『飛び立つ季節 旅のつばくろ』
ベストセラー『深夜特急』の著者による国内旅のエッセイ集。沢木さんのスタイルは「あまり予定を立てない、調べない」。だから会津若松では「白虎隊記念館」に行き損ねたことに帰宅後気づき、愕然! でも彼はそれもよしとします。なぜなら「いつかまた」と未来の回収を夢みるから。少年時代の東北旅行の足跡をたどる「かつて」=過去を回収する章もあり、旅に終わりはないと感じさせてくれる1冊です。
1,100円/新潮社
『死ぬまでに行きたい!
世界の絶景 新日本編』
「死ぬまでに行きたい!」シリーズの国内編で、アクセス、旅のプランと予算、おすすめの季節がついています。本書の刊行は2017年。コロナ禍で私たちの日常も激変しましたが、ページをめくり、京都瑠璃光院の紅葉、十勝川河口のジュエリーアイスなど息を吞む絶景に見入り「いつかここに」と胸を熱くする思いに変わりはありません。人生の終わりにこんな景色を思い出せたら、と貴女が思う場所はどこですか?
1,426円/三才ブックス
『夕のいろ』
一日のエンディングは真夜中ですが、「その日のラストシーン」として皆が思い浮かべるのは夕方ではないでしょうか。本書は日暮れに特化した写真集で、金色に光る鉄道のレール、オレンジの雲海、紫に染まる雪山、ねぐらに帰る鳥たちまで、さまざまな「終わりの安らぎ」が撮られています。夕陽がこれだけ人の心を掴むのは、明日の朝日をイメージさせるから。穏やかさとエネルギーが味わえる美しい本です。
2,640円/光村推古書院
『ショーシャンクの空に』
世界中の映画ランキングで選ばれ続け、愛され続けてきた永遠の名作です。冤罪で服役した男が、脱獄を目指します。この映画が教えてくれたことははかりしれません。希望を持ち続けること。積み重ねること。信念を貫くこと。辛抱すること。自分のいる世界のルールを理解すること。この全て教えてくれたのは、この映画。もはや人生の教科書ともいえますよね! そんなこちらの映画のラストシーンは、映画史に残る名言で幕を閉じます。「希望は良いものだ。多分最高のものだ。素晴らしいものは決して滅びない」いつだってこの言葉を唱えれば、前を向いて歩けるのです。
『街の灯』
映画を語る上で外せないのが、やっぱり喜劇王チャップリン。数あるチャップリン映画の中でも代表作の一つで、製作期間に3年を費やした作品です。盲目の花売りの娘に恋をした浮浪者が、彼女の視力が回復するように奮闘します。無声映画なのでセリフは最小限ですが、ここまで胸を打たれるなんて。ラストシーンでは、チャップリンがうれしさ、恥ずかしさ、一抹の切なさなどを攪拌したなんともいえない表情をします。それが何を意味していたか……今も考察され続けているんです。また、冒頭で花売り娘とチャップリンが出会う、約3分ほどのシーンは、なんと342回も撮り直されたのだそう。完璧主義者のチャップリンがこだわったそのシーンも、同時に注目してほしい! 見る人にとって、きっと貴重な体験になるはずです。
『マイ・ブロークン・マリコ 』
親友がある日突然亡くなった。遺された友は、遺骨を盗んで旅に出ます。変化球なロードムービーともいえるこの映画の見どころは、鮮烈なロマンシス。主演の永野芽郁さんは、タバコをふかしたやさぐれOLを演じて新境地に到達しているし、奈緒さんの“儚さ”の吸引力も抜群。まさにばっちりのキャスティングで、女同士の友情の面倒くささがありつつも、それ以上に固い絆を結べてしまう関係性の強度もしっかりと描かれています。死が関係している物語ですが重くなく、疾走感にあふれているせいか、爽やかな余韻! ラストシーンをどう受け止めたか、いろんな人の意見を聞きたくなる語りがいのある映画です。