浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。そんな宿泊体験を切り取る写真連載。第14回は、1日1組限定の民宿へ。まるで、親戚の家で過ごす夏休みのように心がゆるみます。
写真家 浅田政志の宿旅
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Vol.14「農家民宿Iimura」茨城県桜川市

「夏休み」始めました
「家庭菜園のようなものだけど」とオーナーの飯村さんは
謙遜するものの、旬の野菜が豊かに実る畑。
ここでは、収穫など農作業が体験できます。
その日に食べる食材を自分で畑から採る、シンプルですが、贅沢な時間です。
合言葉は「ただいま」
築80年の民家をリフォームした「農家民宿Iimura」。
住宅街にあるため、はしゃぎすぎず、とはいえ期待に胸を膨らませ、
親戚の家にお邪魔するような気持ちで訪ねるのが正解です。
1日1組限定。つまりあなただけの空間。あなただけの電話。
民宿といえど、徹底したプロ意識があり、適度な距離感に心地よさを感じるはず。
建物には、食事とその準備のとき以外宿泊客だけなので、この家はまるごとあなただけの空間です。
旅の目的は「日向ぼっこ」
裏手の庭に面したデッキは、ごろんとできるほど広々。「日向ぼっこすることが旅の目的」。
そう思えるほど、のんびりしながらクリスマスローズをはじめとして可憐な花を愛でる、
ネコのようにくつろいだ優雅な午後が過ごせます。
シズル感って、これか。
おいしく食べてもらうコツは「できたて」と控えめながら、飯村さんは、徹底的に素材の味を引き出すことにこだわります。
その味は、家庭的というより洗練された本格的なもの。この照り、このツヤ、「おいしさ」って写真に映るんですね。
光のアート
日本ならではの建物様式「欄間(らんま)」の組格子は
光が柔らかく入る、美しいアート。
歴史ある建具やインテリアに注目するのも一興です。
I can Fly!
宿泊の翌朝は、周囲を散歩するのがおすすめ。筑波連山から続く平野を渡る風は爽やかで飛べそうなほど気持ちがいいです。

農家民宿Iimura

オーナーの飯村さんが一念発起して、一から作り上げた民宿。きれいに手入れされた古民家に泊まれるのは1日1組限定。歴史あるインテリアに心和み、夜になれば手を加えすぎない料理に舌鼓を打つ。特別なことはなくても、豊かな時間がここにはあります。予約は2名~5名まで。ご夫婦からグループまで利用者がさまざまなのは、ここではなにをするのも自由だから。ただゆっくりするためだけに訪れるのがおすすめです。

住所 / 茨城県桜川市加茂部289-1
電話 / 0296-76-0924
URL/https://farm-inn.wixsite.com/iimura
料金 / 1泊2食付 1人11,500円(税込) ※料理の内容は季節によって異なります

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。『浅田家』をもとにした映画『浅田家!』が2020年10月2日(金)公開予定。著書に、『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。国内外で個展、グループ展を精力的に開催している。