審美眼をもつ「フルーツすぎ」のオーナーが紡いだ“最高峰と噂のパフェ”
目次
ずるい食べ物。
それはパフェ。細長いガラスの容器に、色とりどりのフルーツが層になり、ぷくぷくと愛らしいグラデーションをつくる。ジュエリーを眺めるような、そんな幸せなスイーツ。
でも私があまり得意ではないのは、煌びやかな装飾で“誤魔化した”紛い物。中身まで磨きをかけたプリンセスだからこそ、その甘美なドレスが“真”に輝くのである。前者はただの下品な目眩し、一口含めばバレちゃう脆いドレス。映えればいいってもんじゃないのよ。
果物屋さん兼フルーツパーラー「フルーツすぎ」
さて、本日は審美眼をもったオーナーが紡ぐ最高峰と噂されるパフェをいただこう。訪れたのは大塚に店を構える「フルーツすぎ」。
見えない美しさには、誰も知らないストーリーが隠されているから面白い。プリンセスストーリーは、運命の王子様と出会うまで山あり谷あり。だからこそ長年語り継がれ愛されるのだ。ここのオーナーの願いと熱量は、これに通ずるものがある。
「最高の状態のパフェを出したい」というシンプルで究極のこだわりは、生半可のものではなかった。
青果店の父親の背中を見て育った杉さん。物心ついた頃から果物が持つ真の魅力に触れ、培った舌を持っているからこそ、“嘘“は自分の舌が受けつけない。
仕入れに使うフルーツは。杉さんの舌を唸らせたものに限る。厳選して仕入れ、当日最終チェックをし、厳しい関門を通り抜けたフルーツだけがパフェの権利を獲得する。なので、1日に数十点のパフェしか作れない。
さて、そんな「フルーツすぎ」の至極のパフェ。目の前に現れたそれは、予想よりかなり豪華な姿で君臨した。
「ヴィーナスマンゴーパフェ/1,980円」
メキシコ産の極上完熟マンゴー「ヴィーナスマンゴー」を贅沢にまるっと一個半も使用した、最高峰のマンゴーパフェ。つるりと照り輝くマンゴー、みっちり積み上げれた常夏色のマウンテン。ただただ美しく、気高きお姿に、しばらく目が離せない。
お召し物は満点。さて、肝心のお味は?
「うううううううぅ。」
意味の分からない声が漏れる。甘く、そして上品。唇にあたる瞬間からどきどきする、果肉の柔らかさ、絶妙な歯応え。
熟れたマンゴーはこんなに色っぽく妖艶なのね。どきん。
一口運ぶたびに、私のマンゴーの概念が崩れて、最高の形でまたリビルドされていく。「意味わからなく美味しい」がぴったりな感想。
フルーツすぎの魅力はこんなものではない。パフェの種類はさまざま、メニューは旬に合わせて、柔軟にラインナップを変える。この日出会えたもう一つの可愛い子ちゃんは、お客さんからも熱烈な指示を持つ、みんな大好きイチゴ様。
「3種の贅沢苺パフェ/2,200円」
新潟県の「越後姫」、博多の「あまおう」、「白いちご」を使った、フルーツすぎが厳選したエース達のトリプルコラボ。「越後姫」は新潟県の安田興和農事の本田さんが手塩にかけて育てた新潟県限定品種。デリケートゆえに他県にはあまり出回らないレアなプリンセスストロベリーなのだ。
そんな、甘く美しき姫に、ここ東京でお目にかかれるとは……この時点でもう優勝。
ぷちんと弾けるルビー色の苺。お口いっぱいの甘い香り。洗練された甘美にうっとりする。あーもう悔しいくらい美味しいな。
そして勝手ながら原価は大丈夫なのか……? と勝手にお店の経営を心配してしまうほど、パフェの底までみっちり、ぱつぱつに仕込まれたフルーツたち。なぜこんなに愛の熱量を抱き、渾身のパフェを作り続けるのか。それはただ一つ「フルーツの本当の美味しさを知ってもらいたい」その思いが杉さんの原動力だ。
厳選された素材、最高の完熟具合に出会うフルーツの至福は、青果店だからこそが織りなす技術。もっと多くの人に正しく果物を楽しんでもらう、その気づきの入り口が「フルーツすぎ」なのだ。
恥ずかしながら、私は今、「フルーツすぎ」が紡ぐパフェを頬張りながら、「今まで食べたあれは何だったのだろう……?」とぼんやりしている。
この美味しさは、不意に後ろから殴られたような衝撃。半分ショック状態である。もっと早く、ちゃんと出会いたかった。フルーツの真の姿。今までの半生が惜しいと思うほど、今日の驚きと、そして至福は衝撃だった。
この食体験は、工芸品やアートに触れた感覚と近い。アーティスト、そして職人の魂を感じるパフェ。
頭があがりませぬ、大好きです。
◆フルーツすぎ
住所:東京都豊島区北大塚2-11-4 グランダエクラディーカス1F
電話番号: 03-3940-1805
営業時間:12:00~19:00(LO18:30)※土・祝日は11:00~19:00(LO18:30)
定休日:日曜日、その他水曜日不定休