走古丹の絶景から絶品牡蠣まで。北海道・釧路から果ての地へ【後編】
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道東を走って、ドローンを飛ばしました。北海道って本当にすごいですね。どこもかしこも自然が独特すぎて、雄大すぎて、底力を感じて、いつだって大いなる何かに抱かれている感覚があって。アイヌの方々が自然界のそこここに神さまを感じてきたのもわかるような……?! 道東の旅のお話後半の今回は、別海、根室、厚岸の大感動をお届けいたします。最強の牡蠣を最強コスパでいただけるスポットも要チェックです。
果て感たっぷり、壮大な景色! 時が止まったような走古丹と春国岱
まずはご覧ください、この雄大で爽快で、不思議な風景。
みょーんと伸びた薄っぺらいナンみたいな土地、はかなげで、ふんばり強そうで、なーんにもなさそうで、この大海に溺れず意味深に存在する土地。
ここは走古丹(はしりこたん・別海町)と呼ばれる砂州です。アイヌ語で新しい村(アシリコタン)に由来するそう。左は風蓮湖と呼ばれる汽水湖で、右は根室湾。わたしはこの先端にいるんです。
走古丹の対岸に見えるのがこちら春国岱(しゅんくにたい・根室市)。アイヌ語のエゾマツ(スンクニタイ)が語源だそうです。ほとんど人手の入っていない超自然の土地で、こちらは右が風蓮湖。静かな湖が雲をバッチリ映し出していて、なんて大きな鏡なのでしょう。
なんにもない、なんにもない地の果てのようなところです。世界から忘れ去られたような土地、それが幸福だと言わんばかりの青い空と海。なんなら時間がストップしていそう……一時停止ボタン押しっぱなしでリモコンなくしちゃった風の在り方ですよ。こんな時空と切り離されたような土地に佇んでいることに、底知れぬ喜びを感じます。
そんなとき!
見つけてしまいました、熊の足跡!! 鹿の足跡もあって、その7、8倍大きいやつ、やばい!
ともかくテトラポットに登って逃げたつもり(笑)。木もなく、草原が広がっているのみなので、見渡し良好です。熊はとりあえず今はいないようでした。食べられなくてよかったー。
メルヘンな気分から引き戻された現実が、まさかの熊とのニアミス(?!)と、 現実もどこかメルヘンですね。
ところで、走古丹の先端までつづく一本道、通称ハマナスロードも絶景なんです。ハマナスが咲くのは夏ですが、このときは秋でススキがいっぱい。昼間も真上には昇らない北国のやさしい太陽の光が穂をふわふわキラキラなでてまわり……走っているだけで幻想的な気分です。
そんな中、思わず車を停めたのはここ。三匹の子豚の家ではありませんか! いやーまさかあのお話が北海道で生まれたものだったとは(違う)。漁師さんが昔使っていた番屋だそうですが、ここまでイメージぴったりにおとぎ話の世界が自然体で再現されているなんて、北海道自体がおとぎ話みたいな土地ってことですね。
日本の最東端、納沙布岬から北方領土が丸見え
さて、次に向かったのは納沙布岬(のさっぷみさき)、一般人が到達できる日本の最東端です! 日本で一番はじめに太陽が昇るのか……なんて思うと、新鮮な気持ちになります。と同時に、ここが朝焼けの撮影が一番大変なところか、とも(笑)。日の出時間が随分早いってことですからね。ちなみに、2019年6月11日〜20日は1番早くて、なんと3時35分だったそうですよ、それ真夜中だから!!
あのとんがっている辺りが納沙布岬です。背高ノッポの白い塔はオーロラタワーで96m、展望用です。
それにしても近いんですよ、納沙布岬と北方領土。すぐ目と鼻の先に見える島々がいろいろ問題になっているなんて。正直これまでニュースで見聞きして脳みそ的に問題を知っても、体感としては他人事でした。それが、自分の目でリアルに見て、同じ風に吹かれ、距離感を肌で感じると……あれれ、あそこいけない島なんだっけ? 純粋に問題意識が湧いてくるんですよね。
ドローンを飛ばしているのは、納沙布岬すぐ西隣の温根元漁港から。こうして海を眺めているといつだってその広大さに果てしない気持ちになるけど、ここでのそれは段違いです。だってすぐそこは北方領土の不思議なエリアで、よくわからない何かが控える威圧感、掻き立てられる想像、歴史に及ぶ思いとか……ただ眺めるには意義の募りすぎた海で、あー果てしなかったです。
こちらは温根元漁港越し、納沙布岬と反対の西の風景です。上空から見れば荒れた海は平和なもので、起伏に富んだ大地はぺったら。あの雲の下は多少暗そうだけど空全体はほとんど青いし。物事を俯瞰して見ると、だいたい平和だと思わされます。
高い建物も木もなく、どこまでも見渡せる潔い土地にぽつぽつと民家が見えます。東の果ては明るい、なんだか明るい。日本のすみっこかも知れないけど、ここに住まう方々にとっては暮らしの中心なんですよね。人って強いな明るいな。だから何百万年も存在し続けているんだなと、妙に思考の尺度が広がるのでした。
落石海岸の夕焼けが見せる正しく美しい姿
感動の夕陽を、まずは動画でどうぞ。
BGM:MusMus
あまりにも夕陽らしい、夕陽たるものこうあるべき、とでもいうような正しい姿を見せてくれました。夕陽の本分をまっとうする様子に背筋が伸びて、こちらも正しく切なさを覚えまして。
北海道の夕焼けは大きいなぁ。なんででしょう、どこで見ても同じ海と空と太陽なのに、ここで見るとスケールがずっと大きく感じられるんです。不思議な大地です。
太陽って本当に罪だなぁと思います。姿を隠しても余韻で人を魅了するなんて。どうしたって去りがたい、寒くても我慢できちゃう。太陽がこんな余韻をまとえるのは、一日中輝き続けるというお仕事をがんばったからでしょうか。精一杯生きていれば、こんな余韻の人になれるでしょうか。
世界中が虹になった。奇跡のような宵の口を落石港で
いよいよ暗くなってきた頃、すぐ反対、東向きの落石港へ行きました。
とんでもないことになっていましたよ……港内の静かな海に、1日の終わりが映し出されていました。世界中が虹みたい。
これは港上空から西を向いて落石海岸を眺めています。漁師さんがいつものように港で働いている間に、空は引火し、燃え上がり、収束し始めていました。尊いなぁ、太陽も、染まる港も、こんな世界で働く漁師さんも。
地元サイトに助けられた宿探し。 格別グルメとの出合いも!
実は今回の北海道旅、特に地方でしてはいけないことをしてしまいました。なんとまぁ、ネットから予約した宿泊日を間違えていたのです。さっそく同じサイトから他の宿を探すも、ないんですよ、浜中町でその晩他に泊まれるところが。もっと大きい街へ行けば空いているけど、翌朝霧多布岬(きりたっぷみさき)に行くためにはなんとしても浜中町がいいのに、やってしまったー。
今夜は車中泊かぁ……観念したらふと思い出しましてね。そういえば強い味方がある! それは地元の観光局や観光課がつくっているサイトの宿泊施設コーナーです。大抵、予約プラットフォームサイトより多く掲載されているんです。そんなわけで片っ端から電話をかけて、無事に宿をゲットすることができたのでした。
今回は予約時に地元のサイトを見ておらず慌てたわけですが、そもそも地方に行くときは始めから使うことをおすすめします。ネット予約はできないけれど、掲載軒数が多い分、立地がよかったり、おもしろい宿をみつけたりすることができますよ。
ちなみに今回泊まったのは川村旅館さん。夜の急なご対応、本当にありがとうございました。そしてこちらは旅館の女将さんが教えてくださった一押しのお店、地元のネタで握る「ひらの」さんの特上寿司。いやーおいしかった、間違いなく人生で一番です! それに2090円って何? さすが地元のネタ、コスパも人生一番です。
◆寿司ひらの
北海道厚岸郡浜中町霧多布東2条2丁目29
重い空の北国の朝、霧多布岬は壮大だった
朝。まったく晴れない空は、より一層北国の情緒を高めてくれました。
駐車場から岬の先端までは、暗闇の中しばし歩いて向かいます。歩いていると少しずつ明るくなってきましたが、空気の色は重くて濃厚。風は強くて冷たくて。ひと気はなくなんだかおどろおどろしいくらいです。それでもあの先端に何が秘められているのか、人はどんな感覚を授かってきたのか、体感したくて歩きます。
こちらが霧多布岬。高さは40~60mで、際に立つとなかなかの迫力です。
それにしても闇に浮かび上がるテーブル状の霧多布半島、かっこいいなぁ。いやかっこいいのは土地の形状だけでなく、白く波立つ海、アンニュイ極まる空の色、ぽつんとした灯台の存在、いくらか見える奥の民家も。北国の淋しさ、切なさ、孤高な雰囲気と、人の暮らしがあるという限りない温もりを存分に感じさせてくれます。
しばらくすると、灯台の向こう、空のほんの隙間が赤く光りだしました。雲の向こうには太陽があるんですね、なんて大きな希望でしょう。まるで冬の後には春が控えているような。もし自分の進む道にハードルがあったとしても、きっといつかはうまくいく、それが自然の摂理なんだろうな。そんな風に思える空でした。
味もコスパも日本一、絶対満足の巨大牡蠣はどこに?
朝日を拝んだら、帰りの飛行機に乗るべく釧路へ向かいます。でもその前に絶対に寄りたいところがあるんです。道東を訪れたなら、全国的に美味で有名な厚岸(あっけし)の牡蠣を食べないなんてことがあってはいけません。
ところで厚岸という地名の由来は、アイヌ語のアッケシイで、その意味は「牡蠣の多いところ」だそうです。昔から牡蠣の産地として有名だったなんて。そんなの聞いてしまったら、牡蠣好きのハートに火がつきますよ、厚岸尊い、厚岸に寄りますよー!
とはいえ、どこで食べたらいいものか……ご心配なく、情報は釧路で収集済みです。在住のガイドさんが太鼓判を押す、一番美味しい牡蠣を一番安くいただけるところは「厚岸漁業組合直売店エーウロコ」。
霧多布から車で走ること約30分。ドライブインのような建物に入ると……圧巻。牡蠣好きのわたしには、倒れそうなほどに輝く光景が広がっていました。
牡蠣牡蠣牡蠣、すぐそこの海から捕られたばかりの牡蠣! しかも目を疑うような巨大サイズばっかり!!
店員さんに、欲しいサイズと数を申し出てお会計をすませたら、飲食コーナーへ運び、用意された貝剥き器具を使い自分でメリッとはずします。この工程もまたいいんです、高まりますよ〜マイ牡蠣への思い。
きょ、巨大! これは3Lサイズでなんとたったの220円。通貨の単位間違えちゃったかな?! では、お安いことだし躊躇なく。勢いつけてひと口です。おいしー!! なんて濃厚クリーミー、ふわっとしてて思いっきりジューシィで。では間髪入れずに次の牡蠣もひと思いに口の中へ、また次の牡蠣も……買い足しにレジへ舞い戻ること無限。いくら美味しくても、この贅沢な食べっぷりは他では叶わないことでしょう。うーん、身悶えるほどに幸せです。
◆厚岸漁業組合直売店エーウロコ
北海道厚岸郡厚岸町港町6丁目3
道東、これまでなんとなくハードルの高い土地だと思っていました。北の果て、東の果て、すごく遠く感じられて。でも実は釧路へ飛んだらもう道東、なんてあっけないのでしょう。その先はレンタカーで走るごく普通のスタイルで存分に楽しめるから言うことありません。ぜひあなたも、他にないダイナミックでユニークな自然を体感しに、最強コスパの海の幸を味わいに訪れてみてください。