まるでタイムトリップ! 島根県・温泉津の伝統文化とビールに魅せられる旅
新年、明けましておめでとうございます。もうすっかり年が明けて2023年を迎えましたね。卯年、今年はぴょんぴょん飛び跳ねてどこへ旅に行きましょうか。2023年の「ビール旅」一発目は、ひとまず冷えた体を温めるため島根の温泉街へ。温泉津(ゆのつ)の伝統文化に触れる充実ビール旅に出かけます。
目次
最高評価の“痺れる”温泉
かつては世界で採れる銀の3分の1を占めていたという石見銀山。採取した銀を世界中に運び、銀山とともに栄えた港町・温泉津の文化をたっぷりと味わってきました。この地名、「ゆのつ」と読むんですが、その名の通り温泉の湧く町です。
江戸時代の町割りが残っていて、温泉町としては日本で唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。神社仏閣と温泉、旅館が混在するレトロな街並みは歩いているだけでも楽しくなってきますね。温泉津は「男はつらいよ」のロケ地にもなったことがあるんですよ。寅さんも歩いたこの地で、一体どんな出会いがあるのか……!
ひと際目立つこの建物は、100%源泉掛け流しの薬師湯。日本温泉協会から、源泉や泉質などすべての項目でオール5評価を受けた数少ない温泉施設です。「すぐ近くにある湯元から源泉をそのまま引いているので、温度が冷めにくくて泉質がとてもいいんですよ」と教えてくれたのはオーナーの内藤陽子さん。この温泉に通い続けて体の調子が良くなりました、というお客様の声を聞くのがとても嬉しいんだと仰っていました。本格的に湯治について研究するために、なんと現在は大学の医学部に入学して勉学に励んでいるんだそう! すごすぎます……。
昔ながらの番台で入浴料を支払い、レトロモダンな建物内へ。浴室へ入ると楕円形の浴槽がひとつ真ん中にドンとあり、シャワーがいくつかあるシンプルなつくり。かけ湯をして湯に浸かってみると、熱い! 手足がピリピリするほどに濃度が高くて熱い温泉。くぅ~、気持ちいい!! 体の芯からぽかぽかと温まりました。湯上がりには2階の休憩所や屋上テラスでのんびり過ごすことができます。
オーナーの内藤さんが「屋上に行けばトトロの世界にいるような景色が見られますよ」と教えてくれたので、のぞいてみると……本当! トトロの世界が広がっていました。温泉津には2泊3日滞在したんですが、その間に3回も薬師湯のお湯に浸かっちゃいました。おかげで化粧ノリ抜群です。なんだか体も軽くなったような気がする。夜の屋上も雰囲気あってとても素敵でしたよ。
◆薬師湯
住所:島根県太田市温泉津町温泉津7
電話:0855-65-4894
営業時間:9:00~21:00、土・日・祝日8:00~21:00※年末年始は要問合せ
定休日:無休
やきものの里に少し寄り道
温泉津はやきものも盛んな町です。夜のビールをおいしく味わうため、ちょっと寄り道して創作体験をしてくることにしました。のんびりするだけではなく体と頭を使うことで、きっとこのあとのビールがよりおいしく感じられるはず。
全国最大級の大きな登り窯の存在感のすごいこと! この土地の土は粘りがあってコシが強く、耐火性もあるので高温で焼くことができるため、焼き上がったものは丈夫で割れにくいのが特長だそうです。
早速、創作体験。まずは麺棒を使ってこぶし大ほどの土を伸ばし、均等な厚みに整えていきます。そこから好きな形をつくって、模様を描いて……久しぶりにものづくりに没頭しました~。楽しかった! 学生時代の図工の時間を思い出しました。

私がつくったのはお皿と、枝豆の形の箸置き。これらを窯で焼いてもらい、約1ヶ月後には手元に届くとのこと。どんな色に仕上がるかな? 模様は綺麗に出るかな? 出来上がりが待ちきれません!
◆温泉津やきもの館
住所:島根県太田市温泉津町温泉津イ22−2
電話:0855-65-4139
営業時間:9:00~17:00(創作体験開始は16:00まで)
定休日:水曜日、年末年始※臨時休館あり
ビール豆知識▶焼き物のグラスで飲むのもイイ!
ビールのグラスといえば透明でビールの液色や泡が綺麗に見えるガラスのものが主流ですよね。だけど、陶器のグラスで飲むのもなかなかいいんです。ビールにとって泡はとても大切なもの。泡は、ビールの酸化や香りが飛ぶのを防ぐ蓋の役割をしてくれます。陶器のグラスは内側に凹凸があるので、きめ細かくてクリーミーな泡が立ちやすく、ひと口飲むごとに新しい泡が形成されます。また、保冷性も高いので冷えたビールを最後まで冷たいまま楽しむことができるんですよ。
大蛇がのたうち回る大迫力の伝統芸能

温泉津に来たら、龍御前神社で毎週土曜日に行われている伝統芸能・石見神楽は必見です。この日の演目は天神・恵比須・大蛇(おろち)の3本。生演奏のお囃子に合わせて演じられます。
最初の演目「天神」は学問の神様・菅原道真と、彼の活躍を妬む藤原時平の直接対決。ギラギラと輝く派手な衣装の早替えと、目が回るほどの激しい立ち回りが見ものです。演奏も激しく、その音に合わせて演者が舞台上を回る、飛ぶ、走る、転がる。まばたきもできないほど迫力満点の刀での立ち合いを目の前で見ることができます。
激しい演目の次にはほんわか恵比須様の鯛釣り。恵比須様のにこやかな表情に終始癒されながら、コミカルな動きに思わず笑い声が漏れる場面も。途中で観客に向かって飴を投げる演出もあって、会場は大盛り上がり。
釣り竿に鯛がかかり、獲物との駆け引きが始まります。果たして鯛は釣れるのでしょうか!?
そして最後は、待ってました! 穏やかな演目から一転、大蛇と須佐之男命(すさのおのみこと)の対決です。老夫婦の娘を喰らおうとする八岐大蛇(やまたのおろち)の退治を須佐之男命が引き受けます。
舞台狭しとのたうち回る大蛇は鬼気迫るものがあり、石見神楽を代表する演目だけあって手に汗握るような演技です。目の前に迫ってくる大蛇のあまりの勢いに泣き出してしまう子どももいるほど。熱気と煙に包まれた会場の空気は後半に近づくにつれてどんどん湧き立ち、大蛇退治が成功した時には大きな拍手が鳴り止みませんでした。会場がひとつになる激しい演目、最高に興奮しました。温泉津の温泉にやきものの里、伝統芸能をたっぷりと満喫して、いよいよお待ちかね! ビールを味わいに、いざ。
◆龍御前神社
住所:島根県太田市温泉津町温泉津イ736
電話:0854-82-1600(石見銀山課)
参拝時間:境内自由(夜神楽は20:00~21:00)
築100年の古民家で飲むビール
今日は朝から夜までアクティブに動き回ったので、お腹ぺこぺこ、喉もカラカラです。でもこれが、ビールを最高においしく味わう条件! ご当地ビールを楽しむため、築100年を超える古民家を改修してつくられたお店、路庵(ろあん)にやって来ました。レトロで雰囲気のある外観に、中はおしゃれなイタリアンレストランのような内装です。
地元産の原料を使ってつくられた「温泉津ビール」を注文しました。ラベルに描かれた温泉のマークにほっこりします。

グビグビグビッとのどに流し込むと、今日一日の出来事も一緒に流れ込んでくるようで……くぅ~、うまい! 温泉津産の甘夏ピールが使われていて、爽やかな香りが広がります。スタイルはアメリカンペールエールでアルコール度数は5.5%。麦芽のコクとホップの苦味のバランスがよく、飲みごたえがあります。陶器のグラスなのでふわふわの泡を楽しめました。
料理はどれもボリューミーでビールに合うものばかり。特にビールが進んだのは、島根和牛ミックス煮込み。とろりほろりと口の中で解けていく牛すじがあまりにもうますぎる。濃厚な肉の旨味に味付けは甘辛で、爽やかな香りのビールと相性抜群でした。白イカもお気に入りです。炙ったイカを一味醤油マヨにつけて食べるシンプルなおつまみですが、イカがぷりっぷりでこれまたうまい! これぞ酒の肴って感じですよね。ゲソをちまちまと一本ずつ食べながらビールをキュッと流し込む瞬間がたまらなく好きです。

ビールが気に入ったので近くのスーパーでお土産用にも購入しました。なんと、寅さんのビールもありましたよ!これはおうちに帰って「男はつらいよ」温泉津ロケ編を鑑賞しながらゆっくり飲もうと思います。
◆Cafe&Bar路庵
住所:島根県太田市温泉津町温泉津ロ31
電話:0855-65-2777
営業時間:17:00~22:00(LO21:30)
定休日:火曜日、水曜日は不定休
今年も素敵なビール旅ができますように
寒い日に温泉で体をしっかりと温めて、暖かい部屋で飲むビールは最高すぎる。今回は温泉のほかにもレトロな町並み、焼き物、石見神楽、伝統芸能とそのまちをたっぷりと堪能して、温泉津ならではのビール旅ができました。そしてなんとこの記事を執筆中に、届きましたよ。そうです、創作体験をした焼き物が出来上がりました。
じゃじゃーんっ! おぉっ。ちゃんとお皿になってる! でも、あれ? 模様が足跡みたいになっちゃいました(笑) どうせなら猫の足跡にすればよかったかな。水滴みたいになっちゃいましたね。しっかり深く太めに入れないと焼き上がりには残ってくれないんですね……次への課題ができました。それにしても、自分で作ったお皿って愛おしい。思った以上にいい出来だったのが枝豆の箸置き。我ながら、可愛い~っ! いつもビールのつまみに食べているだけあって、なかなかリアルな出来になりました。ちょうどお箸の引っかかりもよさそうだし、これは重宝しそうですね。大事に使おうっと。手作りのお土産は、手にする度に素敵な旅の思い出を振り返ることができそうです。
それでは2023年もどうぞよろしくお願いいたします!