文/松尾好江(ランズ)


砂糖と卵をふんだんに使って作られ、
濃厚な味わいのカステラ
貿易の起点となった出島がある長崎市。かつては、卵を食べることは宗教的に禁忌とされていましたが、西欧から砂糖に加えて卵を食べる文化も輸入されました。ポルトガル人から伝えられたカステラは、砂糖と卵をたっぷり使って作られ、今の姿へと進化していきます。明治20(1887)年創業の白水堂は、卵黄と卵白の割合を5対3にして、濃厚な味を楽しめる「五三焼かすてら」をはじめとした和菓子を製造しています。今年、疫病除けに効くとされる妖怪「アマビエ」が人気に。白水堂でもそれにちなみ、アマビエをモチーフにした和生菓子と「桃かすてら」を販売しています。
白水堂 思案橋本店
住所/長崎県長崎市油屋町1番3号
営業時間/9:30~18:30
休/不定休
アクセス/電車:長崎電気軌道思案橋駅から徒歩約2分
車:長崎バイパス川平ICから約15分
電話/095-826-0145







米×砂糖で生まれた「諫早おこし」を
モダンな味わいでも
諫早は、江戸時代から始まった干拓によって新田開発が活発に行われ、米が豊富に採れるようになりました。また、長崎・出島の近くにあり、砂糖を入手しやすい環境でもありました。そのような土壌で生まれたのが「諫早おこし」。蒸したうるち米を長崎特有のかん水「唐アク」に漬け込み、天日干しをして数カ月寝かせて炒った乾飯(ほしいい)を水あめで固めたものです。寛政5(1793)年創業の菓秀苑 森長は、同年に創業当時から受け継がれてきた製法に、黒砂糖を混ぜたことで「森長おこし」を誕生させました。いちごなどさまざまなフレーバーがあり、一口サイズで食べやすい「Puchi OKOC(ぷちおこしー)」も人気です。
菓秀苑 森長 八坂町本店
住所/長崎県諫早市八坂町3-10
営業時間/9:00~18:00
休/1月1日
アクセス/電車:島原鉄道本諫早駅から徒歩約10分
車:長崎自動車道諫早ICから約15分
電話/0957-22-4337


砂糖蔵を改装したもの。れんが造りのレトロな洋館が特徴
羊羹屋が点在する小城で
文化や歴史とともに味わう
小城と言えば「小城羊羹」と言われるほど全国的にも有名ですが、それは、この地域が羊羹の原料となる小豆やきれいな水などが手に入りやすい環境だったから。また、城下町でもあったことから茶道の文化も発達しており、茶菓子として羊羹がよく使われたことも理由の一つです。現在でも、人口35,000人ほどの市内に、20軒以上の店が点在しています。明治32(1899)年創業の村岡総本舗で、江戸時代から続く伝統的な製法で作られる「小城羊羹・特製切り羊羹」は、煉りあがった羊羹を型に入れさまして固め、一昼夜寝かせることで、余分な水分を飛ばします。これによって、外側は砂糖のシャリっとした歯触り、中は柔らかい羊羹になるのです。本店には羊羹資料館が隣接しており、羊羹の歴史や製造工程が学べます。
村岡総本舗本店
住所/佐賀県小城市小城町861
営業時間/9:00~18:00
休/なし
アクセス/電車:JR唐津線小城駅からタクシーで約5分
車:長崎自動車道小城スマートICから約2分
電話/0952-72-2131







鉄の街で話題の鐵平糖(てっぺいとう)
長崎街道の起点(終点)である北九州市。布教活動を行うためにポルトガルから来た宣教師ルイス・フロイスが、織田信長に献上したことが日本における金平糖の始まりだと伝えられています。明治以降は、北九州の周辺では石炭採掘や製鉄業が盛んになり、そこで肉体労働に従事する人たちのエネルギー補給として甘味が重宝されてきました。そうした背景の中、平成27(2015)年、産業遺産群の1つとして「官営八幡製鐵所関連施設」が世界遺産に登録されたことを記念して、千草ホテルが「鐵平糖」を開発。製造は西日本で唯一金平糖を作っている入江製菓が請け負い、回転する大きな釜で14日間かける、伝統的な製法で作られています。
住所/福岡県北九州市八幡東区西本町1丁目1-1
アクセス/電車:JR鹿児島本線八幡駅から徒歩約10分
車:北九州都市高速4号線大谷JCTから約5分
電話/093-671-1131
