【関東】日帰り散歩におすすめ! レトロな名建築8選

【関東】日帰り散歩におすすめ! レトロな名建築8選

美術館・博物館

2023/03/15更新

関東近郊には、明治~昭和期に西洋の復古様式を取り入れて建てられた銀行、役所、邸宅などが点在しています。レトロ建築と呼ばれるそれらの建物は、西洋の歴史を感じさせる凝った装飾が施されており、見応えもたっぷり。建設当時の面影を残すスポットを訪れながら、その土地の街並みを散策すれば新しい発見があるかもしれません。今回は、散歩にもぴったりな関東エリアの名建築を8つご紹介します。

そもそもレトロ建築とは?

レトロ建築とは、一般的に西洋の建築様式から影響を受けて造られた明治~昭和期に建てられた建築物を指します。東京駅舎に見られるようなレンガ造と石造で、懐古的なネオ・ルネッサンスやネオ・バロックといった、西洋の復古様式を用いていることが特徴として挙げられます。
誕生の背景には、明治時代の日本の建築家が、政府の主導により西洋の復古様式を模倣することを使命に課せられていたことがあります。彼らは、銀行や駅舎、博物館、邸宅といった建築物を次々と生み出していきました。
次第に、日本独自の建築を模索する建築家が登場するにつれ、合理性を求めてガラスやコンクリートを素材に用いるようになります。1964年の東京オリンピックのサブ会場として建設された国立代々木競技場に見られるようなモダニズム建築時代の到来です。レトロ建築は時代の流れと共にその数が減る一方で、存在価値はより高まっていくでしょう。

【神奈川県】神奈川県立歴史博物館

大きなドームが目印

横浜市にある「神奈川県立歴史博物館」は、1904(明治37)年に「横浜正金銀行本店」として建設されました。現在は、国の重要文化財・史跡に指定されています。「横浜赤レンガ倉庫」の設計者で、“明治における三大巨頭”の一人に数えられる建築家・妻木頼黄(つまきよりなか)氏により設計されました。外観はネオ・バロック様式を取り入れた威厳ある構えで、動的でドラマティックな表現が特徴です。
「かながわの文化と歴史」をテーマに、時代別に豊富な資料を常設展示。シンボルであるドームは、竣工当時の物が関東大震災で焼失してしまいましたが、1967(昭和42)年の博物館開館に合わせて、旧状にできるだけ近い形で復元されました。ドームには、丸窓やドルフィンなど、時間を忘れて見入ってしまうほどの装飾があしらわれています。

【神奈川県】横浜開港資料館旧館(旧英国総領事館)

壮麗で優雅な旧館

「横浜開港資料館旧館」は、1931(昭和6)年に英国総領事館として英国工部省が設計した建築物。現在は、横浜の開港期から戦前までの歴史資料を収集・公開する施設になっています。
建物は、当時流行し始めていたモダニズム建築を取り入れながらも、イギリスで18世紀~19世紀初めにかけて主流になったジョージア王朝期の邸宅様式の装飾も用いています。シンメトリー(左右対称)な外観と、三角屋根状の装飾やオーダーと呼ばれる円柱などを特徴としています。
重厚で立派なドアから玄関を進むと、その先にあるのは旧待合室。現在は、記念ホールになっており、ペリー艦隊の日本遠征の航路図開港期の横浜の資料などを見ることができます。また、窓が大きく明るいホールは、休憩室としても利用が可能。置かれている資料を片手に横浜の歴史を学びながらゆっくり過ごしてみては。

【神奈川県】横須賀美術館

東京湾が一望でき、潮風を感じられる美術館

横須賀市の市制100周年を記念して、緑豊かな観音崎に2007年にオープンした美術館です。山本理顕設計工場の設計による建物は、県立観音崎公園の豊かな緑が三方を囲み、目の前には東京湾が広がる恵まれた環境。館内も常に周囲の自然が感じられるよう、天井や壁面に大小の丸穴が開けられ、開放的な空間ができています。アプローチは海側・山側どちらからも可能で通り抜けもできるので、周辺散策と展覧会観覧を一度に楽しめそう。
風光明媚な観音崎の地に立つ美術館は、絶景美術館としても知られ、過去に日本の絶景美術館ランキングで上位に選ばれました。東京湾を一望できる緑に囲まれた屋外の素晴らしい眺望は、三浦半島でも指折りの景観で、思わずうっとりしてしまうかも。
また横須賀美術館は、NPO法人地域活性化支援センター・恋人の聖地選定委員会により「恋人の聖地」に選定されています。

【千葉県】千葉市美術館

さや堂ホール

江戸時代の作品から現代アートまで

川崎財閥系の建物を多く手がけた大正期の建築家・矢部又吉氏により1927(昭和2)年に設計された「旧川崎銀行千葉支店」をベースに、新しい建物で包み込むように設計する「鞘堂(さやどう)」という日本古来の方式を用いて1995(平成7)年に開館。千葉市では数少ないこの歴史的建造物を保存するために、国立京都国際会館金沢工業大学などを手掛けた建築家・大谷幸夫氏によって設計されました。
戦前の銀行建築で多く見られた8本の円柱が並ぶネオ・ルネサンス様式の下層部は、そのまま復元され、内部はホールになっています。近世から近代の日本絵画と版画千葉ゆかりの作品を約9,500点展示。大谷氏による、歴史・文化を保存し次世代へ繋げることを成し遂げた建築は、圧巻の佇まいです。

【埼玉県】川越商工会議所

まるでパルテノン神殿!?

1928(昭和3)年、京都市美術館の設計を手掛けた建築家・前田健二郎氏により「武州銀行川越支店」として設計。1970(昭和45)年に川越商工会議所が事務所として譲り受けています。デザインは、当時の金融関係が好んで建てていたルネッサンス・リバイバル様式を用いており、ギリシャ神殿風のドリス式柱バロック風の玄関上の飾りが施されているのが特徴。荘厳な雰囲気で圧倒的な存在感を放つ建築は必見です。

【埼玉県】埼玉県立近代美術館

海外の巨匠から日本の現代作家まで

埼玉県立近代美術館(MOMAS)は、埼玉県さいたま市にある緑豊かな北浦和公園に1982年に開館した、建築家・黒川紀章の設計による最初の美術館です。建物全体がグリッド(格子)で構成され、正面にはめ込まれた波状の曲面ガラスからは明るい光が差し込みます。
モネ、シャガール、ピカソなど海外の巨匠から日本の現代作家埼玉ゆかりの作家まで優れた美術作品を幅広くコレクションして展示するとともに、ユニークで密度の高い企画展を開催。いつも何度きても見どころが満載です。
また、教育普及事業にも力を入れており、美術館の作品などをベースに子どもを中心に大人までさまざまな年代が楽しめるプログラムを実施しています。
埼玉県立近代美術館は「椅子の美術館」としても知られており、開館当初から近代以降の優れたデザインの椅子を収集し、館内に常時数十種類を展示しています。これらの椅子はただ鑑賞するだけでなく、自由に座ってそのデザインに触れることも可能。目だけではなく、身体全体で体感してみてはいかがでしょうか。

【栃木県】旧青木家那須別邸(「道の駅 明治の森黒磯」敷地内)

「道の駅 明治の森黒磯」の一施設

「旧青木家那須別邸」は、明治時代に、ドイツ公使や外務大臣などを務めた青木周蔵氏が那須別邸として建てた建造物。1999(平成11)年に国の重要文化財に指定されました。現在は、「道の駅 明治の森黒磯」の一施設として一般開放されており、館内には農場開拓や周蔵氏に関する資料を展示しています。
設計者は、ドイツで建築学を学び、「七十七銀行本店」「台湾鉄道ホテル」などの設計をした松ヶ崎萬長(つむなが)氏です。この青木邸は、国内に残る松ヶ崎氏の唯一の作品。骨組みや小屋組はドイツ様式の構成を採用し、外壁に鱗形のスレート(粘板岩を薄い板状に加工した建築材)を用いるなど近代建築の特徴を体現した建造物です。

【茨城県】水戸芸術館

音楽も楽しめる美術館

水戸芸術館は水戸市制100周年を記念し、中心市街地の中の市立五軒小学校(1985年移転)の跡地に平成2年(1990年)に開館した複合文化施設です。特徴的な塔を持つこの建物の設計は、国際的に活躍した建築家の磯崎新氏が手がけました。内部には、コンサートホールATM、ACM劇場、現代美術ギャラリーの三つの独立した施設があり、音楽、演劇、美術の3部門がそれぞれに、自主企画による多彩で魅力あふれる事業を展開しています。
なかでもひときわ目をひく水戸芸術館のシンボルとして建てられた塔は、水戸市制100周年を記念して地上100mの高さになっています。1辺9.6mの正三角形で構成された正四面体を規則的に積み重ねた形態は、チタン製の外装と作用しあい、未来的なイメージを喚起させます。また、その稜線をたどっていくと、三重らせんが空に向かって上昇していくデザインは、無限に発展する水戸を象徴しています。内部は4階建ての構造になっており、地上86mにある最上部の展望室へはガラス張りのエレベーターで内部構造を見ながらのぼることができます。

ところで航空法では高さ60mを超える建築物は赤白に塗り分ける必要性があるのをご存じでしょうか。ですがこちらの塔はよく目立つということで、芸術館スタッフが証拠となる写真を撮影して航空局を説得。芸術性を損ねることなくオリジナルの姿のまま水戸市を見守っています。タワーに固有の名称はなく、単に塔と呼ばれているのもユニークですよね。

まとめ

当時の建築家がどんな思いで設計して、どのように造られていったのか、また、どんな暮らしの人々が訪れていたのかなど想像が膨らみますね。いろいろなことを考えながら散策するのは、建築巡りの醍醐味です。訪れる季節によってもまた違った表情を見せてくれます。お気に入りの建築ができたら、ぜひ何度でも足を運んで新しい発見を探してみましょう!

旅色編集部 たじま

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記事企画・監修:旅色編集部 たじま