―― 今回浪江町を巡っていただきました。いかがでしたか？

2010年に三陸を旅した帰りに、浪江町の近くへ立ち寄った思い出があります。だからその後に震災のニュースを聞いた時は呆然としました。あれから10年以上経ちますが、実はちょっぴり訪れるのが怖かったんです。被害を目の当たりにしたら、当時のショックが蘇ってくるんじゃないかと思って。けれど実際に訪れてみて、未来へ向けてしっかりと歩んでいるまちの姿や、地元の方の温かい笑顔に胸がいっぱいになり、パワーをもらいました。なんだか私自身が励まされる瞬間が多い旅で、今、浪江町を訪れて良かったなと心から思いました。

―― 特に印象的だったスポットはありますか？

震災遺構の「請戸小学校」が印象的でした。津波のすさまじさは想像を超えるもので、自然の脅威や破壊力には抗えないという恐ろしさと、人間はちっぽけな存在だなと改めて考えさせられましたが、それだけではなくって。先生方の素晴らしい判断やアナウンスにより全員が無事に避難できたという「請戸小学校」のエピソード、大平山への避難の際に入口がわからなくて困っていたらひとりの生徒が道順を案内してくれたというエピソード……日頃から風通しのいい関係性や絆があったからこそ、このような奇跡に繋がったんでしょうね。このエピソードを聞いて、私自身もとても救われたような気持ちになりました。“奇跡の学校”をしっかりと残して伝えていくことは、まちの人の救いにもなるでしょうし。ぜひ、たくさんの人に学びの場として訪れてほしいですね。

―― 地元の方々と交流もされていましたね。

皆さんちゃんと未来のビジョンを描いて、前向きに毎日を過ごしているなと、ポジティブな印象を受けました。なんだかまち全体が若くて、元気ですよね。今、浪江町にはUターン移住者だけではなく、新たに移住するIターンの方も増えていると伺いました。「道の駅なみえ」ではお店の方がおすすめ商品をたくさん教えてくれたので、楽しみながらお土産選びができました。店内はにぎやかで楽しい雰囲気に包まれていて、活気がありましたよね。

―― いろいろな発見、
　　 学びがある旅になったと思います。
　　 浪江町を旅して感じたことはありますか。

おいしいものを食べて、綺麗なものを見るだけが旅ではないと思うんです。その土地の歴史を知って、日本の魅力を学び直すことも旅がもたらしてくれることだなと思います。「観光」って、「光」を「観る」と書きますよね。まさにそんな風に、そのまちの「光」を見に行くことが大切で、今回、浪江町を巡らせていただくなかで「光」をたくさん感じました。このまちは力強いですよ。キラキラしていて、パワーがあって、「大丈夫だよ」と土地が伝えてくれているような印象を受けました。

―― グルメも楽しまれていましたね。

浪江グルメをたくさん堪能しました！ お刺身も天ぷらも全部おいしくて、なんだか“正しい味”がしました。素材本来のおいしさと言いますか、故郷を思い出す、心温まるような味に出会えてとても嬉しかったです。ご当地グルメの「なみえ焼そば」もお土産に購入しました。地元の方からもおすすめだと教えていただいたので、今から食べるのが楽しみです！

―― 羽田さんは普段、どんな旅をしますか？

神社仏閣が好きなので、目的地を中心に周辺を観光するような旅が多いです。日本は小さな島国でありながら、北と南で文化がまったく異なっているところがあったりして、おもしろいですよね。土地ごとに、空気や香り、そこに住む人の雰囲気が違いますし、それを体感しに行くのも好きです。どこもそのまちならではの魅力が溢れていて、本当に日本は素晴らしいなって思います。

―― 旅をするときに、
　　 大切にしていることはありますか？

旅先ではいつも「自分なりのものを見つけたい、発見したい」と思っています。「羽田甚商店」（羽田さんが運営するオンラインショップ）を始めてから、日本中を旅して、たくさんの出会いがありました。新しい文化やさまざまな人とお話させていただくなかで、自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みることもあります。そうして、やっぱり自分はこれが苦手だなとか、こういうものが好きなんだとか改めて認識することも。今回、「なみえの技・なりわい館」で絵付け体験をしましたが、実は絵を描くことが大の苦手で！（笑）。だけど今年は「やっちゃいな」をテーマにしているので、挑戦してみたんです。そしたらとても楽しくて！ こんな新しい発見があるのも旅の良さだなと思います。