始まりました、勝手に瀬戸内芸術祭! 彩舞アーティスト・コジマイサムさんとドローンのコラボレーション

始まりました、「瀬戸内国際芸術祭」! 2010年から3年に一度、瀬戸内地域で開催されているアートフェスティバルです。今回は瀬戸内海の町、香川県観音寺市の古民家で、わたしがその機運に乗っかって「勝手に瀬戸内芸術祭」と銘打ち、さまざまなアーティストさんとコラボして撮影しているお話をさせてください。桜の頃に行った第一弾、コジマイサム氏の彩舞とドローン空撮の掛け合わせは、なかなか味わい深かったですよ〜。どうぞご覧いただいて、わくわくしていただけますように。
目次
「瀬戸内国際芸術祭」ってナニ?
瀬戸内芸術祭(瀬戸芸)は、瀬戸内海の島々と対岸の港などで3年に一度開催されるアートフェスティバルです。選び抜かれたアーティストさんたちの作品が展示されて、瀬戸内海が盛り上がりますよ。
舞台となる島を具体的に挙げると、草間彌生氏の「南瓜」(2021年夏の台風で破損、現在展示なし)や、地中美術館にベネッセミュージアムで有名な直島、桃太郎のお話に登場する「鬼ヶ島はココ!」と伝えられている女木島(他にも候補地あり)、オリーブ栽培がよく知られる小豆島など。それなりに聞き覚えのある島々でしょ。これを機に訪れてみるのもいいですね。

高松の庵治の海上空から望む女木島
ちなみに、瀬戸芸が目指しているのは「美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となる」ことだそう! 瀬戸内海は有史以来、自然の豊かさと地理的な影響から重要な場所となってきましたが、こうして再び注目を浴びることで、さらにカラフルな未来へつながっていくんでしょうね。
瀬戸芸の日程は春夏秋と三期に分かれていて、春の部は4月14日〜5月18日、夏の部は8月5日〜9月4日、秋の部は9月29日〜11月6日です。場所など詳しいことは、瀬戸内国際芸術際の公式ホームページでご確認ください。
で、「勝手に瀬戸内芸術祭」ってナニ?
「勝手に瀬戸内芸術祭」とは、瀬戸内国際芸術祭の機運に乗っかって、わたしが勝手に妄想実行しているお祭りです(笑)。個人的にご縁のある香川県観音寺市にある古民家と、壮大ですてきな大自然スポットで、アーティストさんとコラボしてドローン空撮をしつつ発信をしていきます。
目的は二つ。一つ目は、瀬戸内海に面する美しい町、観音寺の認知が全国に広がってみんなが遊びに来てくれるようになるといいなと願って。だって観音寺は、おそろしく夕陽が美しく、

まるで宇宙ステーションみたいな、ファンタ〜スティック極まりない歴史の遺産「巨大砂絵・寛永通宝」があり、

ご利益が半端ないと噂の高屋神社には「天空の鳥居」なる超爽快スポットがあって、さらにはまるでヨーロッパの古城のようにかっこいい、日本最古のマルチプル・アーチ式ダムもこの町にあるんですから。壮大なすてきスポットがギュギュッと詰まっているんです。まずは知っていただいて、次のお休みのお出かけの目的地になるとうれしいなぁ。
そして二つ目、全国で空き家になって問題視されている古民家の利用例として、アトリエ使いをもっと広めたいなと思うから。観音寺にも古民家があるので実感しますが、古民家の味わいは触れ合うとクセになりますね、雰囲気や空気感の独特さがたまりません。当然それぞれの古民家によって違う味わいがあるだろうし、アーティストさんの発想力をくすぐるのは間違いないかと。しかも広い上に安く借りられるから、アトリエとして使うのには向いてそうでしょ? 可能性にわくわくしちゃっています。
ちなみに、こちらが観音寺の古民家です。
特にこの古民家は築90年、大正浪漫が漂うでしょ。映画「青春デンデケデケデケ」の舞台にオファーされたほどの、すてきな造りなんです。そのときは住人さんがいらしたので舞台にはならなかったのですが、とっても絵になる雰囲気なんですよ。
第一弾「勝手に瀬戸内芸術祭」には、彩舞アーティストさんが登場!
さて、はじめにお迎えしたのは、彩舞アーティストでダンサーのコジマイサムさん(Instagram@saibu_artist)。前述の観音寺にある古民家では彩舞アートを展開するシーンを、観音寺のあちこちではむっちゃクールなダンスシーンをたくさん空撮させていただきました。ちなみに、仕上がった彩舞作品を観音寺の商店街に寄贈してくださるという幸せもついてきちゃいました。
まずはこちら、アンニュイでいて迫力、不思議かっこいい魅惑の世界観をご覧ください。
ところで「彩舞」ってなんだ? これはイサムさんの造語です。彼は矢沢永吉さんの武道館ライブや、ウィルキンソンのCMに出演されてきたプロのダンサーさんで、踊りに熱中し続ける中でダンスを発展させ、アートも加えた「彩舞」を生み出したそうなんです。
彼のこれまでを駆け足でお届けすると、15歳のときにダンス甲子園のビデオを借りて衝撃を受けたことでダンスに憧れ、地元・愛知でノラダンサーデビュー、ビデオに挿入されたダンス解説などを参考に独学でダンスを練習しまくって技を磨いたそう。上京して大学生になるとダンスチームを組んで踊り倒し、ソロでは多くのオーディションを受けて華々しい舞台に立つことに。大学を卒業すると企業に就職はせず、フリーのダンサー、インストラクター、振付師として活躍するなど、踊りまくる人生はどこまでも続くのです。
そしてコンテストを目指して練習しまくっていたある日のこと。スタジオで履いていたダンスシューズのソールがゴワゴワしていたので、床に跡がついてしまったんだとか。それを見たイサムさんに……、
「ダンスの軌跡はアートだ!」
キラッキラのインスピレーションが降りてきた! その後、美術館で抽象画家・白髪一雄氏のアートに出会ったとき、バッチン思いはひとつに固まったと。その3ヶ月後、畳3畳分ほどの大きなキャンバスと、多くの画材や衣装などを担いで某河川敷へ。こうしてソールに筆をつけたシューズを履いて踊り、その軌跡をアートに昇華させていていく、コジマイサム氏の「彩舞」が始まったのです。
は〜、いいお話ですね。これまでの人生の「夢中」が積み重なった内なる熱と、外からの崇高な刺激を敏感に受け取る感性で生み出されたアート。

写真提供:コジマイサム
それから3年、彩舞を続けて今の作品に至るのですが、以前から感じ取っていた、彼の作品から発せられる特殊なエネルギーの味わいに、この誕生物語はものすごい納得感を与えてくれたのでした。仕上がっていく絵画自体の味わいもそう、まっさらな衣装がどんどん意図しない色をまとっていく味わいもそう。もうすべてが渾然一体となっての彩舞。俄然、引き込まれます。
桜満開の重要文化財・豊稔池ダムでダンスを空撮
ここは観音寺の山の中、五郷とよばれる地域にある豊稔池(ほうねんいけ)ダムです。日本に2つしかないマルチプル・アーチ式ダムのひとつで、こちらが1930年の作で最古。なんだかヨーロッパの古城のような風格でしょ! 特にダム好きさんにはヨダレものかと。

4月初め、ダムの上は桜が咲き乱れていました。このとびきりかっこいいステージで踊っていただきましたよ。


ご利益高い高屋神社の、天空の鳥居でダンス
ご利益が高いといわれる高屋神社でも踊っていただきました。特に金運は爆上がりとの噂がありますよ。それにしてもこの、海まで望む見晴らしよ。さすが稲積山山頂、404mなだけあります。ここに立つとそれだけでスーッとするぅ。確かに気分がパッと晴れて、運気がアップするような気にはなれちゃいます。


遠浅でだだっ広い、アンニュイな浜でダンス
さぁ、観音寺自慢の海で踊っていただきましょう。このときは大潮の干潮、最強の遠浅、だだっ広い浜が出現するタイミングでした。
さすが演出のプロ、イサムさん。イスを一脚、浜の真ん中に据える案をいただきました。わたしがそこに座ってドローンを操り、その周りでイサムさんが踊る……日常の海に現れた非日常、摩訶不思議な一幕に、撮りながら大興奮!


それにしても瀬戸内海は潮の満ち引き具合もとっても独特で、1日の潮の高低差は大きい時で4mほどもあるんです。他の海はだいたい最大で2mくらいでしょ? 陸地にぐるっと囲まれた独特な環境の海だからなんでしょうね。
そんなわけでこの日の昼間、わたしたちがいるここは海の底だったんです! こんな地球の営みの不思議も、体感しに訪れていただきたいなぁと思ったりします。
ダンスをしながら体全部で絵を描く「彩舞」
古民家の二階は二間。仕切りのふすまを外し、広々した一間にして準備開始です。今回は彩舞して生まれた絵を1日乾かして、また彩舞して……と、どんどん重ねていくので、真っ白なキャンバスが作品として仕上がるまでに1週間ほどの時間がかかります。

古民家を音楽でいっぱいにして、どんどん気分を高めていきます。ちなみに音楽はJAZZやHIPHOPだったり、オーケストラだったり。ソールに筆をつけた自作のシューズを履いて画材を染み込ませたら……その瞬間、彼の目がキュッと変わりました! 違う世界を見ているかのような表情になってダンスが始まったのです。踊って踊って、あるタイミングで、ズサー!

ダンスの軌跡が可視化される瞬間です。

メインのなにやらかが描き終わると、手も足も全部使っての描写が始まります。
すごい気迫! すごい世界観! さっきまでのほほんとした空気の古民家だったのに、急にサーッと現れた時空のカーテンに、古民家がまるごとさらわれてしまったかのよう……。ドローンと手持ちのジンバルカメラと両刀使いで撮影しながら、意識が飛んでいってしまいそうでした。
そんなことを繰り返して数日後、この形になっていたんです。

木のパネルを使った立体作品になっているとは。イサムさん自身、この形にすることを予定していなかったそう。キャンバスに向き合うごとに降ってくるインスピレーションが、こうさせたようです。

今回は飾りやすくするためにこの形になりましたが、大きいままで古民家の襖にするのは、とっても似つかわしいだろうなぁ。温泉旅館などにも雰囲気が合うだろうなぁ。斬新なダンスが可視化された、和のようでワールドワイドな世界感に、見るたびに圧倒されまくっているのです。

そして今、こちらの作品は観音寺の商店街に飾らせていただいております。ちょっと寂しくなっていた商店街に、イサムさんの斬新アートな魔法がふりかけられたかのよう。どうせ通るなら気分のいい道がいいですね、きっとたくさんの方がイサムさんの作品に惹かれて、わざわざこの道を通ってくださると信じています。
いかがでしたでしょうか。季節はどんどん爽やかに、お出かけ心がくすぐられるようになってきました。ぜひ、瀬戸内国際芸術祭と、勝手に瀬戸内芸術祭(笑)を体感しに、四国に行ってみてください。