福島県の西部に位置する会津地域。城下町として歴史を刻んだエリアや、大自然が美しいエリアなど、それぞれ異なった魅力があります。特に紅葉の時期は美しく、奥会津の山間を走るJR只見線など、フォトジェニックな風景を楽しめる場所がたくさん。
会津の見どころは多くありますが、特に訪れたいのが歴史ある寺院群。会津では平安時代から仏教信仰が盛んで、今でも各地に1000年以上の歴史を持つ古刹が点在する“仏都”なのです。大同2(807)年に徳一大師によって開創されたと伝わる、会津柳津にある「円蔵寺」もそのひとつ。御本尊の福満虚空蔵菩薩は弘法大師の作といわれ、日本三大虚空蔵のひとつとされています。
歴史ある寺院が多く建立され、人々の信仰心も篤いことから、会津では江戸時代のころから三十三観音めぐりが盛んでした。寛政8(1796)年、飯盛山に建てられた六角三層の木造の建物「さざえ堂」は、一風変わった観音堂として人気。外から見ると普通のお堂ですが、中に入ると上りと下りが別々になったらせん状のスロープがあり、すれ違うことなく出口にたどり着くことができるのです。その途上に、かつては三十三体の観音像が安置され、お堂を上って下れば三十三観音巡りができるという仕掛けでした。世界的にも稀有なお堂、ぜひ体験してみてみください。
ほかにも、魅力的なスポットが点在する会津。秋の休日、懐かしさや絶景に浸りに、出かけてみてはいかがでしょう
Text : REIKO GOTSU
- ACCESS
- ●JR東京駅 ⇒
東北新幹線約1時間20分 ⇒ JR郡山駅 ⇒ 磐越西線約1時間10分 ⇒ JR会津若松駅
- ●JR新大阪駅 ⇒
東海道新幹線約2時間30分 ⇒ JR東京駅 ⇒ 東北新幹線約1時間20分 ⇒ JR郡山駅 ⇒ 磐越西線約1時間10分 ⇒ JR会津若松駅
東北で最も早く仏教文化が花開いた
仏都会津
会津にそびえる磐梯山は日本を代表する活火山で、古くから噴火を繰り返し、畏れと信仰の対象でした。平安初期、奈良の「東大寺」などで学んだ僧・徳一大師は、この磐梯山の麓に「慧日寺」を開創。磐梯山信仰を受け継ぎ、仏教的に組み替えることで、会津の信仰の中心となりました。徳一大師はその後も周辺に次々と寺院を開き、東北地方でいち早く仏教文化が開花。こうして会津は“仏都会津”といわれるまでになったのです。
慧日寺跡
およそ1200年前、徳一大師によって開創した寺院「慧日寺」。明治初期に廃寺となった寺跡は、昭和45年に国史跡となりました。慧日寺の本尊でもあった薬師如来は、会津五薬師のひとつでもある「東方薬師」として知られ、「薬師堂」は「慧日寺」の歴史を伝える重要な建物として尊崇されてきました。
住所/福島県耶麻郡磐梯町大字磐梯字本寺八幡4614-5外
薬師堂
住所/福島県耶麻郡
磐梯町大字磐梯字堂東5030-4
日本遺産認定
“会津三十三観音めぐり”とは?
平安時代に“観世音菩薩は衆生を救うとき三十三の姿に身を変える”という信仰があり、その功徳を得るため三十三の霊場を巡拝する「三十三観音巡り」が生まれました。
江戸時代には、庶民の間で、お伊勢参りや熊野参詣、西国三十三観音めぐりなどが盛んになり、会津の庶民も農閑期に出かけることが増えていきましたが、巡礼先はいずれも遠く、時間もお金もかかります。そこで、会津藩祖・保科正之は領外への巡礼を禁じ、代わりに領内に三十三観音を定め、ここを巡ることを推奨、「会津三十三観音めぐり」を制定したとされます。また、元禄11(1698)年には御蔵入り(江戸時代の幕府直轄領)地方で「御蔵入り三十三観音」も誕生しました。
もともと、会津は仏教信仰が盛んだったため由緒ある仏寺も多く、多くの領民が領内の三十三観音めぐりに参加。特に休みの少ない農村部の女性たちは温泉浴や物見遊山を兼ねた巡礼を大いに楽しみました。
なかでも、寛政8(1796年)に建立された「旧正宗寺三匝堂」(さざえ堂)は、その建物の珍しさと手軽さから人気を博しました。
さざえ堂
住所/福島県会津若松市一箕町八幡滝沢155
法用寺
720年に創建され、のちに僧・徳一によって再建されたと伝わる会津で最古級の寺院。会津三十三観音の29番札所。安永9(1780)年に完成した三重塔は会津に現存する唯一の塔。春には虎の尾桜が咲き誇り、花見の名所としても知られます。
住所/福島県大沼郡会津美里町雀林字三番山下3554
会津に点在する観音様のなかでも、特に「恵隆寺」の立木観音、「弘安寺」の中田観音、「如法寺」の鳥追観音は「会津ころり三観音」と呼ばれています。この三観音に参拝して人間の三毒「貪(とん=むさぼる)、瞋(しん=いかること)、痴(ち=おろかなこと)」の消滅を祈願すれば、心安らかに極楽往生できるといわれており、今も多くの人が参拝に訪れています。
如法寺
住所/西会津町
野沢字如法寺乙3533
弘安寺
住所/会津美里町
米田字堂ノ後甲147
恵隆寺
住所/会津坂下町
塔寺字松原2944
【三十三観音参拝の前に】
- 指定駐車場のないお堂も多いので、マイカーは近隣の迷惑のかからない場所に停めてください。
- 山道を歩かなくてはいけない観音堂もあります。歩きやすい靴での参拝をおすすめします。
- 山の中の観音堂付近には熊が出没することも。熊鈴を持つ、携帯ラジオを鳴らすなどの対策をお願いします。
- 観音堂は歴史的な文化財であるとともに、信仰の対象です。むやみな振る舞いの無いよう、心静かにお参りください。
森林や川、山が連なる会津は、まさに自然の宝庫。思わず深呼吸したくなるような絶景が各地に広がり、心が洗われるよう。数ある自然スポットのなかから、とっておきの紅葉スポットをご紹介します。
金山町と三島町にまたがる只見川沿いの渓谷では、夏の朝晩、川霧が発生し、幻想的な風景が楽しめ、「霧幻峡」と呼ばれています。この川で手漕ぎの渡舟に乗り、廃村となった三更集落を散策するツアーが人気。紅葉に染まる渓谷美と、時が止まってしまった村の懐かしい風景などに癒されましょう。
住所/福島県大沼郡三島町早戸湯ノ平888(つるの湯 船着場)
営業/4月下旬~11月中旬、日の出~日没
料金/船往復と散策ガイド(1時間)で5000円(3名まで)、4名以上の場合1500円/1名
電話/0241-42-7211(金山町観光物産協会)
※ご予約は5日前までにお願いします。
天喜3(1055)年、源頼義が創建し、義家がこの地に移転・建立した古社。円柱44本が5列に並ぶ拝殿は周りに壁も扉もない壮大な建物で、見るものを圧倒します。境内にある樹齢800年といわれる大銀杏が色づくと、ライトアップもされ、拝殿との見事なコラボレーションが楽しめます。
住所/福島県喜多方市慶徳町新宮熊野2258
電話/0241-23-0775
拝観料/300円
時間/8:30~17:00
休/12月~3月の月曜~金曜
森を散策して採取した植物からアロマをつくったり、土に触れて自分だけの陶器をつくったり。会津の自然を楽しみながら、思い出に残る作品をつくってみるのも素敵です。無心になれて、心もすっきり。
自然豊かな南会津の森を散策し、自分で植物を採取し、エッセンシャルオイルの蒸留体験までを楽しめるツアー。日帰りのほか、近くのペンションで1泊するコースもあり、より深く自然と親しむ体験ができます。
料金/日帰り5,000円、1泊15,000円
問い合わせ/03-5362-3188
瀬戸町は会津本郷焼のふるさと。現在も13の窯元があり、個性豊かな焼物が作られています。そのうちの1軒、「樹ノ音工房」では、いつでも気軽に陶芸体験ができます。ろくろを使わず自由に作れる“手びねり”500g1000円、器への絵付け800円のほか、1500~2000円でろくろ体験も。旅の思い出にぜひ、オリジナル器作りに挑戦してみては。
住所/福島県大沼郡会津美里町字瀬戸町3272-1
電話/0242-56-5098
時間/8:00~18:00
山に囲まれた会津地方は温泉の宝庫。エリアによって、効能や泉質もそれぞれ特色があるので、温泉めぐりをするのもおすすめ。ゆっくり浸かって日ごろの疲れを癒しましょう。
奈良時代、名僧・行基が発見したと伝わる会津を代表する温泉郷。湯川沿いには、文人に愛された老舗旅館や川床が楽しめる宿、高台から会津が一望できるホテルなどバラエティに富んだ施設が並んでいます。「向瀧」は国の有形文化財にも登録された東山温泉きっての老舗旅館。歴史ある建物で、まるでタイムスリップした気分が味わえます。
向瀧
住所/福島県会津若松市東山町大字湯本字川向200
電話/0242-27-7501
金山町で湧く天然サイダー温泉は、高濃度の二酸化炭素が含まれ、水温も40度前後をキープしているという、大変貴重な炭酸温泉です。炭酸ガスが体内に浸透すると血流が促進され、冷え症やむくみの解消にもうってつけ。日帰り温泉施設「せせらぎ荘」では、天然サイダー温泉を源泉かけ流しで楽しめるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
せせらぎ荘
住所/福島県大沼郡金山町大字玉梨字新板2049-1
電話/0241-54-2830
滝谷川沿いにある西山温泉は静かな山間に湧く秘湯。開湯は奈良時代といわれ、8本の源泉から豊富な湯が湧き出ています。奥まった場所にあることから、「神の隠れ湯」とも称されています。「滝の湯」は良質なお湯と素朴なもてなしが受けられる温泉宿。”美肌の湯“といわれる滝の湯源泉を使用したオリジナル石けんも人気です。
滝の湯
住所/福島県河沼郡柳津町砂子原長坂829番地
電話/0241-43-2311
町歩きのメッカ、会津若松には、レトロな雰囲気の
街並みに溶け込む素敵カフェが点在しています。
美味しいコーヒーでほっとひと休みしてみては?
江戸時代創業の漆器店の倉庫だった“中の蔵”をリノベーションした喫茶店。店内には古い調度品がそのまま残り、漆器のカップ&ソーサーやアンティークグラスなどでコーヒーやアイスがいただけます。写真は兜をイメージしたミニパフェと水出しコーヒーのセット500円。
住所/福島県会津若松市大町1-3-51
電話/0242-22-0454
時間/11:00~17:00
休/木曜日、日曜不定休
七日駅の駅舎内に設置されたアンテナショップ兼カフェ。ショップには会津木綿の小物など会津らしいグッズが並びます。カフェでの名物は磐梯山の伏流水を使ったコーヒー。スイーツもコーヒーに合わせてセレクトするなど、こだわりが感じられます。写真はひとくちパウンド、クッキー付コーヒー500円。
住所/福島県会津若松市七日町5-1
電話/0242-39-3880
時間/9:00~18:00
休/無休(元日のみ休)
猪苗代湖畔の湊町の伝統料理「豆腐もち」をはじめ、いろいろなお餅やお餅スイーツが味わえる店。デザートの定番は雪うさぎ。手作りのお餅でストロベリー、バニラ、抹茶のアイスを巻き、自家製ソース3種(ベリー、キャラメル、抹茶)をかけていただきます。雪ウサギ+自家製ほうじ茶500円。
住所/福島県会津若松市七日町1-28
電話/0242-23-7302
時間/10:00~17:00(16:30LO)
休/火曜日
「会津を巡る まち歩きスイーツ&カフェ + 日帰り温泉」
キャンペーン実施中!
スイーツがワンコインで楽しめるほか、スタンプ2つで日帰り温泉が500円で利用できる特典も。※キャンペーンは2020年3月31日まで
湖畔で、あるいは森の中で、自然を感じながらスイーツを。
香り高いコーヒーを飲み、ゆったり、心を解きほぐしましょう。
猪苗代湖畔の白鳥浜にあり、周囲には建物がないため、見晴らしが抜群。ウッディなインテリアでまとめられた店内では、季節ごとに趣向を凝らした手作りスイーツと自家焙煎したコーヒーがいただけます。天気のいい日はオープンデッキもおすすめ。
住所/福島県耶麻郡猪苗代町堅田入江704-3
電話/0242-62-2371
時間/11:00~17:00(16:00LO)
休/水曜日
看板メニューは磐梯山の伏流水からなる地下水で淹れたコーヒー800円。サービスで手作りのコーヒーゼリーとコーヒーで煮たお豆がついてきます。客席はすべてがソファで、大きな窓からは鬱蒼とした森林が望め、いつまでも座っていたくなる居心地満点のカフェです。
住所/福島県耶麻郡猪苗代町新林7119-49
電話/0242-63-1050
時間/10:00~17:00
休/水曜日、12月~翌4月末まで冬季休業
豆乳や豆腐を使った体に優しいお料理とスイーツがいただけるカフェ。ピラフのプレート(サラダ・冷ややっこ・小鉢付)890円、豆乳ぱふケーキ680円などが人気。カウンター席からは釣り堀が望め、緑のなかでのんびりくつろげます。
住所/福島県耶麻郡猪苗代町磐里字上野2696-1
電話/0242-85-8203
時間/11:00~17:00(16:30LO)
休/月曜日