「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ

「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ
「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ
味もさることながら、
おもてなしやサービスが心地よいまちの食堂。
“いつもどおり”を求めて日々通ったり
旅先で地元の味を求めて入ったり
いろんな楽しみ方ができるのも魅力。
そんな、懐深き食堂の深淵に触れるべく、
5名のグルメ通に、自身のとっておきを聞きました。

編集・文/山葉のぶゆき、上野郁美(エフェクト)
一億店舗撮影/佐藤潮.(エフェクト)

※新型コロナウイルスの影響により、施設の営業日・営業時間が変更になっている場合があります。最新の公式情報をご確認ください。
とっておきの食堂 No.1
俳優/映画監督 竹中直人さん
俳優/映画監督
竹中直人さん
数々の オリジナルメニューで
ファンを魅了する、
知る人ぞ知るお店
一億 [東京都六本木]
旅色が行ってきました!

竹中直人さんがとっておきの食堂として教えてくださったのが、こちら「一億」。ホテルの料理人だったご主人が1968年にオープンし、半世紀も愛されてきたお店です。竹中さんおすすめの料理は、名物である「元祖豆腐ステーキ」660円。小麦粉をつけて揚げ焼きにした絹豆腐にごま油をまわしかけ、質のいい花がつおをたっぷりとかけた一品です。かつおぶしと羅臼昆布を1時間ことこと煮てとった出汁がベースのソースと、絹豆腐のなめらかな口触りがたまりません。

「元祖豆腐ステーキ」は当初夜だけの提供だったのが、お客さんの要望にこたえドリンクメニューを注文すればランチでも食べられるように
「元祖豆腐ステーキ」は当初夜だけの提供だったのが、お客さんの要望にこたえドリンクメニューを注文すればランチでも食べられるように

また「マグロ生姜焼き丼定食」1100円は、ランチ定食で人気No.1。薄切りにした新鮮なマグロに軽く火を通し、しょうがとにんにくが入り、山椒がきいたソースでいただきます。香り高いスパイシーなあとひく旨さは、訪れる外国の方をも魅了する、懐かしくも新しい味。一度食べたら忘れられないと根強いファンも多いとか。

ほかのお店では味わえないオリジナルの味に、外国人の方もハマるという「マグロ生姜焼き丼定食」。新潟県産・有機栽培のコシヒカリのご飯がすすむ
ほかのお店では味わえないオリジナルの味に、外国人の方もハマるという「マグロ生姜焼き丼定食」。新潟県産・有機栽培のコシヒカリのご飯がすすむ
独創的なたたずまいが印象的な「一億」。芸能人、文化人も多く訪れ、このお店から生まれる交流も多いそう
独創的なたたずまいが印象的な「一億」。芸能人、文化人も多く訪れ、このお店から生まれる交流も多いそう

店主の娘・愛さんにお話を聞くと、竹中さんは40年ほど前からこちらに通われていることを教えてくださいました。仲間と訪れることも多いそうですが、このお店の常連さんともほとんど顔なじみで、店内に常連さんしかいないときは「愛ちゃん、いい?」と竹中さん持参のスピーカーを取り出しDJタイムが始まることもあるんだとか。とても居心地がよく、どの料理もおいしいので、竹中さんが足しげく通うのも納得のお店でした。

店主の娘さんでお店を切り盛りする愛さん。彼女が働き始める前から竹中さんが通われていることを教えてくださいました
店主の娘さんでお店を切り盛りする愛さん。彼女が働き始める前から竹中さんが通われていることを教えてくださいました
一億

●一億 住所/東京都港区六本木4-4-5メゾン六本木1F
電話/03-3405-9891
営業時間/11:30~14:00(ラストオーダー13:30)、17:00~23:00(ラストオーダー22:30)
定休日/日曜、祝日、年末年始、他

竹中直人さん プロフィール

1956年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。1983年、テレビ朝日系バラエティ「ザ・テレビ演芸」でデビュー。1996年にNHK大河ドラマ「秀吉」で主演を務め、高視聴率を記録する。コメディアン、俳優として活動する一方で映画監督もこなすなど、マルチな才能が高く評価されており、3度の日本アカデミー賞最優秀助演男優賞など、多数の受賞歴を持つ。俳優としての代表作に周防正行監督『シコふんじゃった。』(92)、『Shall we ダンス?』(96)、監督作品に『無能の人』(91)、『東京日和』(97)などがある。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科で客員教授を務める。2021年に自身8作目となる監督作品『ゾッキ』が公開。

とっておきの食堂 No.2
「食楽」編集長 大西健俊さん
「食楽」編集長
大西健俊さん
長蛇の列ができる
ランチの本命候補店

昨年、弊社が四谷に移転した際、四谷の人気寿司店の店主がおすすめしてくれたのが「かつれつたけだ」さん。会社から歩いて3分という、ご近所なのでランチの大本命として使いたいのですが、とにかくランチはいつも長蛇の列。時間に余裕があるときだけしか伺えないのが玉にキズです。このお店は、揚げ具合がとにかく素晴らしい。もちろん、素材も厳選されていると思いますが、素材の長所を引き出すのは、店主・竹田さんだからこそ為せる技だと思います。揚げ物は多数ありますが、やっぱり最初に味わうべきはとんかつ。塩で味わうと豚の旨味、ジューシーな肉質、揚げ方のテクニックが感じられるのでおすすめです。エビフライなど、単品で追加もできるので、ぜひエビも食べてほしいですね。冬季限定の牡蠣バターもこれ目当てに行列する人が多い逸品です。

かつれつ 四谷たけだ [東京都四谷]
かつれつ四谷たけだ

●かつれつ四谷たけだ 住所/東京都新宿区四谷1-4-2 峯村ビル1F
電話/03-3357-6004
営業時間/11:00〜15:00、17:00~21:00 土曜日11:00〜15:00
定休日/日曜日・祝日

大西健俊さん プロフィール

1977年神奈川県出身。月刊誌「東京カレンダー」の編集を経て、フリーランスのエディターになる。現在は株式会社 Fly の代表取締役を務めるほか、食・旅・酒をテーマに活動し、徳間書店の季刊誌「食楽」編集長および、グルメECサイト「オンワード・マルシェ」のクリエイティブディレクター、地域創生メディア「ONESTORY」副編集長などを兼任。

とっておきの食堂 No.3
編集者 小林淳一さん
編集者
小林淳一さん
炭火の
使い方が巧みな
炉端焼きの店
炉端ふねさん [東京都神田]

移転前の自分の事務所の近所にあった「炉端ふねさん」。魚の焼き方と飯の炊き方が上手で、うまいなぁと思いながらほぼ毎日(マジで)ランチに通っていました。こちらの魅力はなんと言っても、昼夜問わず丁寧に焼かれた干物や焼き魚の定食にありつける点。炭火使いが巧みなのか、焼き方(熱の入れ方)がとても上手で、干物も焼き魚も水分をしっかりと保ちつつ、クリスピーに焼いてくれる。おすすめはあじひらきの定食。あじの干物って焼くのが難しいんです。ちょっと焼きすぎるとバサバサになって「お茶でもぶっかけないと食べられない」感じに仕上がってしまうし、あまり火を入れないと生っぽくて気持ち悪い。ここの店主は、あじの干物を上手に焼いてくれるのです。メニューも多彩で、しおさば、さばみりん、とろにしん、しまほっけ、さらにめんたいこやハンバーグも。それらの主菜にご飯とみそ汁を組み合わせて自由に定食を組み立てられるのも、なんだか嬉しい。

定食を「自由に組み立てられる」という環境こそが、古き良き定食屋の良さだと思うんですよね。飯と汁と香の物。この3点は変わらないけれど、主菜はその時の体調や気分に合わせて大皿から煮物を選んでもいいし焼き魚を合わせてもいい。野菜不足ならおひたしを追加したり、胃腸を整えたいときは納豆を加えてもいい…というように副菜を追加してさらに食事の機能をアップすることもできる。定食屋って、そのようにして「自分の身体を整える」という機能を売る業態なんだと思います。

炉端ふねさん

●炉端ふねさん 住所/東京都千代田区神田小川町3-28-13 ラフィネ御茶ノ水103
電話/03-6811-7009
営業時間/13:00~21:00
定休日/日曜日・祝日

小林淳一さん プロフィール

株式会社コバヤシライス代表取締役。『メトロミニッツ』(スターツ出版)、『旬が まるごと』(ポプラ社)、『YUCARI』(マガジンハウス)など各誌の創刊編集長を歴任。食にまつわる情報を扱う編集者として農林水産省の「和食ガイド制作事業」「和食給食応援団事業」、滋賀県アンテナショップ「ここ滋賀」の飲食部門のプロデュースやコミュニケーション・デザイン業務などを担当する。中国東北地方の料理と自然派ワインで名を馳せる「味坊」の梁宝璋とともに、「味坊鉄鍋荘」「羊香味坊」「老酒舗」「香辣里」など、メディアとして機能する飲食店の出店企画およびブランディングも多数。さらに「47都道府県を応援する48番目の県」として活動する「一般社団法人 来来県」を設立し、地域の交流人口・関係人口を増やすためにイベント・ツアーなどを手がける。

とっておきの食堂 No.4
定住旅行家/モデル ERIKOさん @Christian Bang
定住旅行家/モデル
ERIKOさん
五島列島で暮らす
ご家族と行った
思い出のお店
このみ [長崎県中通島]

私は世界各地で現地の家庭に長期滞在をして、その地域の文化や習慣を発信しています。国内でも定住旅行することがあり、これまで利尻島や答志島などでも暮らしを体験してきました。今回紹介する定食屋は長崎の五島列島・中通島でカトリックの一家に約半月間滞在させてもらった時に行ったお店です。毎日のごはんはご家族と一緒に食卓を囲むのですが、ここは特別おいしいから、ということで家族に連れて行ってもらいました。店はやきめしやチキンライスなどもあるいわゆる定食屋。私は名物のちゃんぽんを注文しました。長崎ではじめて食べたちゃんぽん、肉や野菜の出汁が濃くてとてもおいしかったです。ご家族で営まれているようで雰囲気も家庭的。他のお客様もみんな家族のようにくつろいでいる、隠れた名店ですよ。

このみ

●このみ 住所/長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1110-35
電話/0959-52-2428
営業時間/11:00~14:00
定休日/土曜日(1月~3月の間は土・日曜日)

ERIKO(エリコ)さん プロフィール

定住旅行家。鳥取県米子市生まれ。国内外のさまざまな地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方、食文化などを伝えている。約50カ国にて106家族との暮らしを体験。訪れる国では積極的に民間外交なども行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。NHK『宝メシグランプリ』審査員も行う。著書に『暮らす旅びと』(かまくら春秋社)、『せかいのトイレ』(JMAM)『世界の家、世界の暮らし①~③』(汐文社)。新書「ジョージア旅暮らし20景」(東海教育研究所)が絶賛発売中! 詳しくはWEBサイト「ちきゅうの暮らしかた」をご覧ください。

とっておきの食堂 No.5
エディトリアル・ディレクター 山葉のぶゆきさんさん
エディトリアル・ディレクター
山葉のぶゆきさん
おじさんが溺愛する
灼熱の島の定食屋

毎年恒例「おじさんだらけの竹富島旅行」で、石垣港からフェリーに乗る直前に必ず立ち寄るのがこの定食屋。15年ほど前にタクシー運転手に教えてもらって初来店し、沖縄離島の中でも特別ユルすぎる雰囲気にノックアウトされました。八重山そばやチャンプル系は勿論、しょうが焼き、とんかつ、野菜炒めなども人気で沖縄の家庭料理屋という雰囲気。お客さんはほぼ地元の人だけど、気持ち悪いくらいテンションが高い旅のおじさんグループにも、少し照れながら優しく接客してくれるのが嬉しいんです。おすすめはポーク玉子定食(600円)。ごはんにミニ八重山そばまでついてくるので、オリオンビールで乾杯していたら完全に仕上がります。全体的にリーズナブルな料金設定の中、600円の味噌汁(ライス付き)という驚きのメニューも密かにおすすめ。

なかよし食堂 [沖縄県石垣島]
なかよし食堂

●なかよし食堂 住所/沖縄県石垣市新栄町26-21
電話/0980-82-3887
営業時間/11:30~18:00
定休日/水曜日

山葉のぶゆきさん プロフィール

編集プロダクション・エフェクト代表、エディトリアル・ディレクター、コピーライター。「おいしい、べんり、おもしろい」に関わる情報を年間100媒体以上で発信。携わった飲食関連は「料理王国」「東京カレンダー」「メトロミニッツ」「旅色」「Foodist」「BCN+R」その他で、扱うネタはカップ麺から高級店まで。商品名や料理名を考えるコピーワークが増えてありがたいですけど、最近分かったのがシンプルが一番ってこと。おでんはおでん。