“飲み旅”にぴったりなまち、教えます。日本酒発祥の地 島根県出雲市

“飲み旅”にぴったりなまち、教えます。日本酒発祥の地 島根県出雲市

國酒のひとつ・日本酒は、海外の食シーンでも欠かせない存在となり、2022年度には輸出金額・数量ともに過去最高を記録し、世界的に注目が高まっています。その日本酒の発祥の地が、島根県出雲市ということはご存知ですか? 出雲で140年以上続く酒持田本店の持田祐輔さんにお話を伺いながら、出雲の酒造りについて掘り下げます。

文/近藤由美

“飲み旅”にぴったりなまち、教えます。日本酒発祥の地 島根県出雲市
“飲み旅”にぴったりなまち、教えます。日本酒発祥の地 島根県出雲市
“飲み旅”にぴったりなまち、教えます。日本酒発祥の地 島根県出雲市
島根県出雲市
ACCESS
●羽田空港 ⇒ 飛行機約1時間25分 ⇒ 出雲縁結び空港 ⇒ リムジンバス出雲空港線約30分 ⇒ 出雲市駅
●伊丹空港 ⇒ 飛行機約50分 ⇒ 出雲縁結び空港 ⇒ リムジンバス出雲空港線約30分 ⇒ 出雲市駅

この方にお話を伺いました

酒持田本店 5代目蔵元 持田祐輔さん
酒持田本店
5代目蔵元 持田祐輔さん

佐香神社のお膝元、出雲市平田町で1877(明治10)年に創業した酒持田本店の5代目蔵元。自家精米した島根県産の酒米を使い、歴史ある出雲杜氏の手により昔ながらの製法で酒造りをしています。酒にまつわるオリジナルグッズの制作や道具蔵をリノベーションした宿を運営するなど、新しい取り組みにも意欲的です。

まずは知りたい!

出雲市が日本酒発祥の地といわれるのは、なぜ?

『出雲風土記』に記された日本酒発祥の地・出雲

今から1300年前の奈良時代に編纂された『出雲風土記』に、「佐香の河内で神々が集って御厨を建てて、酒を造って酒宴を開いて」という一節があります。この地にある佐香神社(さかじんじゃ・別名 松尾神社)に神々が集まって酒を造り、180日にわたって酒宴を開いていたという内容で、これが出雲が日本酒発祥の地といわれる理由となっています。

『出雲風土記』に記された日本酒発祥の地・出雲

佐香神社は酒の語源であり日本酒の聖地

神々が酒宴を開いていた佐香神社の「佐香」は「酒」の語源といわれ、酒造りの神・クスノカミが祀られています。現在も年に1石(180リットル)の酒造りが許されていて、にごり酒を造っています。また、毎年10月13日に行われる醸造祈願のどぶろく祭の際には、神前にお供えするとともに、参拝者ににごり酒が振る舞われます。
「午前中は我々のような蔵元や杜氏など酒造りにかかわる者が集まりますが、午後は一般の方も参拝できます。日本酒好きの方は立ち寄られてはいかがですか?」と持田さん。

神事や神話と深く結びついた日本酒

旧暦で10月は神無月ですが、出雲では神在月といいます。八百万の神が出雲に集まり、縁結びの話し合いなど神議り(かみはかり)が行われるためです。神議りが終わると直会(なおらい)と呼ばれる酒宴を出雲市にある万九千(まんくせん)神社で開いたといわれています。今日でも直会という儀式があり、神様へのお供えや酒を分け合っていただくことで、神様の力を分けていただくと信じられています。
「私たちは飲み会のことを『直会』といい、今も日常的に使っています。それに、うちの酒蔵には7つの神棚があって、日本酒をお供えしています。日本酒は実際は麹菌や酵母菌などが造っていて、人はその手助けをしているに過ぎません。菌という人の目に見えない作用に対して、畏怖の念をもったり、まさに神頼みをしていたのだと思います。出雲には今も多くの神事が受け継がれていて、そこに御神酒(日本酒)は欠かせないことからも、この地と日本酒のかかわりの深さを感じていただけると思います」

『出雲風土記』に記された日本酒発祥の地・出雲

出雲と石見、2つの杜氏集団が活躍する出雲

かつて酒造りを担う杜氏や蔵人の多くは、農山漁村で暮らす季節労働者でした。岩手の南部杜氏、新潟の越後杜氏、兵庫の丹波杜氏が有名ですが、小さな1つの県の中に複数の杜氏集団が存在するのは、日本酒発祥の地、島根・出雲の特徴といえるかもしれません。県東部の出雲地方には「出雲杜氏」、県西部の石見(いわみ)地方を中心に活動するのが「石見杜氏」です。特に出雲杜氏が属する出雲杜氏組合は名称変更や合併を経て100年以上、出雲杜氏ならではの技術や酒質を大切に継承しているといわれています。そして現在、県内には約30の酒蔵があり、個性豊かな酒造りを実践しています。

まずは知りたい!

出雲市が日本酒発祥の地といわれるのは、なぜ?

ヤマサン正宗で親しまれる「酒持田本店」

ヤマサン正宗で親しまれる「酒持田本店」
ヤマサン正宗

2023年で創業から146年目を迎えた「酒持田本店」では、地元・島根県産の酒米を使い、昔ながらの酒造りを行っています。
「82歳になる出雲杜氏に来ていただいて、手仕事を大切にした伝統的な酒造りをしています。最近は、機械化やAIの導入など進化も多いですが、昔ながらのやり方のほうが理にかなっていることもあると思うんです」
水の豊かさも出雲で酒造りをする強み。中国山地から流れるミネラル豊富な清流が日本酒造りを下支えしています。水道水のおいしさも際立っているそうで、都会から訪れる旅行者は驚くほどとか。飲み過ぎを防ぐチェイサーには「水道水を」とおすすめしてくれました。

好みを整理する「後酒飲帳」、お風呂用の飲まない日本酒

酒をより深く知るためのアイテムやSDGsを視野に入れた商品開発など、老舗による新たな展開からも目が離せません。
「おいしいお酒を飲んでも、その銘柄を覚えていない方がいらっしゃいます。それはその方にとっても、私たち酒造りに携わる者にとっても残念なことなんです。そこで考えたのが『後酒飲帳(ごしゅいんちょう)』です。どのお酒をどんな温度で、どんな料理と楽しんだかを記録してもらうことで、1冊書き終える頃にはご自身の好みを知ることができます。そして、より豊かな食体験を楽しむことができると思います」
そして「日本酒風呂専用 ヤマサン正宗 美肌県しまね」。コロナ禍をきっかけに酒米造りを廃業した農家が多くいたそう。そこで安心して継続的に酒米造りができるように、県の産業技術センターの協力を得て開発したのが風呂専用日本酒です。農家を守るとともに美肌効果も期待できる逸品で、日本酒の新たな価値づくりに取り組んでいます。

好みを整理する「後酒飲帳」
好みを整理する「後酒飲帳」
お風呂用の飲まない日本酒
日本酒風呂専用 ヤマサン正宗 美肌県しまね

今と昔に触れられる「酒持田本店」のある木綿街道

今と昔に触れられる「酒持田本店」のある木綿街道
今と昔に触れられる「酒持田本店」のある木綿街道

「酒持田本店」の向かい側には、道具蔵をリノベーションした宿「RITA出雲平田 酒持田蔵」が2022年秋にオープン。先ほど紹介した「日本酒風呂専用 ヤマサン正宗 美肌県しまね」を入れたお風呂が楽しめるのはもちろん、近隣にあるイタリア料理店では日本酒とのペアリングメニューをいただくことができます。さらに俯瞰すると、「酒持田本店」のある木綿街道には歴史ある邸宅や縁結びスポット、300年以上続く菓子屋、醤油店などなど新旧の見どころがたくさん。日本酒発祥の地・出雲で日本酒を存分に楽しむ“出雲飲み旅”を、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

DATA

酒持田本店 住所/出雲市平町785
電話番号/0853-62-2023 営業時間/8:30〜18:00、
土・日・祝日9:30〜18:00

RITA出雲平田 酒持田蔵 住所/出雲市平田町810
電話番号/0853-31-9793
チェックイン/14:00〜17:00
チェックアウト/10:00

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