鹿児島の不思議地形がつまった秘境・甑島(こしきしま)でフォトジェニックなドローン旅

「甑島」って読み方が謎ですよね。「こしきしま」って読みます。鹿児島県薩摩川内市の離島、めっちゃ美しくて壮大で不思議なところです。秘境旅感あふれています。大きめのフェリーで青い海を眺めながら渡っていく旅情もたまりません。ていうか地形がかなり謎だから見て! そしてフォトジェニック。シャッターを切る手が止まりませんよ。ちょっとツウな旅を満喫したいそこのあなたに、お耳に入れたい島旅話を届けます。
目次
甑島はどこにある? 行き方は?
甑島は鹿児島県の西側、薩摩川内(さつませんだい)市に属する離島です。上甑島(かみこしきしま)、中甑島(なかこしきしま)、下甑島(しもこしきしま)の3つからなり、人口は全体で5,600人ほど、面積は約117.56平方キロメートル(石垣島のおよそ半分)。どの島も海岸線は複雑でとっても風光明媚なんですよ。しかも、それぞれの島は橋でつながっているので、ドライブがとっても楽しい! 上甑島と下甑島間の移動なら船を使えるので、自然豊かな島を内側・外側から両方堪能できます。移動がすでにアクティビティって、天才的観光要素ですよね。イケてる島だこと。
島へ行くには、まず川内駅まで辿り着いてください。鹿児島空港からなら直通のバスも出ていますよ。そこからは、川内駅やその周辺からバスに乗って、川内港ターミナルか串木野新港へ。バスとフェリーは接続するように組み立てられているので、安心してどうぞ。港からは、川内港ターミナルからだと50分の高速船で、串木野新港なら70分のフェリーで上甑島の里港に到着です。その先は高速船40分、フェリー1時間で下甑島の長浜港へ到着します。
長目の浜はとにかく波が激しい
まずは上甑島にある長目の浜で撮影した動画をどうぞ。
なかなかに激しい波でしょ。正直、波打ち際に立っているのがやっとですよ。
甑島のぶっとんだ地形を見て!
見て! びっくりでしょ。こんな地形、見たことない。砂洲が池と海をバッチリ仕切っています。

このひょろっとした渡り廊下みたいな場所は、冒頭の動画でもお見せした、長目の浜というところです。幅は約50メートルで長さは約4キロメートル。だいぶ堂々とした規模感です。ここは地図で見ても「一反木綿!?」って思えるおもしろい図になっているから、ぜひGoogleマップなどで検索してみて。へんてこな地図に興味がわいちゃうと思います。そして、この様子を肉眼で見るなら、長目の浜展望所と田之尻展望所からどうぞ。
さらに、こっちも。

奥の海から昇る太陽が里集落(地名)を照らし、その影が手前の海に映っている……ていうか、狭くない? なにこの細くて平らな土地。なんとなく建物の屋根が浮き出ているのが見えるので、スケール感は伝わっていると思います。改めて、この陸ほっそ(笑)。マップで見ると幅300メートル程度ですよ。集落の東西が海というのがそもそも不思議ですが、こんなギリギリ感あるところにみっちり集落ができるんですねぇ。便利といえば便利でしょうが、危ないといえば危ないような。でもそんなの、よそ者の浅い考え。こうして昔から平和な集落があるということは、安全だった証ですよね。それこそ神様仏様だかなんだか、大いなるものの御加護を感じずにはいられません。尊いですねぇ。
◆長目の浜展望所
住所:薩摩川内市里町
◆田之尻展望所
住所:薩摩川内市上甑町瀬上92-22
何度もリピートしたい上甑島の眺め最強な一棟貸しの「釣り民泊 西ノ浜」
ちょっと最高すぎません、この立地。宿の窓から真っ青な海を一望です!

ここは上甑島にある「釣り民泊 西ノ浜」。Googleマップをピンチアウトして、海目の前の立地を探した結果、宿は大当たりすぎました。

この海丸見え感に加えて、なんとまぁ、一棟貸しだったんですよ、そんな期待皆無だったのに。なにこの広さ、鬼ごっこでもバク転でもなんでもできますね。これで一泊5,000円ってどうかしてますよ。
◆釣り民泊 西ノ浜
住所:薩摩川内市里町里
電話番号:090-5926-8267
上甑島の最高に爽やかな朝日の海
宿の窓から見える海は、里集落の狭さを紹介した上の写真の、集落の影が写し出されているあたりです。ここの海辺、早朝はこうでした。

なかなかいい朝日。この海は西向きなのに、こんなに低い位置で昇って来た太陽をキャッチできちゃうってすごいでしょう。遮る山も丘も、大きな建物もなんにもないので、ストレートに島の向こう側にある太陽の恩恵を受けられます。風通しのいい土地は、光通しもいいんですね。
上甑島の港の朝はかわいいシーンばかり
さて、翌朝は宿がある集落の西側からではなく、東の港から太陽をお出迎えしましたよ。どうにもかわいい物語チックな風情が転がった朝だったので、ぜひご覧ください。

防波堤って、漁師さんや訪問者に対するメッセージボードとして優れていますよね。壁がただただ大きくて長いもの。「港内スロー」ってなんだかかわいくないですか? 焦る気持ちを鎮めて深呼吸したくな〜る。そう、こんな大海原でだって漁師さんは漁を思うと、わたしは朝日を背負うドローンを思うと、焦っちゃうんですよ。焦ったってなんにもいいことないのに。そんなときは、なんかのんきな空気が漂う「港内スロー」の文字のもと、海の民と空の民が出会った物語、みたいなこの瞬間を思い出そうと思います。
港内スローの奥には、かわいいかもめファミリーが。

これはいいものを見つけました。写真はドローンならではの構図ですが、カモメの上に座っているのを下から見上げて撮っても絶対かわいい。これはいいフォトスポット見つけちゃいました。
さて、そうこうしていると、太陽が顔を出しましたよ。そう、太陽が雲から顔を出したのは、日の出時間からしばらく経ってから。

早起きして暗いうちからここで待っているけど、そんなの気にしませんよ。撮影ってそういうもの。いい太陽に出逢える方が奇跡だわ、外れて当然! 大きな海に癒される時間がたっぷり取れたというものです。メンタル鍛えられるなぁ。
大荒れのヘンテコ地形「長目の浜」
冒頭の動画で見てもらった長目の浜は、実際に行くととっても荒い海でした。びっくり!

波がめっちゃクリーミィでしょ。ゆすぶられすぎ、打ちつけられすぎ、泡になりすぎ〜。さすがに自分ごと持っていかれそうになったので、この大波が来た後、スックと立ち上がりましたよ(笑)。ところで、海岸は石ころがごろごろ、という感じでしたが、どんどん荒波に削られていくので、石に角がないんです。地形はヘンテコだし、波は荒すぎだし、石は丸いし、長目の浜はそんじょそこらの浜とは大違い、おもしろいです。
“海ぽちゃ”が見られる穴場の防波堤
日の入りは、とっておきの秘密(っぽい)スポットから。甑大明神橋(こしきだいみょうじんばし)の下に防波堤がありまして、そこから眺めてみました。

ばっちり海ぽちゃスポットです。海ぽちゃとは、太陽が水平線に沈んでいくこと。海岸線が複雑だといろんな角度から障害物が見えて、なかなか海ぽちゃになりづらかったりします。つまり、この島もどこもかしこも海ぽちゃするわけではないのですが、ここは贅沢な場所ですね。もちろん、季節によって太陽が沈むポイントは変わるので調べてから行ってください。個人的には「日の出、日の入り」というアプリがおすすめですよ。

島と太陽と海、そして橋と防波堤。自然と人工物の融合って、美しいですね。どちらかだけでは描ききれない共同作業の美に、グッときます。
日本一おいしい刺身は甑島にあり!
ところで、わたしは撮影中よく食いっぱぐれます(笑)。夕飯の時間は撮影していることがほとんどですが、田舎に行けば行くほど、お店も早く閉まりますからね。お宿のご飯タイムにも被るから、はなから宿の食事はつけていません。ところが、このときは宿泊した「釣り民泊 西ノ浜」の方が、捕れたてのお魚を捌いて待っていてくれていたんです、ご好意で! 泣ける〜。

こんなにおいしくて印象に残ったお刺身は、他に思い出せません。こういう人とのやりとりこそが、旅をぐんと深く楽しくしてくれますね。
ぷぷっと笑えるのんきなオブジェ
さて、船で下甑島の長浜港へやってきました。おなかはすいているけど、ランチを食べる店がどこにもない、潔い(笑)! そのかわり、道端の野っ原にぴっかぴかの真新しい床屋さん用ぐるぐる看板を発見しましたよ、野っ原に……シュールであります。おなかがすきすぎてタヌキにでも騙されてるのかな(笑)。

ちなみに、食事ができるお店がなくて愕然としたのは本当だけど、集落にはスーパーがあって、どうやら上甑島より品揃えが豊富なんです。おいしそうなお弁当も並んでいて、ホッとしちゃいました。
下甑島ののんびりモード全開の海近民宿「古民家の宿 みち」
下甑島のお宿は民宿「古民家の宿 みち」さん。こちらは海のすぐそばにある一部屋貸しで、1泊4,000円。やっぱり価格がおかしいな〜。

やっぱりここもGoogleマップから、海岸線を追って探しました。田舎になればなるほど、ホテルの予約サイトはあまり役割を果たさなかったりするけど、Googleマップは宿探しにもかなり使えます。海の近くなど、立地に指定があるときはなおさらね。
◆古民家の宿 みち
住所:鹿児島県薩摩川内市下甑町長浜25
電話番号:09969-5-0108
ぬりかべと一反木綿の秘境の滝「瀬尾観音三滝」
さて、この島に立ち寄ったのは、滝に行ってみたかったから。秘境の滝って、なんかいいもの流れてそうだな〜という適当なイメージからです。さあ、長浜港の観光協会さんで電動自転車を4時間500円で借りて行きますよ。山あり谷あり5.5キロメートル、「瀬尾観音三滝」を目指します。道は山の中7割、海の見える道3割で、めちゃくちゃいいきもち! もちろん、登りもたっぷりあるけど、電動自転車なのでスイースイー。なんだか優越感。
そうして到着した滝はかっこいい! ぬりかべと一反木綿のコラボレーション(笑)。

ぬりかべが一枚岩なのがまたかっこいい! 輝く緑に包まれた、赤黒く光る大きな塊。圧倒的な存在感で爽やかさを放ち続ける滝を見ていると、この姿こそが滝の本分、美しい覚悟みたいなものを受け取ります。同時に、自分の本分はなんだったかをナチュラルに再確認。とっても楽しく背筋が伸びるのでした。
ごきげんマックスな防波堤
さて、長浜集落へ戻るときに立ち寄った、青瀬集落あたりの防波堤が楽しかったな!

棒があったので跳んでみました、気持ちはポールダンサー! 大好きなテトラポッド、しかもヘンテコな形のものも山積みだったのでお邪魔します。

誰も見ていないと思って、跳んだり寝っ転がったり盛大にしているわけですが、気づくとその様子ごと鑑賞されていることもあったりします。このときは釣り人が魚のチェックに来ていて、わたしにも「釣りするの?」と話しかけてきましたよ。ドローンより釣りの方がどう考えても一般的ですもんね。そうやって話がはずむと、「自転車ごと車に積んであげようか」「ジュースどうぞ」ってなってくるんですよね、やさし〜。今回はサイクリング自体を大きなお楽しみとしていたのでお断りしましたが、ほんと、人さえいればなんとかなっていくな〜と実感する甑島の旅です。
海がすぐそこ、長浜の朝焼けが尊い
さて、長浜のお楽しみは東向きの港。朝焼けにばっちりでしょう。

宿から朝日ポイントが近いだなんてとびっきり便利! 暗いうちからどっしりした防波堤の上で朝日を待ちます。鹿児島のひと気少ない離島の端っこで太陽を待ってる……なんって満ち足りるご褒美時間でしょう。

大きめで寝やすめ(笑)のテトラポットも、ぐんぐんわたしを平和にしてくれるのでした。
風景が不思議、フォトスポット多すぎ、触れ合う人々がやさしい気持ちを置いていってくれる甑島。取り立てて目立った観光施設もないのに、わたしは早くも戻りたいなと思ってしまうのです。