あの人の旅カルチャー

お笑い芸人 飯尾和樹
Text:Mitsugu Kobayashi(ENTERBANK)
Photo:Dan Noguchi
お笑い芸人 飯尾和樹

映画『引っ越し大名!』で、人減らしのためリストラされてしまう藩士・高橋四郎を演じている飯尾さん。完成した作品をご覧になっていかがでした?

自分は中盤から出て来て、リアルな現実を突きつけられるシーンから始まるんですけど、それが本当に暗いシーンなんです。それで映画を見てみたら、オープニングから「光の量が違うな」と思うくらい楽しそうで(笑)。台本を読んで自分なりに画は浮かんでいましたけど、改めてこんなに楽しい作品だったのかと思いました(笑)。

暗いとおっしゃった登場シーン、すごく面白かったです。

監督は「ショックな感じで」と、自由にやらせてくれて。そしたらああなっちゃった(笑)。星野(源)くんが受け止めてくれましてね。

出演をオファーされた時はどんな気持ちでしたか?

時代劇は初めてだな、と思いました。あとは、京都に行けるんだ、太秦も見てみたいなって……ごめんなさい、修学旅行気分で(笑)。星野くんやキャストの皆さんの名前を見て、楽しそうだなあと思いました。

初めての太秦はどうでしたか?

床山さんや衣裳さんといった職人さんが、やっぱり老舗感があって楽しかったですね。番組でロケに行っても、酒蔵とか老舗のお店を見たり、ベテランの職人さんに会うのが好きなんです。

後半に出て来る棚田(滋賀県高島市)の風景がすごくきれいで印象的でした。

京都の太秦撮影所から車で2、3時間くらいかけて行ったんじゃないかな。いやー、きれいでしたね。旅行代理店のパンフレットになってもいいんじゃないかっていうくらい。カレンダーだったら7月か8月かな。緑がきれいですけど、逆に秋の景色も見てみたいなと思いますね。夏に行く方は、日影があまりないので熱中症には気を付けてください。

確かにあの景色は見に行ってみたいです。飯尾さんがこれまでに見て、「行ってみたい」「旅をしたい」と思った映画はありますか?

やっぱり僕ら世代は『男はつらいよ』ですね。旅して恋してふられて帰ってくる……いいですねえ。親父とおふくろが好きだったので、よく映画館に連れて行ってくれました。海外の作品だと『ペテン師とサギ師』もいいな。関根(勤)さんと小堺(一機)さんに「絶対おもしろいから」って勧められて見たら、すごくおもしろかったんです。(北野)武さんの『菊次郎の夏』もいいですね。『007』や『ミッション・インポッシブル』みたいに、世界を飛び回っているのを見ると、行きたくなっちゃいますよね。うらやましくなっちゃう。

飯尾さん自身、テレビ番組のロケなどでいろいろな場所を訪れていますが、特に印象的だったのはどこですか?

クロアチアのドゥブロヴニクというリゾート地は最高によかったですね。食事も日本人に合うのか、魚も肉もおいしい。あと何がいいって、きれいな方が多いんですよ。男性もかっこよくて。変なフラれ方をした人はそこへ行って、「ここにはもっとすごい人たちがいる」と思えばすっきりするんじゃないかな。

旅先で時間が自由になった時は、どう過ごされますか?

海があったら、ビーチでゴロゴロしながら雑誌を読んだり、ビールを飲んだり、高カロリーなハンバーガーを食べたり(笑)。藤井隆くんとか芸人さんたちと温泉に行った時も、午後2時にはチェックインして、そこからはゆっくり飲みながら、お風呂に入りたい人は入りに行く、とか。のんびりが好きですね。

計画を立てるタイプではないんですね。

両親の影響があるかもしれないですね。子どもの頃、よく車で家族旅行に行ったんですけど、夜中の2時に出て朝7時くらいに着いて、ゆっくりするのが飯尾家のスタンスなんですよ。それで親父が夜10時くらいから日本地図を広げて、場所が決まったら出発。宿が取れない時のためにテントを持って行って、だいたい初日はテント泊でしたね。それで東京でも食べられるものばっかり食べる。親父のそういうのは面白かったですね。だから今でも、どこに行って何を食べるとか、計画を立てたりはしないです。だいたい地元の喫茶店に入っちゃう。

では、旅慣れしている飯尾さんならではの持ち物はありますか?

ジャージですね。サイズは大きめがいいですよ。飛行機や新幹線、海外の店内で寒いなっていう時にチャッと(ジッパーを素早く閉める仕草)着られますから。軽いし撥水性もあるし、トマトソースがはねても大丈夫って、ちょっと強気になれるでしょ。あと、軽いサンダルですね。飛行機に乗る前に履き替えておくと楽ですし、現地でもサンダルで移動できますから。ジャージとサンダル、これで行きましょう。

飯尾和樹さんが旅に行きたくなる映画

『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』

『ペテン師とサギ師/
だまされてリビエラ』

南フランスの避暑地を舞台に、スティーヴ・マーティンとマイケル・ケインという米・英を代表する俳優2人がだまし合いを繰り広げる、1988年のコメディ映画。「ペテン師とサギ師がヨーロッパのリゾート地に到着しまして。通りかかったあるかわいい女性から、どちらがお金をだましとれるかっていう対決が始まるんですけど、それが面白いんです。景色一つひとつもきれいでね。ずいぶん前の映画ですけど楽しいですよ」(飯尾)
『菊次郎の夏』

『菊次郎の夏』

Blu-ray&DVD発売中
4,104円
バンダイナムコアーツ

©1999 バンダイビジュアル・TOKYO FM・
日本ヘラルド映画/オフィス北野

北野武監督が描く感動のロードムービー。大人になりきれない52歳の男・菊次郎(北野武)と、9歳の少年の数日間の旅を描く。「こういうシンプルな夏休みもいいですね。両親が忙しいとかいろんな事情があって、夏休みにあまり遊びにいけない子が、ちょっと突拍子の無いおじさんにどこかへ連れて行ってもらうっていうのは、楽しいんじゃないかなと思います。子どもの頃、こんなひと時があったらいいですね」(飯尾)
INFORMATION
『火口のふたり』©2019「引っ越し大名!」製作委員会

『引っ越し大名!』

『超高速!参勤交代』シリーズで知られる土橋章宏の原作・脚本、『のぼうの城』の犬童一心監督、星野源主演のタッグで描く歴史エンターテイメント。物語の舞台は、江戸時代の姫路藩。引きこもって本ばかり読んでいる書庫番の片桐春之介(星野源)は突然、国替えの総責任者“引っ越し奉行”に任命される。藩の財政が逼迫している中、姫路(兵庫)から日田(大分)へすべての藩士とその家族全員で移動する引っ越しは、費用と労力のかかる超難関プロジェクト。まさかの大役にビビる春之介は、幼なじみで武芸の達人・鷹村源右衛門(高橋一生)や前任の引っ越し奉行の娘・於蘭(高畑充希)に助けを借りて、引っ越し準備を始める。
監督:犬童一心
原作・脚本:土橋章宏「引っ越し大名三千里」(ハルキ文庫刊)
出演:星野源、高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博ほか
主題歌:ユニコーン「でんでん」作詞:川西幸一/奥田民生 作曲:奥田民生(Ki/oon Music)
配給:松竹
8月30日(金)より全国公開

Profile
飯尾和樹
飯尾和樹Kazuki Iio

1968年12月22日生まれ、東京都出身。相方のやすと共にお笑いコンビ「ずん」として活躍。『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)や『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ)など多数のバラエティ番組のほか、映画やドラマにも出演。主な出演作品は、映画『ピーナッツ』(2006年)、『騒音』(2015年)、『本能寺ホテル』(2017年)、ドラマ『アンナチュラル』(TBS/2018年)、『獣になれない私たち』(日本テレビ/2018年)など。公開待機作に、三谷幸喜監督による最新映画『記憶にございません!』(9月13日公開)がある。

あの人の旅カルチャー

今月のテーマ「秋の旅」 「秋の旅」をテーマに本と映画の“目利き”が作品をセレクト。
ヒューマンドラマやファッションほか、紅葉をテーマにした作品も必見!

Book

  • 『だから荒野』

    『だから荒野』
    10月2日の誕生日を身勝手な夫と息子二人に台無しにされ、ぷっつんきた妻は家を捨て、車で長崎をめざします。タカをくくっていた男性陣ですが、女性のいない家庭生活の大変さに「こんなはずでは」が続出。一方、旅を続ける妻にも事件が……。何かが終わっていく秋。でも、どんな行動にも実りはあるはず。家庭は荒野なのか、沃野はどこにあるのか。我が家のあり方を考えさせられる傑作です。
    桐野夏生/著
    842円/文春文庫
  • 『ポケット版
    紅葉のきれいな樹木図鑑』

    『ポケット版 紅葉のきれいな樹木図鑑』
    お花の名前は女子の得意とするところですが、木々の名前まで知っている人は少ないはず。本書は紅葉する木を中心にした図鑑です。色づく葉の美しさに感嘆する友人や恋人に「これはカイノキよ」なんて教えてあげられれば、あなたの株は上がります!ポケット版なので旅先や山歩きのお供にも最適。名前を知らない美しい木の下で立ち止まって図鑑を開き、深まりゆく季節を感じるのも素敵です。
    亀田龍吉/著
    1,512円/家の光協会
  • 『懐かしの昭和ドライブイン』

    『懐かしの昭和ドライブイン』
    哀愁の「愁」の字には小さな「秋」があります。この秋、ドライブインに行ってみませんか? レトロ自販機、昭和博物館のようなグッズの宝庫としてメディアに再注目されているドライブインには、道の駅やサービスエリアにはない魅力がたくさん! 50年前の味に出会える峠の茶屋、春には蝶がやってくる店、富士山の形のハンバーグに雪のチーズが降る老舗など、ユニークでどこかなつかしい109店。
    越野弘之/著
    1,728円/グラフィック社
間室道子さん 代官山 蔦屋書店

代官山 蔦屋書店に勤める文学担当のコンシェルジュ。雑誌「婦人画報」の連載を持つなど、さまざまなメディアでオススメの本を紹介するカリスマ書店員。文庫解説も手掛け、書評家としても活躍中。

Movie

  • 『ライ麦畑で出会ったら』

    『ライ麦畑で出会ったら』©2015 COMING THROUGH THE RYE,
    LLC ALL RIGHTS RESERVED
    世界的名著『ライ麦畑でつかまえて』の作者サリンジャーを探す文系男子の青春映画。旅路を共にする少女と、夕暮れ時に願いを込めて綿毛を飛ばすシーン。キラキラの夕陽に輝きながら舞う綿毛、じゃれ合う2人。なんと詩的で美しいのでしょうか! ここだけでも見る価値アリ。今よりも不便な時代に、憧れの人を探す無謀な旅。実はこれ監督の実際の思い出です。改めて10代の頃の忘れ難き出来事から、今の自分が作られていることに気付きます。
    2019年11月6日DVD発売 4,104円
    発売・販売元:TCエンタテインメント
    提供:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
  • 『トスカーナの休日』

    『トスカーナの休日』©2012 Buena Vista Home
    Entertainment, Inc.
    突然の離婚、仕事はスランプ。人生に行き詰まった女性が思い切って旅に出る。ここまではどこかで聞いたことがあるような展開だけど、この主人公は旅先でひと目惚れした家を買います。人の幸せが丸見えの今の時代は求めるものが増えてしまいますが、幸せに暮らすには人と人との温かいつながりだけで実は充分なんだと思い出させてくれました。大人こそ、もっと自由に生きていいんだと力をもらえる物語。大人女子にオススメの洋服の着こなしも素敵!
    Blu-ray&DVD発売中
    Blu-ray2,571円/DVD1,543円
    発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
  • 『滝を見にいく』

    『滝を見にいく』©2014『滝を見にいく』製作委員会
    紅葉ツアーに参加した7人のおばちゃんが山の中で迷子!? プチサバイバルに巻き込まれます。親近感あるこのおばちゃんたち、実はオーディションで選ばれた全員素人。大変な状況でも臆せず、一致団結して、いつの間にやら前を向いてるケセラセラ精神にあっぱれ。おばちゃんたちが揃えば、そこは無敵。やっぱり女の強さって計り知れないと背中を押された。“幻の滝”が存在する落ち葉で色づく新潟県妙高市の景色、紅葉シーズンが益々楽しみに!
    Blu-ray&DVD発売中
    Blu-ray2,700円/DVD2,052円
    発売・販売元:キングレコード
東 紗友美さん 映画ソムリエ

映画ソムリエとして、テレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版で「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」を連載中。