サステナブルに旅をしたい! 航空会社で実施している「カーボン・オフセット」とは?
ようやく新型コロナウイルスが5類感染症に引き下げられ、今年の夏こそは飛行機に乗って旅をしようと計画している方も多いのではないでしょうか? 前回の記事では、サステナブルな旅を実現するために「電車」をおすすめしましたが、今回は「飛行機」でサステナブルに旅する方法を紹介。日本でも行われている「カーボン・オフセット」について注目しました。
トロント・ピアソン国際空港:筆者撮影
目次
「飛び恥」という言葉はあるけれど……
スウェーデンで生まれた「飛び恥」という言葉を知っていますか? 世界全体で見ると貨物などを含めた航空関連は、世界の温室効果ガス排出量の約2%を占めています。これは船舶(1.7%)や鉄道(0.4%)を上回る排出量です。このことから、飛行機に乗ることをやめると宣言した著名人が発した言葉が「飛び恥」と呼ばれています。
確かにプライベートジェットを多用して旅行するような贅沢三昧は、サステナブルとはいえないでしょう。しかし、数年に一度の海外旅行を楽しみにしている人に対して「海外旅行をするな」とはいえません。世界では雇用者の約1割が観光産業で働いているといわれているので、旅と環境の両立を目指すことも大切です。
サステナブルな旅のための「カーボン・オフセット」とは?
頻繁には機会がない飛行機での旅は、できるだけ難しいことを考えずに楽しみたい、だけど環境のことも考えたい。そんな状況を助ける方法のひとつが「カーボン・オフセット」です。日本語で「埋め合わせること」を意味し、飛行機によって排出された温室効果ガスが吸収されるよう、別途対策をすることです。
最もわかりやすいのが、森林整備のための保護活動。自分が乗った飛行機で排出された温室効果ガスを吸収し、その分を整備のために寄付することで、埋め合わせる方法です。この埋め合わせ(オフセット)は飛行機に限らず、数多くの温室効果ガスの排出に対して行われているメジャーな方法です。
実際に「カーボン・オフセット」を利用してみた
私は先月、大学の研究の一環でカナダのトロントへ飛行機で行きました。そのときに「カーボン・オフセット」を実際に行ってみたのでご紹介します。とはいっても、やることは旅行代理店に「カーボン・オフセットをしたい」と伝えるだけ。すると、利用する航空会社「エアカナダ」からURLが送られてくるので、開いて出発地と目的地を入力すると、温室効果ガス排出量が計算されます。算出された金額をそのままクレジットカードで支払いができる仕組みになっているので、そのまま手続きを進めれば完了です。とても簡単ですよね。
高知県の「カーボン・オフセット」プログラム
しかし、せっかくなら日本の森林を守りたいと思ったので、今回は高知県の「カーボン・オフセット」プログラムを利用することにしました。こちらはメールでの申請か、購入申込書をダウンロードして提出することで売買が完了します。購入した「カーボン・オフセット」は、高知県の森林保全活動に使われます。
これまでの植林活動・寄付などと「カーボン・オフセット」の違いは、「自分が排出した温室効果ガス」だけを購入するところ。「自分が飛行機移動をしたことで排出された分を取り戻す」という目標が明確になる分、やりがいに繋がります。実際に私は、東京からトロントまでのフライトで排出される約1トン分を購入しました。
こちらはアメリカとカナダにまたがる「ナイアガラの滝」。先日トロントへ行った際に訪れました。ここは世界三大瀑布のひとつで有名な観光スポットなので世界遺産だと思っている方もいると思いますが、実は世界遺産に登録されていないのです。少し意外だと思いませんか? 登録されていない理由のひとつは、滝の周りに娯楽施設や観光施設が多く、本来の自然の形が保たれていないため。観光をとるのか、自然をとるのか……両立の道はないのかと、ここでもサステナブルについて考えさせられました。
サステナブルな旅の秘訣……まずは「知ること」が大切
今回は「カーボン・オフセット」について紹介しましたが、少し難しいと感じた方もいるかもしれません。しかし、JALやANAなど国内の航空会社でも、個人旅行や出張の際に出る温室効果ガス分を埋め合わせるプログラムの提供が始まっているんです。実は海外だけではなく、日本でもサステナブルな旅の実現に向けて、少しずつ変わり始めています。
電車だけではなく、飛行機でもサステナブルな旅をするために「カーボン・オフセット」に取り組むなど、個人でもできることに少しずつ挑戦していくことが、サステナブルな旅に繋がると思います。ぜひ皆さんも飛行機に乗るときは、「カーボン・オフセット」に目を向けてみてほしいです。