超本気の漁師町は瀬戸内海の伊吹島にあった。こんな離島は初めて! 衝撃体験報告
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先日、めっちゃ独特な離島に上陸しちゃったんです。これまであちこちの離島に渡ってきたけど、他のどことも違う、唯一無二の雰囲気! 香川県観音寺市の伊吹島はなかかなかどうして尖ってました。その肝はどうやら「本気の漁師町」ってことみたい。観光客のための隙間とかないんです。だってご飯屋さんの一軒すらないんですよ(笑)。この“漁一筋感”、しびれましたねぇ。今回は事前調べなしでポンと降り立った衝撃をお届けしたいと思います。ちょっぴり、とっぴなお散歩気分でご覧ください。
瀬戸内海にポツンと浮かぶハート、伊吹島ってどんなとこ?
伊吹島は香川県観音寺市に属する離島です。観音寺港からは西に10kmほどで、陸側の観音寺の浜からはいつもチョンと見えています。波のないどこまでも穏やかな海のシーンを、この島がいいアクセントになって世界を引き締めてくれるんです。
そんな伊吹島は空から見るとハート型をしてました!
面積は1.05平方km、人口は450人ほど。どうでしょう、多いと思います? それとも少ないですか? 沖縄の八重山諸島の離島、鳩間島の面積はもうひと回り小さく1平方km未満で人口は約50人。そう聞くと、四国の島にしてはまあ、順当のような気もします。
ですがちょっと遡って戦後はどうでしょう。実はこの島、日本で一番人口密度が高かったそうなんです! 理由は「いりこ(煮干し)」。今でも全国的な名産地の地位は確立していますが、当時はもっとずっと生産が盛んで多くの人々が働きに来ていたそうです。ゴールドラッシュならぬ「いりこラッシュ」があったんですね。
島の縁に見えるのはほぼほぼ、いりこの加工場。集落は主に島の真ん中の小高くなっているところにあるので、細い登り坂が続くのが特徴です。
伊吹島へはわりとすぐ、フェリーでどうぞ
伊吹島へは観音寺港からフェリーでどうぞ。片道約25分の簡単移動です。料金は片道大人600円だし、離島といえどもだいぶ敷居が低いでしょ。ただ、便数は1日4往復のみなので、時間をしっかりチェックしておいてください。
上陸するともうびっくり! 小さな離島がこの活気!?
わたしは11時20分観音寺港発の船に乗りました。12時前くらいに着きますよ。当然、お昼は漁師ばっかりが住まう島で、新鮮なお魚をいただこうという算段です。そして到着。
上陸して歩き始めるとすぐさまこんな風景になりました。そしてびっくり、「なにこの活気⁉︎」。写真からは感じづらいと思いますが、すごいんです(笑)。建物がいりこの加工場で、中からは作業の音が聞こえ、人々が活発に働いてる気配がむんむん伝わってきます。そんな加工場がみっちり並んでいるではありませんか。そして中から威勢よく話しかけてくださる女性の方々の人懐っこさよ。いきなり飛んでくる一発目の言葉のチョイスよ。
「ねえちゃん、いくつ?」
「ねえちゃん、いいところにお勤めなんじゃない?」
おっと。これまであちこち歩いてきましたが、こんな会話の始まりかたはそうそうないです、パンチあるう(笑)。めちゃくちゃ率直なんだなぁ。 おかげでこちらも飾らず会話にジョイン、とたんに受け入れてもらえた気分です。
ごはん難民になっちゃった! どこで食べるのか大作戦
こんな活気のある漁師町なら、さぞおいしいお魚がたべられるんでしょう、イメージするところの、市場食堂の海鮮丼か、焼き魚定食か……? それが、行けども行けども加工場ばっかり、 それらしい建物が見当たらないんです。Google マップに聞いてみても該当なし。ふーむ、そんなことあるのかな? おそるおそる話しかけてくださる方に聞いてみると
「ごはん屋さん? ないよ!」
がーーん。信じられない。だってここは漁師町、働くみなさんのための食堂が必要なんじゃないの。と思ったけど、みなさん持参してきているんですね。ではせめてお弁当とか売ってるんじゃ?
「事前に予約すれば、春日旅館で買えるんだけどね」
事前予約ですか……がっくり。ならほら、パンとかお菓子とか、なにか漁協で売ってそう⁉︎
「なんにも売ってないよ。あ、そうだねぇ、あっちのあそこの角を曲がって奥に一軒お店があって、カンパンが売ってるよ」
わーい、ついに! って、非常食かーい(笑)。
そうだここはザ・田舎ではあるし、どなたかお家でごはんを作ってくれる展開は……なんて一瞬でも期待しちゃってごめんなさい。海辺で出会う方々はもれなく全員いりこ加工場でお仕事中。そんなことはできないんです。
気を取り直して、空から偵察
そしたら次の観音寺に帰る船は17時10分だから、まぁ、ほら、たかがもう5時間、ハラヘリでいればいいんじゃないの(涙)! とりあえず気分のいい風景に浸って、お腹と心を満たしましょ。
島の南の防波堤で飛びますよ〜。お向かいの加工場は、黄色い屋根と青い屋根。灯台とわたしは赤いんです。
いっつも凪の海、波なんて見当たらない瀬戸内海のど真ん中の防波堤には、テトラポットすらありませんでした。テトラポットの正式名称は「消波ブロック」。消す波なんてないもんね。
いりこの船が何台も何台も行き交います。今いる真浦港付近に入ってくる船、島をぐるっと回って北方面へ向かう船。海の上も大忙しです。
島なのにビーチがない?! 永遠に続くいりこの加工場
さて、島の北部にある港までお散歩します。なんてったって、この島にはレンタサイクルも、レンタバイクもレンタカーもないですからね。せっかくだから海沿の道をてくてく行きますよ、気持ちよさそうでしょ。
ところが……歩けど歩けど加工場が続く、これはだいぶ衝撃的! 島なのに海の様子がなかなか見えないって、なんて潔さでしょう!(笑)
そして道は湯気でいっぱい。もくもくもくもく、どうやらいりこを茹でる釜からあがっているようです。うーん、魚出汁の香りがとってもおいしそう。
加工場の前にこんな看板を見つけました。島の小学生が作ったようです、かわいいな。そう、小さな伊吹島にももちろん学校はあって、伊吹島小学校・伊吹島中学校の二つが一つの建物を使っているんです。
よかった! 海に降りられました、隙間だけど(笑)。ここは海と加工場の間に道があるエリアです。水はどこまでも透き通っていて、広がる視界には遠くの陸地以外に何にもなくて。うっかり陸続きの漁師町にいる気分でしたが、やっぱりここはポツンと浮かぶ島でした。
あちこち桟橋だらけ、船がどんどこやってくる
海には小さな船がビュンビュン行き交います。漁師さんたちが何度も行き来しいているのでしょう、海上も活気むんむん! ここは躍動する島ですよ。
それぞれの加工場の前には必ず桟橋があって、独特な風景です。
見ていると、漁を終えた船がやってきました。カタクチイワシなど魚が揚がるシーンが見られるかなぁと思ったけど、ホースみたいなものを船に差し込んで終了、一切魚の影は見えません。このホースはなんだ? 目で辿るとなるほど加工場まで続いていました。
捕ったイワシはホースを通して加工場に直行、そのまますぐに加工されるんですね。正真正銘の揚がった瞬間の新鮮素材が使われているってすごい! これはおいしそうです。「伊吹いりこ」が有名なのもうなずけます。
島中にお地蔵さんの行列が
お散歩していて目に入るのは、海、加工場、お地蔵さん。お地蔵さんですよ〜懐かしい。いや、懐かしいというか、お寺や神社以外ではあまり目にしたことがないような。そんなお地蔵さんが、それぞれの加工場の近くには必ずと言っていいほど佇んでいました。穏やかなお顔をしてお仲間と肩を並べているんです。お花などが飾られてとっても大切にされている様子。道端にお地蔵さんが行列をなす島とは、ほっこりするでしょ。
<動画あり>島の反対の港・北浦港から高台の集落を望む
あちこちより道をしながら、のんびり歩いて小一時間。北浦港に到着です。人のいない静かな港、でもたくさんの船が浮かんでいて、船が人々の生活に欠かせない足であることがよーくわかります。カタクチイワシの漁が終わる夕方にはたくさんの船が戻ってきて、港もわいわい賑やかになるのかもしれません。そんな港の午後三時の様子をご覧ください。
あくまでも穏やかで、あくまでも青くて、どこまでもキラキラしている海でした。伊吹島の集落は島の高台にあるのもよーくわかります。ここが戦後日本一の人口密度をほこっていたなら、この10倍くらいの家があったのかな。よく島が沈まなかったなーと感心してしまいます。
意外だったのは加工場のカラフルさ。加工場という文字には正直地味なイメージしかなかったけど、ここのは真逆で楽しそうな色使い。新鮮なイワシが茹でられつつもるんるんしていそうだな(笑)。
4時30分、島からみんながさようなら、帰るのね
さあ、最終の17時10分の船に乗るべく、真浦港に戻ります。到着したのは16時40分。すでに人が集まり出していました。予想以上に多くてびっくりです。聞くと、加工場で働いている方々でした。便利な観音寺の街中に住んで、仕事のために日々島に通勤している方々も多いんですって。たしかに船は片道25分、島に住まなくても働けますね。それにしても船通勤ってすごい。多くの島々が浮かぶ穏やかな瀬戸内海ならではなのかもしれません。
それにしてもおもしろい島だったなぁ。観光客にこびない島、潔くて大好きです。気の利いた施設やスポットは特にないのにまたぜひ来たいと思うのは、ぜんぜん飾らないスッピン感がたまらないから。本気の漁師町、漁師さんのための島、カルチャーショックを受けにぜひ訪れてみてください。そうそう、お昼ごはんは持って行ってね(笑)