神さまの土地を空から。現代メカを通してバシバシ伝わるただならぬ気配
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旅をしていてふと「うーん? 神さまいそうだなー」漠然と感じることがあります。ちょっと何言っちゃってんの的な表現になりまして恐縮ですが、いわれを知らずに訪れた先でそう感じ、後から神さまにまつわるスポットだったと知ると、場の持つ力に驚かされるのです。そうして大昔から多くの人々が神秘的な何かを感じ続けてきていることから、人が持ち合わせる感覚の不思議さを感じます。
さて今回は、ちょっとただならぬ空気の漂うスポットで空を舞ったときの情景をご覧くださいませ。
奄美大島の「安木屋場」で、ただならぬ立神さまに出合った
出合うも何も、安木屋場(あんきゃば)の漁港に行けばそこに「立神」と呼ばれる小島があるんですけれど。雰囲気がね、作り込まれたような三角形のそれと、場を包み込む空気がなんかもうただならぬ感じがしまして。まずは動画をご覧になってください。何か伝わるといいのですが。
「立神」さまは、安木屋場だけでなく琉球文化圏に存在する、沖合に浮ぶ小島のことで、神さまが理想郷ニライカナイからやってきたときに最初に立ち寄る場所とされています。
不思議でしょ! 自然にあるんですよ、安木屋場の立神さまのように、いかにも何かの意図があって形作られたようなかっこいいフォルムの小島があちこちに単独で。
とっても個人的な感想なのですが、同じ琉球文化圏でも、奄美で感じる神さま的な気配は、沖縄でのそれより「畏れ」が大きくて。「敬い」と言ったら両者に差はないのですが。
単純に沖縄よりは寒く、雨風が身に染みることもあるという、体感温度的な理由かもしれません。また、薩摩と琉球の間で揺れ動いた壮絶な歴史なんかも、もしかしたら関係があるのかもしれません。いやどこまでも個人の感想の枠を脱しないのでここでやめまして、とにかく、神秘的なものを感じながら撮影したことが伝わりましたら幸いです。
今回すごく神秘的だと思ったこの立神さまがあるのは安木屋場。龍郷町の集落の名前ですが、語感にインパクトありすぎですよね、何語なんだか。でも由来はちゃんとあります。昔、この辺りでは人々が漁のための網を干していて、そのときの休憩場所として「網小屋場(あみこやば)」があったそうです。それがなまって「あんきゃば」。
ここの立神さまを特に神秘的に感じるのは、他の多くの立神さまと違って防波堤の先にあることも作用しているのでしょうか。海の上を長々歩いて、なんならお足元まで畏怖のオーラを浴びに自ら進んでいけるのです。
また、島の方向が西なので、夕暮れ時は否が応でも神秘度が高まります。とんがり帽子型のシュッとした小島が、美しくも切ないオレンジの光を背景に、ズーンと黒く佇む様子はありがたすぎて、なんらかの意図を感じてしまうんです。
さらにもうひとつ、荘厳な空気感には理由がありそうです。勝手に神秘のシャワーを浴びた気になった後日に知ったのですが、立神さまの背後に見える山は「オダキ」といい、力の大きい神山なんですって。山頂には「今井権現」の社殿があって、平家の魂を納める場所とされていたけど、もとからいらした神の力が強すぎて、平家の弔いは別の場所に移したとか(諸説あり)。
わたしは強烈な神山と立神さまの間に立って、空を舞っていたんですね……えらいこっちゃ!
まあ、そんなこと言ったって、信じるも信じないもあなた次第ですが。
加計呂麻島の西阿室、奥地すぎる世界はピラミッド型の立神さまに守られていたなんて
加計呂麻島(かけろまじま)をご存知ですか? 奄美大島の南にぴったり寄り添う島で、島全体が奄美大島の南に位置する瀬戸内町に属します。面積は77.25㎢、人口は1210人(平成31年)。この島に本土から行くとしたら、奄美大島北部の空港まで飛び、そこから車かバスで奄美大島を縦断して古仁屋港(こにやこう)へ、さらに船を使って渡ります。なかなかの奥地でしょ。
こちらでご紹介する立神さまのある西阿室(にしあむろ)は、その加計呂麻島に船で渡ってから、反対の海まで出たところにある集落なので、“果て感”たっぷりです。
さらに言うとわたしの場合は、すんなり島を縦断せず、Googleマップを頼りに海沿いの道をぐるっと進んでいったので、すごい山道に入って冒険感たっぷりだったんですよね。
超ガタガタで荒れ放題だけど(台風後放置されていた模様)、めちゃくちゃ狭くて後戻りすら不可能で……たいそう時間と神経を消費して辿り着いたので、インパクトは倍増だったかもしれません(笑)。
辿りついた西阿室で浜に出たら、海からピラミッドみたいな小島がニョキニョキと生えていたんですよ。雲もなんだか大袈裟に主張してるし。
このときはまだ「立神」さまの存在を知らなかったこともあり、ただただびっくりしてドローンをスタンバイ、空から確認しに行きました。
あらまぁ、庭師さんが木をカットしたように、きれいな形をした小島がふたつ並んでいて(写真のように正面から見ると後ろの小島は見えない)、そこに向けて海の中に道が作られていたんです。なんて意味深なの。
その奥に見えているのは、さらなる離島の与路島(よろしま)です。古仁屋港から1日に1便の定期船か、海上タクシーで渡るんですって。面積は9.35㎢で、人口77人(平成31年)。秘められた楽園かもしれません。
ということは、左に見えている加計呂麻島の半島の奥にはもう1つの離島、請島(うけじま)もあることでしょう。面積はもう少し大きく13.35㎢、人口は98人(平成31年)。
そんな、どこまで行っても永遠に尽きないさらなる奥地に囲まれた意味深シェイプの島……この辺り一帯を守るパワーのある存在なのかもしれないなぁ、なんて気分になりました。
この島が「立神」とよばれていることは後日知ることになります。人間が太古から受け継いでいるであろう野生のカン的感覚は、満場一致であの島を尊いものと捉えているようです。
西伊豆の入り口、「大瀬崎」と「御浜岬」には巨大なゾウとネッシーがいた
さて、こちらは沼津、西伊豆入り口辺りでのお話です。日の出は大瀬海崎というダイビングスポットからドローンを飛ばして堪能しました。
太陽が昇り切って明るくなると、岬の方へ飛んで行ったんです。そしたらあらま!
ゾウさんがいたんですよ。山が顔で、岬が鼻。まるで鼻の先を丸めてバナナをぐわしっ! とつかみ取るところみたい。
よく見ると、ゾウの鼻の先っぽは池になっていました。どうにも自然にまかせて仕上がったとは思えずびっくり、できすぎです。 飛ばしながら地図を確認すると、この池は「神池」と呼ばれていて、すぐそこに大瀬崎神社もあるんですね。神さまの池だからこんな形になったのか……とは言えませんが、でも不思議なものを霊力頼みに換算すると座りがいいのは確かです(笑)。
このシーンにある不思議は形だけではありませんでした。空から見ても海と近いこの池、淡水なんですって! こんな塩水地帯スレスレの池にコイが泳いでいるって、コイが進化して塩水対応になったのかと思ってしまいます。しかもこの森は、ビャクシンというヒノキ科の木からなっていて、ビャクシンの樹林としては日本最北端になるとのこと。視覚からくる神っぽい佇まいに、「へー」と感心しきりだったのです。
翌朝、少し南に同じように岬が飛び出る「御浜岬」があるのを地図で知り、行ってみたんです。
あらま、こちらはネッシーでした。長い首をくねらせています。それこそネッシーは淡水怪獣ではなかったかと心配になってしまいますが、船は飲み込まず人間と仲良く共存しているようで、その点ホッとします。
ところで、こちらの岬の先端にも諸口神社(もろくちじんじゃ)があるんです。こういう際どい地形には神が宿りやすいのでしょうか。もしくは神秘的に見える際どい場所だから、人々が神を祀ってきたのでしょうか。
さて、ここの森にも穴があります。神池だったら大瀬崎とリンクしすぎて、神秘度がもっと高まりそう……わくわくしながら飛んでいくと。
残念、池ではなかったんですね。
ともあれ、大瀬崎と御浜岬の類似っぷりは不思議でしかたなくて。西伊豆の入り口というお土地柄、何かあってもよさそうだし(?)。そんなことを、朝っぱらの1日で1番ピュアな心理状態で、天空からいろんな角度で見て考察していると、昔話の世界に現代メカで突入した気分になってきて……。ドローンはどうやら、時空すら超える「バック・トゥ・ザ・フューチャー」並みの神グッズだと確認したのでした。