あの道を通りたい 目的地に大抜擢するべきVIPな道
目次
撮影してみたいと目をつけたスポットに向かう途中、どうしても足をとめてしまう道があります。車やバイクから降りて周囲を確認し「目的地はまだ先なのに~間に合うかな?!」、太陽と行程を懸念しつつも、ドローンを飛ばさずにいられない道があります。まさに一目惚れってやつですね。そんなシーンこそ大当たり、絶対おすすめ!! あなたにもぜひ体感していただけたら最高です。
石垣のふたつの海に挟まれた畑道は、山へとまっすぐ続く
石垣の伊原間に、最強に萌える道があります。なんてよくできたかっこよさ!
まずは動画でご覧ください。
のどかでのんきなまっすぐの道、あったでしょう! ぐるっと見渡した風景には海がこれでもかと入りこんでいました。太平洋と東シナ海、ふたつの海にはさまれた狭い平久保半島なんです。一番細い所だとたったの200mですって。
道の先には「はんな岳」。その周りには彩のためにわざわざ入りこんでくれたような真っ青な伊原間湾と、真っ赤なトラクターがチョン。なんて絶妙なコラボレーションでしょう。
石垣はなんでもある気の利きすぎた島ですからね。山あり、川あり、サンゴ礁あり、マングローブあり。畑もダムも橋もあるし、半島もあるから風景にメリハリがついて眼福きわまりなし! この道は、そんなオールマイティな石垣の、サンゴ礁・山・畑・半島がばっちり生かされ計算されたような構図で風景を見せてくれるスポットなんです。
ここで過ごす朝焼けの時間もすばらしくて。左は東シナ海、右は太平洋で、太平洋側から太陽が昇ってきますよ。この日ははんな岳に雲がかかっていましたが、オレンジに染められた雲と、それが跳ね返ってオレンジに染まる空気。そんな中、わたしは海に挟まれ山に向かうまっすぐな道を歩いている……よくできているでしょう。
またある日は、あんまり気持ちいいから、そして人気も皆無だから道でごろん。普段、道が背負う役割は、車なら走らせ、生身の人なら歩かせること。ごろごろ目的で作られてはいないのにね。普段しないことをしながら大きな空を見上げると、心の奥の方から開放感と爽快感がじわ〜っと生まれてくるのを感じてたまりません。ぜひあなたも、一度ごろんしてみてください。クセになりますよ〜。あ、そのときは迷惑にならないよう周りの状況確認をバッチリお願いいたします。
畑も森も起伏もない。何にもない黒島をまっすぐな道が貫く
まっすぐ! なんにもない! なにこれ気持ちいい!
ここは黒島、石垣島から船で約40分の離島です。この島はご覧の通りのすっからかん。人がいない、建物がないのはわかります、田舎ですもんね。だからって森も畑も、起伏すら放棄することないじゃない。よっ断捨離上手(?)。そんな空間をまっすぐに貫く道、いかにも気持ちよさそうでしょ。
しかも、この道の先にあるのは、超絶キレイなキレイすぎて気絶しそうな青い海だというからできすぎです、奇跡かな!? 視界がここまで爽やか満点に開けてる土地って、他にないんじゃない? この視界は黒島ブランドですね。
それにしても、なんでこんなにすっからかんなのでしょうか。数字で見ると納得感があるかもしれません。まず島の面積は約10㎢、ちっさ。続いて人口は約220人で、牛の数は約3000頭……牛が人の約14倍!? まぁそんなわけで、島中が牧草地で占められているんです。ちなみに最高標高は驚きの15m! なめてません、たぶんなめてません。本気出した結果が15mでした。
ちなみに、20世紀初め頃、人口はずっと多く3000人ほど、森だらけだったと島の方に聞きました。意外すぎます! 森が牧草地になり人口が減った現実をどう捉えるか……それは、もっと島の歴史や政治と、地理の事情を知ってから考えようと思います。ただ、今の黒島に最強の好意を寄せているのは事実なんです。
牧草地にはこんな車の跡があるところも。ぜひあなたにもここを歩いていただきたいです。この気分のよさは頂点の頂点! きっと歩みはスキップへ、なんならくるくる回りだすかもしれません。あまりに現実離れした現実空間に、自分の行動すら素でメルヘンになりかねないので要注意。
ほとんどの時間なーーんにも通らない道です。たまに観光客の自転車、たまに観光客をゲストハウスに送る車、たまに道の上を飛ぶカラス、そのくらいしか存在を認識できない道の白線にカメラを置いて撮りました。気持ちいいでしょう。いい風がレンズに吹き込んできそう。人口密度の限りなくうすっぺらい土地の道、なんでか親近感が湧くんです。自分しかいないから、自分の道だと心が錯覚するのでしょうか? 寝っ転がってスリスリしたくなる感覚をぜひ味わいに行ってください。
オーストラリアの道がやばすぎる! 巨大な水たまりの中を永遠走る
続きまして、スケールと状況のやばい道は、オーストラリアからどうぞ。
やばいでしょ! 地球の上を走り抜けている感がありありと現れるスケール感。そしてパッと見、理解しがたいけどスゴさだけはよーく伝わってくる状況。
ここはオーストラリアの北部、ノーザンテリトリーのカカドゥです。雨季にはそこら中が水浸し、巨大な水たまりだらけになるんですよ。さすが広大な大陸国家、自然のやることが大胆!
森中が水浸しです。そんな中を貫くまっすぐな道は命綱みたい。広大なここでは、人は自分たちがすえた綱の上にしかいられないんですよね。
いやいや大きいからって水たまりでしょ、水の中にも行けるじゃない、なんて軽く見てはいけません。ワニがいますよ、大きな口の大きなワニ! パクッとやられる事故も毎年起きているとか。もちろん、他にも多くの動物が生息しています。堂々としたインパクトのある鳥ジャビルー、かっこよくておいしい魚バラマンディ。
不思議なのは木の立ちっぷりです。毎日潮が満ちて引くマングローブに生息する水陸両用の木と違って、どうやら一般的な風貌の木が、雨季の間は水に浸かって「いい湯だな」的にじっとしているんですよね。いや、緑がイキイキしてもいないので、もしかしたら耐え忍んでいるのかもしれません。
それから水面のキレイさよ。水たまりには流れも波もないのでいたって静か、太陽をよく反射します。
そんな、これまで見たこのない驚きの光景の中を貫く道のおかげさまで、物語に入りこんだかのような気分です。
人の力なんて自然にはどうしたって敵いません。ときにはこうして、道が冠水している箇所もありました。このときレンタルした車は普通車でしたが、ドキドキしながらズササーッ! と入って行きましたよ。通り切ったときには、反対車線でこちらが通るのを待ってくれていた車の人と親指立てて「やったね」を交し合ってほっこり。
雨季といえど、時にはこうして水浸しになっていない所もありました。こんなところではワラビーやディンゴが道を横切ります。人に出会うことのない道を永遠走っていると、そんな動物たちが運命共同体に思えてくるから不思議です。雨が降り出すと、あのワラビー雨宿りできてるかな、ポッケの子供はぬれちゃわないかな、と心配になったものです。
まぁ、その夜ワラビーの料理を食べたんですけどね……。
とっておきの道の数々、いかがでしたか。一目惚れしたいい道はやがて目的地となり、くり返し通って愛でて戯れます。よかったらあなたも、道でしか感じられない独特な心地よさを味わいにお出かけください。