【川瀬良子の農業旅】都心の農家「山内ぶどう園」 で旬の味覚を収穫!
こんにちは、川瀬良子です。今回は東京都調布市で江戸中期から400年続く農家の20代目、山内美香さんの「山内ぶどう園」を訪れました。野菜や果物がどんな風に実をつけているのか、みなさんすぐに想像できますか? イチジク、キウイ、オクラなど、ぶどう以外にもさまざまな作物を育てる山内さんに、農園に足を運び、見て、収穫するおもしろさを伺いました。
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広さ約50アールの農園で、ぶどうをはじめとした果樹と野菜を年間80種類以上育て、都内唯一の“収穫体験専門の農園”として幅広い年齢層に親しまれている「山内ぶどう園」。山内さんと知り合ったのは、私がパーソナリティを務める日本の農業を応援するラジオ番組「あぐりずむ」で、山内ぶどう園について電話インタビューをしたことがきっかけです。「東京で!? ぶどうが採れるの!? 」と、ずっと気になっていたので、満を持してぶどうの季節に行ってきました!
住宅街のまん中で、キラッキラのぶどうと出会えます
山内ぶどう園は、新宿から京王線で約15分、仙川駅から歩いて約10分の場所にあります。駅前には大きなショッピング施設があり、カフェや雑貨、おしゃれなお店がたくさん。ここから歩いて10分の場所にぶどう園があるなんて、想像もできないにぎわいです。歩いて5分程で住宅街になり、どんどん進んでいくと突如山内ぶどう園の大きな看板が現れました。
敷地に入ってすぐのご自宅から「こんにちは~!」と明るい笑顔で出迎えてくださった山内さん。門から一歩入っただけで視界に緑がたくさん入ってきて、都心の住宅街にいることを忘れてしまいます。早速案内していただき、数歩進むと大きな滑り台が! 「収穫体験に来てくれたご家族の小さいお子さんたちが、収穫体験の前後にここで遊んでるんですよ」。お客さんに楽しんでもらいたいという思いが農園に入ってすぐに伝わってきました。
その滑り台の向こうに、広~いぶどう園が! 格子状に張られたフェンスに枝が広がり、ぶどうがたわわに実っています。とはいえ、ぶどうの姿が見えているわけではなく、全てのぶどうに白い袋がかかっている状態。この袋は病気や害虫、鳥や雨、風からぶどうを守るために山内さんとボランティアさんたちが一つひとつにかけたものなのだそう。「ちょうど明日、毎年8月に数回行っているぶどう収穫体験イベントがあるんです。200人以上訪れるので、さっきまで袋を外す作業をしていました」とのことで、私もお手伝いさせていただきました。猛暑や長雨、台風などの影響で思いがけない病気が発生したり、うまく色付かない房ができてしまったり、落ち込むことも多いというぶどう栽培。状態は袋を外すまでわからないので、山内さんも毎回ドキドキするそう。
枝と繋がっている上の方から袋を破って慎重に外すと、張りのある粒が勢ぞろいしたぶどうが姿を現しました。その瞬間は、キラ~ン♪ と効果音を付けたくなる神々しさ! 翌日に収穫体験イベントを控えて、ぶどうが農園に生っている姿が見られる貴重なこの日、山内さんが大切に育てたぶどう達が「明日、お客様の手に渡るのか~」と思うとなんだか感動。ますます慎重に袋を外していきます。そして、気づくと頭の上いっぱいにぶどうが! ファンタジーの世界に飛び込んだような眺めです。
畑には驚きがたくさん! 作物がなっている姿こそ必見
ぶどうがひと段落し、園内を案内していただきました。すこし歩いたところには空心菜、さらにその隣に現れたのは、キウイフルーツ! スーパーで見かけるキウイはほとんどが外国産なので、なっている姿を見られること自体が貴重です。しかも東京で鈴なりのキウイを見られるなんて! さらにその奥の区画には柿の木が。訪れた8月にはすでに柿の実がなっていたのですが、食べられるのは10月末~11月頃。こんなに時間がかかることにも改めて驚きます。「なっている途中の姿も見ていただきたいです」とのこと。確かに、私も畑に通って過程を目にするようになってから「トマトは茎も葉っぱもトマトのにおいがする」とか「ナスにはトゲがある」などビックリすることがたくさんありました。「オクラがなっている姿はみなさん驚きますよ! ぜひ、来年見に来てください」と山内さん。私もオクラの育ち方、実のつき方には衝撃を受けました。あえて多くは語りません(笑)。みなさんぜひ機会があれば見に行ってくださいね。畑は驚きがいっぱいの楽しい場所、ということを改めて教えていただきました。
次の区画は、高いところは2メートル以上ある背の高い木が。「これはイチジクです」。一緒に行った友人が「大好きでよく食べるけど、なっているところを見たのは初めて! こんなに大きな木なんだ」と目を丸くしていました。8月中旬だったので、まだ採れる実は少なかったのですが、赤くなった貴重な1つを収穫させていただきました。ハサミでチョキンと茎を切ると、太陽のぬくもりがあるイチジクが! 特別に穫れたてのイチジクを食べさせていただいたら、桃のような甘い香りが口いっぱいに広がりました。おいし~!
イチジクにキウイ……農業現場に何度も行っている私でも驚くものが東京の農園にあるという衝撃と感動。「都会の方は野菜が育っている途中の姿を見ることがなかなかないので、みなさん驚かれます。でも、その姿を見ると次の季節、そのまた次の季節も楽しみにしてくださるんですよ。喜んでくれる姿を見られると私も嬉しいですね」。
メーカーから農家へ。ものづくりの基盤から“体験”重視に
そんな山内さんは、実は無線メーカーのデザイナーを3年半務めたのち農家に転身、という異色の経歴の持ち主。お父様が亡くなられたことをきっかけに山内ぶどう園を継ぐことになったまさに“突然農家になった”方。「こんなに芽が出るまで時間がかかるんだ、とか知らないことばかりで。最初の方は農家に研修に行ったりして1から学び直しました」。早朝に機械を使ったら音がうるさいなどとご近所からクレームが来たことも。これは農地と住宅が近い都市農業ならではの大変さです。「そこまで想定してなかったんですよ。全然わかっていなかったです」。
教科書通りにはいかない農業に苦戦するなかで“出荷して売る”のではなく“体験”メインにすることを決めたといいます。「他の農家さんと同じことを途中からしても太刀打ちできない、と感じたんですよね。デザイナーの頃は、いろいろつくってもお客さんに本当に喜んでもらえているのかイマイチわからなかったんです。体験農園なら、最初から最後まで関われるし今まで培ってきた自分の強みを活かせるかな、と」。お客さんの声が直接聞けることがなによりもやりがいだという山内さん。お客さんが「これ食べたい」と言った野菜は積極的に育ててみるなど、お客さんへの思いの強さが伺えます。
「お客さんにどんな事を感じてもらいたいですか?」と伺ったところ、「野菜は身近だからこそ、普段の生活ではその生育過程をなかなか意識しない。その分農園でなっている姿を見てもらうだけでも気づきがあると思うんです。季節や旬を感じて野菜を収穫、摂り入れることが、みなさんの健康にも繋がってほしいと思っています」。常に明るい笑顔で、ハキハキと話してくださる山内さん。そのなかに、果樹・野菜・農業・私たちの健康のことまで、深く包んでくれるような愛情を感じました。
3児のママでもある山内さん。現在は家族連れでの収穫体験が中心ですが、世の中が落ち着いたら、大人向けの学びのあるイベントもやりたいとのこと。収穫体験とプチ勉強会を組み合わせるなどいろいろと考えているそうです。これからの季節の収穫体験は、夏に引き続きナス、ピーマンが採れ、柿やカブなどもタイミング次第では収穫できるとのこと。常に5種類ほどの収穫体験ができるよう、日々管理されているというから頭が下がります。「周りの農家がすごい勢いで減っているのを肌で感じているので悲しい。だからこそ体験を通して守っていきたいですね」。
みなさんぜひ、東京唯一の収穫体験農園「山内ぶどう園」に遊びに行って季節を全身で感じてみてください。畑の楽しさ、果樹野菜の大切さを1人でも多くの方が感じることが、全国の農園を守ることにも繋がると、私は思います。ぜひ気軽な気持ちで♪ 遊びに行ってみて下さいね。
◆山内ぶどう園
住所:東京都調布市若葉町3-28-7
アクセス:京王線仙川駅から徒歩約10分
収穫体験予約サイト:https://helloaini.com/travels/2427?prcd=875
金額:大人・中高生1,750円、小学生1,234円、未就学児(3~6歳)1,167円
※フルーツが収穫できる時期(7~10月)は1人あたりプラス300円
※体験時間は約1時間程度です