)、13:00~16:00(最終受付15:40)
定休日:平日(祝日の場合は開庵) ※今後、変更あり。8月夏季休庵、12・1月冬季休庵あり
入庵料:一般500円、中学生以下無料
アクセス:電車:JR鶯谷駅から徒歩約5分
車:首都高速1号入谷出口より約5分

舞台になったのはこの本『坂の上の雲』

『坂の上の雲 一』(文藝春秋)803円

『坂の上の雲 一』(文藝春秋)803円

明治維新から近代国家として歩み出し、日露戦争で勝利するまでの日本の姿を描いた歴史小説で、1968~1972年に『産経新聞(夕刊)』に連載されました。主人公は、秋山好古(よしふる)・真之兄弟とその幼馴染の正岡子規という松山出身の3人。軍人であり、陸軍乗馬学校の騎兵科の確立にも尽力した秋山好古、東郷平八郎の参謀役として活躍した秋山真之、胸を病んで病床に臥せりながらも近代俳諧の基礎を確立した正岡子規の生涯が生き生きと描かれた全8巻の大作。

偏食・小食だった司馬遼太郎が饒舌にうまさを語った老舗「うるしや」の流れを汲む「九頭龍蕎麦」

窓際の席からは東京駅が望める

ランチ限定の「福井の味覚セット」(3,300円)では、おろしそばに加え、焼き鯖寿司など福井グルメを味わえる

25年間に渡って新聞に連載された『街道をゆく』は、全43巻の書籍にまとめられています。その18巻『越前の諸道(しょどう)』の旅の2日目に立ち寄ったのが、江戸時代後期に創業したそばの名店「うるしや」。司馬は偏食・小食で、北海道から沖縄まで巡ったこの連載でも郷土食はほとんど食べていません。そのような中でおいしさを饒舌に語っていたのが「うるしや」でした。
司馬遼太郎が実際に訪れたのは1980年のことですが、「うるしや」はこの20年ほど後に一度閉店し、2019年に復活。復活の立役者となったオーナーの原崎さんが、福井の名店の味を東京でも堪能できるよう開いたのが「九頭龍蕎麦」。神楽坂本店、田町店に続き、2023年6月には丸ビル店もオープンしました。
福井の「うるしや」は越前そば発祥の店としても知られます。かつて昭和天皇が同店を訪ねて名物のおろしそばを食べ、たいそう気に入られて「あの越前のそばは……」と懐かしがられたことから「越前そば」の名が広まったといいます。


◆九頭龍蕎麦 丸ビル店
住所:東京都千代田区丸の内2-4-1丸ビル6F
電話:03-6551-2888
営業時間:11:00~22:30(LO22:00)、日曜日・祝日は11:00~21:30(LO21:00)
定休日:無休
アクセス:電車:JR東京駅から徒歩約1分
車:首都高速八重洲線にて新宿方面からは東京駅東駐車場直結・渋谷方面からは東京駅西駐車場直結

舞台になったのはこの本『街道をゆく』

『街道をゆく 18越前の諸道(しょどう)』(朝日新聞出版)704円

『街道をゆく 18越前の諸道(しょどう)』(朝日新聞出版)704円

1971年から『週刊朝日』に連載された歴史紀行のエッセイ集で、書籍では全43巻を数えます。国内は北海道から沖縄まで、オランダやモンゴルなどの海外にも実際に足を運び、その地の歴史や地理、文化や人々の暮らしなどについて考察。連載は司馬遼太郎のライフワークとして、氏が急逝する1996年まで25年に渡り続きました。

【番外編】物語を書くきっかけになった、司馬と播磨のつながりをたどる「姫路文学館 司馬遼太郎記念室」

姫路文学館の外観。安藤忠雄によるユニークな建築も見どころの一つ

司馬遼太郎記念室の内部

司馬遼太郎の作品に黒田官兵衛を描いた『播磨灘物語』がありますが、実は司馬遼太郎の先祖は黒田官兵衛が滅ぼした英賀城に籠城していたという説があり、これが『播磨灘物語』を書くきっかけの一つになったともいわれています。また、播磨(現在の兵庫県南西部一帯)にある姫路市の広畑は、司馬遼太郎の祖父が生まれた場所でもありました。司馬は、自らの歴史観を語ったエッセイ「ある明治の庶民」(『歴史と小説』)の中でこのことを振り返っています。
「姫路文学館」の南館にある「司馬遼太郎記念室」は、播磨と司馬遼太郎との深いつながりがあることから設けられました。館内には、司馬遼太郎の執筆原稿や挿絵(装画)・歴史資料が常設展示。作品にちなんだ企画展も随時開催されています。


◆姫路文学館 司馬遼太郎記念室
住所:兵庫県姫路市山野井町84(南館1F)
開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館 ※2023年8月7日は生誕100周年記念で臨時開館)、祝日の翌日(土曜・日曜の場合は開館)、年末年始(12月25日~1月5日)
アクセス:電車:JR・山電電鉄「姫路駅」からバスで約6分、「市之橋文学館前」で下車し徒歩約4分
車:姫路バイパス「中地ランプ」から約15分、山陽自動車道「姫路西IC」から約25分
入場料:司馬遼太郎記念室は無料 ※常設展(北館)は一般310円、高校・大学生210円、小・中学生100円(特別展・企画展は別途)
電話:079-293-8228

つながりがあるのはこの本『播磨灘物語』

『新装版 播磨灘物語(1)』(講談社)759円

『新装版 播磨灘物語(1)』(講談社)759円

豊臣秀吉の軍師として活躍した黒田官兵衛の生涯を描いた全4巻の歴史小説。1973~1975年まで『読売新聞』に連載されました。黒田官兵衛は姫路城主の家に生まれ、実名は孝高。22歳にして播州・小寺家の一番家老に、さらに上りつめて豊臣秀吉の配下の大名となり、秀吉を天下人にした希代の軍師の物語です。

おわりに

都内にも、司馬遼太郎の軌跡をたどることができるスポットがまだ残されています。作品を読んでから巡れば、その魅力をより深く味わえることでしょう。お盆やお彼岸を控え、故人に思いを馳せる時期であるいま、司馬遼太郎を感じる旅へ。

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#東京都 #兵庫県 #夏休み #聖地巡礼 #お盆 #司馬遼太郎

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