北海道の新名物! 食感もカロリーも軽いフロランタンを生んだ老舗和菓子店の四代目店主の決意[北海道美唄市]

北海道

2023.06.27

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北海道の新名物! 食感もカロリーも軽いフロランタンを生んだ老舗和菓子店の四代目店主の決意[北海道美唄市]

「北海道のお土産は結構知ってる!」という方に挑戦状です。「くるみフロランタン」をご存知ですか? 札幌と旭川の間にある美唄市で、創業110年を迎えた老舗和菓子店・美唄長栄堂(びばい ちょうえいどう)のフロランタンです。作ったのは、28歳の若き店主・市川琳那(いちかわ りんな)さん。美唄名物の和菓子のほか、50年以上ロングセラーの洋菓子もあり、地元の人の来店が絶えないお店を切り盛りしながら、オフの日は友達と買い物に行くのが楽しみという市川さんは、軽やかに未来を見据えています。

写真/村上未知

目次

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和菓子のモナカの皮でフロランタン!? 

創業110年のお店の4代目としての決意

受け継がれてきた名物は「市民のもの」

美唄に軸を置きながら今後を見据えて

おわりに

「美唄長栄堂」店主の市川琳那さん

「美唄長栄堂」店主の市川琳那さん

和菓子のモナカの皮でフロランタン!? 

――名物の「くるみフロランタン」は市川さんが開発したとのことですが、その経緯を教えてください。

美唄市の市制70周年を記念して新名物をつくろうと、4年前から手掛けてきました。美唄は、かつてカシグルミの栽培面積が全国最大だったまち。今、カシグルミを栽培するのは市内にある上村農園さん1軒のみで、道内でも唯一のくるみ農家となってしまいましたが、国産のくるみは鼻から抜ける香りが全然違います。そのくるみと、和菓子店である美唄長栄堂、そして4代目を継いだ私のテイストを……と考えた結果、「フロランタン」になりました。それはすぐに思いつきましたね。上村農園さんの協力を得ながら試行錯誤を重ねて、くるみの味を壊さないように作り上げました。同じく、美唄のくるみを使った「美唄くるみ餅」と一緒に、ぜひ味わってほしいですね。

くるみフロランタン250円

くるみフロランタン250円

――食感も特徴的ですよね。さっくり軽くて、1つ48kcalとは!

残らない甘さにこだわりました。くどい甘さだと1つで満足してしまうけれど、これは食べたあと口に甘さが残らないから、続けてもう1枚食べたくなると思います。

創業110年のお店の4代目としての決意

――創業110年の美唄長栄堂さんが、そんな斬新な商品を手掛けているのも驚きです。お店の歴史を教えてください。

曽祖父が大正2(1913)年に創業し、今年で110年を迎えました。2代目がその長男で、3代目がその長男、と親族でやっていましたが、6年前に閉店することになって、新聞などで結構取り上げられたんです。いくつかの企業さんから事業を継承したいと申し出もあったのですが、「曽祖父が創業したお店を継ぐのは、ひ孫の私!」とずっと思っていたので、継ぐことにしました。当時は22歳でした。

――すでに決意があったんですね!

祖母が店で働いていたので、小さい頃よく遊びに行っていて、夢はケーキ屋さんでした。8年前、製菓の専門学校を卒業してから、当時3代目が切り盛りしていた美唄長栄堂で1年ほど働きました。ただ、結婚式場で働いてみたくなって、ウエディングも手掛ける東京・代官山のレストランに勤めました。働きだして1年くらい経ったときに、父から「美唄長栄堂が店を閉めるから継がないか」と言われたんです。もう少し勉強したかったけれど、いずれ戻るつもりでしたし、廃業が迫っていたので戻りました。私が継いでから今年で6年目です。

受け継がれてきた名物は「市民のもの」

――不安はなかったですか?

少し不安はありましたが、むしろ「やりたい」という気持ちのほうが強かったです。周囲も後押ししてくれましたし、1年ほど美唄長栄堂で働いていたので、名物の「くるみ餅」や和菓子の作り方はわかっていたのも強みでした。知らない人が作れば味が変わってしまうので、「味も作り方も知っている私が継がなきゃ」と思ったんです。お店の名物「くるみ餅」と「べかんべ最中」、洋菓子の「サバラン」は、ずっと受け継がれているもので、もう美唄市みんなのもの。なので、絶対に作り方は変えません。研究すればもっとおいしくなるんじゃないかと思うときもありますが、ちょっとでもアレンジしたら最初の味からどんどん離れてしまうので、最初の作り方と配合は絶対に変えないように注意しています。味を受け継ぐということは、“味を守る”ことだと思っています。

――経験も熱意もあって、まさに「天職」ですね。

幼稚園のときからお店を継ぐことを決めていたんです。看護師をやりたいと思ったこともあったけれど、進路希望の紙に看護学校の学校名が漢字で書けなくて(笑)。先生に「そんなんじゃ、看護学校には行けないね」と言われて、やっぱりケーキ屋さんだなと思い直しました(笑)。

――一度は閉業するとなった美唄長栄堂が復活すると知ったお客さんの反応はどうでしたか?

新聞などで美唄長栄堂の閉店が取り上げられて、美唄の人たちは食べ納めと思ったのか大勢の方が買いにきてくれたんです。愛されているなと思って、そのあと私が継ぐことを発表すると、「よかった!」という反応をいただきましたね。「継いでくれてありがとうございます」というお手紙をいただいたこともあります。味が変わったというお声はないですね。

美唄に軸を置きながら今後を見据えて

――今後やりたいと思っていることはありますか?

ネット販売もしていきたいですね。この前、オンラインショップを開設したんです。今SNSでお店を探すことも多いので、実際に来店していなくても、惹かれるものを作れば「お店に行きたい」「食べたい」と思っていただけると思うんです。そういう方が増えるように工夫しています。

――最後に、美唄市のおすすめの場所を教えてください。

友達を連れて行くとしたら「アルテピアッツァ美唄」。友達の犬を借りて、散歩に行くこともあります。美唄では春になると土の香りがするんです。都会じゃなかなか感じられません。食べ物なら、「美唄やきとり たつみ」の「とりさし」。新鮮じゃないと食べられないので、ここでしか味わえないものです。美唄市のよさは、札幌と旭川のちょうど真ん中でどっちにも行き来がしやすいことでしょうか。アクセスもよく、都会の喧騒から離れているので、静かでいいところです。

美唄長栄堂
住所/北海道美唄市大通東1条南1-1-27
電話/0126-63-2011

おわりに

歴史も格式もある美唄長栄堂ですが、市川さんは気負いもなく、菓子作りを楽しんでいました。ちなみに一番好きな仕事は、「ケーキを仕上げる作業」。「自分が作ったものがめちゃくちゃ可愛いって思うので、お客様の前に出す直前の、仕上げの作業が一番楽しいです」。そんな生粋の菓子職人の作るお菓子、おいしいに決まっています。北海道でこだわりのお土産を探している方におすすめです。『月刊旅色2023年7月号』では、美唄市の魅力を紹介中。ぜひご覧ください。

月刊旅色2023年7月号より
「月刊旅色2023年7月号」はこちらから

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#北海道 #インタビュー #和菓子 #美唄市 #長栄堂 #名物

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『月刊旅色』副編集長。写真家・浅田政志さんの連載「宿旅」を担当して痛感したのは、全国各地にいい宿がたくさんあるということ。趣味は「温泉石鹸」集め。名物・お土産探しが大好きですが、下戸なので銘酒やお酒との相性はちんぷんかんぷんです。

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