天体観測は夏にぴったり! 気象予報士・千種ゆり子がおすすめスポットを紹介

こんにちは。気象予報士・千種ゆり子が、夏の星空観察におすすめのスポットと、旅先で星空をより楽しむための極意を紹介します。今年は8月4日に「伝統的七夕」を迎え、 11~13日には「ペルセウス座流星群」も極大となります。夏は冬と違い、夜が極端に寒いことはありません。長時間外で観察できるので“のんびりゆったり天体観測”にぴったりの季節なんです。
目次
7月7日だけじゃない! 8月にも七夕があるんです
七夕と言えば7月7日のイメージが強いですが、8月にもあるのをご存知ですか? 「伝統的七夕」と呼ばれていて、今年は8月4日にあたります。七夕は元々、旧暦の7月7日にあたる日に行われる行事でしたが、明治時代に新暦へ改められてからは今の7月7日に行われるのが一般的になりました。しかし、例年7月上旬は梅雨にあたり、星が見られないことも多いです。一方、「伝統的七夕」の時期は梅雨も明けて晴れることが多いため、星空を眺めるのにうってつけといえます。
近年人気急上昇中! 撮影に向いている愛媛県「網掛岩」と高知県「UFOライン」

クレジット:@detection_eyes <https://www.instagram.com/detection_eyes/>
2020年7月に瀬戸内海に面した愛媛県の網掛岩で撮影されました。とてもきれいですよね。実は、夏の天体観測の大敵は水蒸気。水蒸気が多いと肉眼では星空が見えにくくなってしまう可能性があります。さらにここは海に近いので空気中には水蒸気が多いはずですが、きちんとした撮影技術があれば、肉眼よりもたくさんの星を写すことができるのです。こういった沿岸部のスポットは、天体観測に慣れた方が写真撮影をする場合におすすめだといえます。ちなみに中央に映っているのは「ネオワイズ彗星」といい、2020年3月に発見された新しい彗星です。
天体観測初心者には、水蒸気が少ない内陸部や気温の低い高地をおすすめします。例えば、四国山地に位置するUFOライン(町道瓶ヶ森線)がCM撮影に使われて有名になり、星空も“映える”と賑わっているそうですよ。
◆綱掛岩
住所:愛媛県大洲市長浜町櫛生
◆UFOライン(町道瓶ヶ森線)
住所:高知県吾川郡いの町寺川
王道! “宇宙に一番近い駅”がある、長野県「野辺山高原」
星空観察スポットの王道として知られているのが、長野県の野辺山高原。野辺山高原にあるJR小海線野辺山駅は、日本で一番高い所にある駅です。標高は1345.67mで、“宇宙に一番近い駅”とも言われています。私の趣味は早押しクイズなのですが、早押しクイズの問題にもなるくらい有名な場所です。
クレジット:信州みなみまきむら
野辺山高原付近にある宿泊施設には、ワインのソムリエのように星空や宇宙の楽しみ方を教えてくれる星のソムリエ「星空案内人」が在籍しているのです! 東京から新幹線と電車で3時間というアクセスのよさも人気の理由の一つで、気軽に星空観察を楽しむことができますよ。
◆野辺山高原
住所:長野県南佐久郡南牧村平沢
望遠鏡にプラネタリウムもある、北海道「なよろ市立天文台きたすばる」
もう少し詳しく夜空を観察したいという方は北海道名寄市にある、なよろ市立天文台きたすばるがおすすめです。ここでは18以上の望遠鏡を備えていて、望遠鏡を使った天体観測ができます。天気が悪くても、デジタルプラネタリウムを楽しむことができるので安心です。8月12日、13日にはペルセウス座流星群観望会、8月30日から9月4日は土星観望会が開催されるなど、イベントも充実しています。

クレジット:なよろ市立天文台(2021年7月<村上恭彦>撮影)
名寄市は北国かつ内陸部に位置しているので、水蒸気が少なく空気が澄んでいます。ところが、盆地なので深夜~早朝に大きく気温が下がると霧が出ることも。名寄市での星空観察は夜10時ごろまでにするといいでしょう。

クレジット:なよろ市立天文台(2015年7月<加藤裕子>撮影)
なよろ市立天文台きたすばるのホームページには写真や動画がたくさんありますが、見ているだけで宇宙の神秘に包まれた気持ちになるので不思議です。この星空や天体をぜひとも現地で見たいものですね。
◆なよろ市立天文台きたすばる
住所:北海道名寄市字日進157番地1
電話:01654-2-3956
※コロナ対策のため、来館時および観望会参加時は電話にて要予約。
東京から車で2時間。埼玉県「堂平天文台 星と緑の創造センター」
堂平天文台 星と緑の創造センターは東京から車で約2時間の場所に位置する、宿泊施設やキャンプ場を備えた施設です。
ここではブルーベリー摘み取り体験などもあり、お子さん連れで昼間から楽しむこともできます。2022年7月現在は新型コロナウイルスの影響で星空観望会が中止となっていますが、家族単位でキャンプをすることはできるので、ゆっくり滞在しながら気軽に星空観察をするのにぴったりの場所です。
◆堂平天文台 星と緑の創造センター
住所:埼玉県比企郡ときがわ町大野1853
電話:080-2373-8682
※最新情報はときがわ町HP(https://www.town.tokigawa.lg.jp/info/27)を確認してください。
まとめ~夏の夜空を楽しむ極意~
夏の天体観測は、天候の問題で空が見えないこともあります。天体観測初心者の方は以下の3つをおさえておくとよいでしょう。
・水蒸気が少ない内陸部、高地、北国のスポットに行く
・星空案内人や天文台の職員からの説明やプラネタリウムやキャンプなど、万が一星を見られなかった時でも飽きずにいられる場所を選ぶ
・外でゆったり、のんびり自然を楽しむ気持ちを持つ
最後に重要な注意点。人にとって適度な気温は、虫にとってもちょうどいい気温なのです。自然の中で天体観測をする場合は虫よけスプレーなどを使って、肌を露出しない恰好での観察をおすすめします。天体観測にぴったりの今の時期、ぜひ星空を見に行く旅をしてみてはいかがでしょうか?
◆千種ゆり子
埼玉県富士見市出身。幼少期に阪神淡路大震災で被災したことと、東日本大震災をきっかけに防災の道に進むことを決意。2013年に気象予報士資格取得後、気象予報士としてテレビ朝日スーパーJチャンネル(土日)やTBS THE TIME,にレギュラー出演する傍ら、講演実績も多数。2021年10月より東京大学大学院に進学、SNS分析と科学コミュニケーションを研究。趣味は空手と早押しクイズ。