菊地成孔と海猫沢めろん、それぞれが思い描く
新宿のランドマーク「歌舞伎町」のイメージ
菊地:歌舞伎町には久々に来ました。2冊目のエッセイ集を書いた時には歌舞伎町のホテルにカンヅメになったけどね。
海猫沢:『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』ですね。菊地さんのエッセイのなかでもかなり好きな一冊です。
菊地:歌舞伎町のド真ん中だったから一晩中うるさい。煮詰まって、外出すると、ホストとキャバクラ嬢とお客でカタギが1人もいない(笑)。それが大人になってからのイメージかな?
海猫沢:僕は大阪生まれで姫路育ちなので、まずはメディアを通して新宿と出会いましたね。最初は菊地さんのお兄さん(菊地秀行)の『魔界都市〈新宿〉』で、次は大沢在昌の『新宿鮫』、その次は馳星周の『不夜城』。だから、常にフィクションと連動しています。
菊地:でも、『ヴァイナル文學選書』の第一弾「新宿歌舞伎町篇」で書いたように、小説にすると逆にファンタジーになるんだよね。僕が実際に歌舞伎町に住んでいた頃から浄化されていて、『新宿鮫』はいない(笑)。そうするとカリカチュアされたものになる。ただ、ヴァイナルの方はリアル新宿ライフを書いてほしかったみたいなので、僕はそのつもりで書きました。
海猫沢:僕は90年代の鬼畜系(バッドテイスト)文化が好きだったので、ヴァイナルにはそういう影響が強く出ていたと思います。
菊地:めろん先生はファンタジスタなんでね。
海猫沢:菊地さんとMC漢さんの作品は、実際に歌舞伎町に住んでいた人しか書けない空気感が出ていて、自分にはこれは書けないな……と思わされました。
菊地:ラブホテルしか出てこないんだけどね(笑)。