- 日帰り
中井・落合で芸術めぐり 林芙美子の愛した土地へ
中井、下落合(東京都)
予算:3,000円〜
・旅行する時期やタイミングにより変動いたします。あくまでも目安ですので、旅行前にご自身でご確認ください。
・料金は1名あたりの参考価格で、宿泊施設は1泊2食付き週末料金を参考にしています。
更新日:2022/05/17
中井・下落合は、昭和初期に多くの芸術家たちが行き来したエリア。文壇の女王・林芙美子や、伝説の天才洋画家・佐伯祐三の記念館を回り、創業100年を超える染色工房で江戸染色の文化にも触れましょう。また、「バカボン」の作者・赤塚不二夫も唸った寿司店で舌鼓を打ち、とっておきの休日を。

「坂の街」中井

林芙美子記念館

一般社団法人 染の里おちあい

白雪鮨

佐伯祐三アトリエ記念館

中村彝(つね)アトリエ記念館
全4㎞ほどのコース、ゆるゆるブラブラ自由に愉しんで歩いていきましょう。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ Q1:中井に着いたら、まず坂道を体験しましょう。ブラタモリ風に、ここで問題です。この地域に坂が多いのはなぜか、わかりますか?
- ★ Q2:同様に、昭和初期、政治家の堤康次郎(つつみやすじろう)は当地を「目白文化村」の名称で開発しました。豊島区目白やJR目白駅から遠く離れた新宿区中井が、なぜ「目白」だったのでしょうか?
- ★ A1&2:それは、神田川と妙正寺川(みょうしょうじがわ)の浸食によって坂ができたから。そして、この地域に「目白崖線(がいせん:崖が連なっている地形のこと)」と呼ばれる武蔵野台地のへりが東西に走っているため、「目白文化村」という名称で当時開発が行われました。目白崖線は、中井から落合、目白、高田、目白台、関口へと続いていきます。へりの上、いわゆる高台は、やがて高級住宅街になっていきました
- ★ 崖線の特徴として湧水が豊富であることを、ここでは覚えておきましょう。パートナーと確認するようにしても、いいですね
林芙美子記念館

林芙美子記念館

アトリエ・展示室

客間

寝室
芸術家との交流に忙しく、野心溢れる姿を日記形式で描き出した「放浪記」。森光子や仲間由紀恵がでんぐり返しをし、人気を博した演劇も記憶に新しい。その原作者であり、昭和のバイタリティを代表する女流作家・林芙美子が最終的に落ち着いた住居。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 林芙美子の作品といえば、「花の命は短くて」の一句を思い浮かべる人もいらっしゃるかと思います。「苦しきことのみ多かりき」と結ばれるので、少し寂しさを感じさせるところもあり、親族でさえ「あまり好きではない」と漏らす方がおられたそう
- ★ ところが近年になって、その歌に続きのあることが発見され、大きなニュースとなりました。発見された歌は「多かりき」で終わるのではなく、「多かれど」と接続されて、別の終わり方をしていたからです
- ★ そう、その終わり方は、果たしてハッピーなものか、それともやはり一抹の寂しさをたたえているのか。同記念館を来訪して確かめてみてください
- ★ ちなみに、前の歌を「あまり好きではない」ともらしたご親族の方は、新しい発見にいたく感動し、鹿児島のホテルに新しい句を彫った記念碑を建てています。こちらも、いつか文学旅行したいですね

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 落合の地名は、神田川と妙正寺川が「おちあう場所」を由来としています。良質の水が大量にあったことで、明治・大正時代から江戸染色の一大産地が形成され始め、最盛期には300を超える染色業者が軒を連ねていたそうです。現在では河川を使わず、地下水などを利用して染物を行っていますが、これも目白崖線が豊富な湧水を生みだすことから可能だったわけです。すごいぞ、目白崖線!
- ★ 毎年2月下旬には、染色作家と商店街店舗とが協力し、周辺地区を染め物でいっぱいにするイベント「染の小道」が行われます。中井・落合が「染めの街」であることをアピールし、日本の風土と歴史に根ざした“和の文化”を世界へ発信してゆく拠点がこの施設なのです

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 「天才バカボン」で赤塚不二夫に「おまえのツラはまずい! 中落合の白雪鮨のすしはうまい!」と言わしめたお寿司です。2020年に新装開店しているので、かつての趣は消えていますが、新しく生まれ変わった雰囲気も清潔で格別
- ★ ただし! お店の方から、これは書いておいてくださいと伝言があります。それは「現在、従業員不足のため、人数制限やお待たせしてしまうことがありますので、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」とのこと。来店の際は、お店の事情を考慮し迷惑をかけぬよう、小生からもお願いいたします

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 日本の近代洋画界を代表する一人として、作品がオークションに出品されると超高額で取引される佐伯祐三。美術商の娘・池田栄子と結婚した一年後、大正10(1921)年に落合の地で、アトリエ付き住宅を新築しました。直後に再び渡仏したため、日本での創作活動拠点はここが唯一の場所となりました。当時のままの敷地に、大正期のアトリエ建築を今に伝える建物が保存整備され、記念館として公開されています
- ★ 今も人気の高い佐伯祐三は、このアトリエで連作「下落合風景」に取り組みました。享年30。伝説の天才画家の息吹が感じられます

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 中村彝は、新宿中村屋を創業した相馬愛蔵(そうまあいぞう)・黒光(こっか)夫妻から庇護を受けていた洋画家です。中村屋裏にあったアトリエに入居して活動を続けますが、絵のモデルとなった相馬家の長女・俊子との恋愛を反対され、パトロンとの確執を生んでいきました
- ★ 傷心の中村彝は中村屋と別れ、日暮里・谷中での下宿生活を経て、支援者であった銀行家・今村繁三(しげぞう)、政治家・州崎(すのさき)義郎らの援助により、新築した落合のアトリエに転居しました。この記念館は、後年増改築された建物を建築当初の姿に復元したものです。当時の部材が数多く活かされているのが最大の特徴でしょう
- ★ それにしても、失恋に限らず心に受けた傷を、プラスの力へ振り向けることの大切さを感じさせる場所です
パティスリー エーグルドゥース
パティスリー エーグルドゥース
フレジエ(650円)

フォレノワール・ア・ラ・ピスターシュ(600円)

ミロワールカシス(580円)
スイーツ好きなら知らぬ者のいない、今や日本を代表するパティスリー。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 「おいしさは、どこまで細かくものづくりするかで決まる」。自著「味の美学」で寺井則彦オーナーシェフが語った言葉通り、繊細にして極上の洋菓子を味わえるお店です。実力派としての名声は、2003年のクープ・ド・モンド(ケーキのワールドカップ)における準優勝を機に現在まで、いや増すばかり
- ★ 現在はコロナ禍の影響で、店内イートイン(喫茶営業)はお休みです。なので、散歩旅の締めくくりに、ぜひスイーツをお土産にしましょう。帰宅してから、今日一日の芸術散歩を振り返る楽しみが生まれます。エーグルドゥースのケーキは、まさに芸術ですから
NPO法人文学旅行