三宅島の黒い絶景がエキゾチックすぎる 東京の離島で異星っぷりを味わう

目次
「三宅島」、なんか聞いたことある響きでしょ? 島の真ん中にどーんとそびえる雄山(おやま)が1983年と2000年に噴火したことなど、ニュースで聞いたことあるのではないでしょうか。その三宅島は伊豆諸島のひとつ。めっちゃきれいな海と、ダイナミックで猛々しく珍しいタイプの絶景が広がるヒーリングスポットです。ちなみに所在地は東京都で、車は品川ナンバーなのがナイス違和感ですよ(笑)。滞在中に遭遇した台風と、そのあとのご褒美もお見逃しなく。
東京の離島・三宅島への道のりはロマンチックが渋滞
三宅島への道はふたつ、飛行機か船です。飛行機なら東京都の調布飛行場から新中央航空が1日3便飛んでいます。わたしも未経験ですが、そもそも空港ではなく「飛行場」という場所が気になるし、約50分のフライト時間、一瞬で別世界にワープしちゃう経験もしてみたいところ。どこでもドアを開けるような気分なのでしょうか。
船なら東京の真ん中あたり、竹芝桟橋から出発しますよ。一晩を海の上で過ごすってめちゃくちゃロマンチックで旅感満載、すごく好きな旅路です。船の名前は橘丸、毎晩22時30分に出港して、朝の5時ごろ三宅島に到着します。
大好きな船旅でも、東京発の夜行船は特別感たっぷり。だってこの夜景付きですよ。東京湾から東京の夜景を眺めるこの風情はもう、うっとりきわまりありません。レインボーブリッジを下から見上げて、隙間から東京タワーを仰ぎ、海面に映り込み波にゆれる工場夜景をみやって……最高。船の揺れは優秀ですぐ眠気に襲われるけど、出発直後のこの時間は興奮状態で元気元気、旅情も高まっているときでしょう、存分に眼福状態をご堪能ください。

ちなみに、一番安い2等のスペースはこんな感じ。ときにぐんと揺れて床をゴロついたりもしますが、それもまた乙なもの。船旅タイムもきっといい思い出になりますよ。

早朝5時、到着です。もっと波のリズムを感じてたいよ、ていうかもっと寝てたいよ、そんなモードで起き上がることでしょう。この、ちょっと足りないくらいがちょうどいいような。帰りの旅路も楽しみだなぁと思いつつ下船です。さぁ、眠い目をこすって別世界へくりだします。
火山のある三宅島の島ライフ事情
改めまして、三宅島についてです。三宅島の人口は2500人ほど、面積は55.44平方km。真ん中に活火山の雄山(おやま)を据えた丸い島です。たびたび噴火が起きていて、1983年と2000年の噴火では、島の方々が島外へ避難されたこともありました。もちろん活火山ですから、また噴火の可能性もあるでしょう。それでもこの美しい島に戻ってきて生活が始まるのです。故郷への愛がきっと大きいですよね。人間ってロジックじゃないな、まず愛があるから人間なんだなと感じる事象でもありました。
そんな火山中心の島内交通は、海沿いに約30km続く三宅一周道路がメインで、そのほか細かい道がいくらかある程度。カフェや飲み屋がちょろっとあって、コンビニはなし、小さな地元スーパーが何軒か。お宿は民宿・旅館的なのがいくらかありますよ。この田舎っぷりは入り込むとなんて気分がいいの! 都会で何の気なしに恩恵に預かっていた便利なものがぜんぜんなくって戸惑うこともあるかもしれないけど、きっと半日も経てば、あるものを楽しむ感覚が備わって心地よくなりますよ。

わたしがお世話になった宿はこちら「民宿阿蘇」。ね、ザ・昭和の民宿感がいいでしょう。田舎のおじいちゃんちを訪れたような感覚にもなります。風の感触と波の音であふれ、先端設備の気配を感じない世界観の島には、ずいぶんしっくりとなじむ空間なのです。
◆民宿阿蘇
住所:東京都三宅島三宅村阿古529
電話:04994-5-0010
雄山のてっぺんから、アレが見えた!!
三宅島といえば雄山。車で登ってみましょうよ。

くねくねと登っていく道の途中でパチリ。南の海にどーん、おもちみたいなぷっくりシルエットの島の存在はどうにも気になります。あれは対岸約19kmほどに位置する御蔵島(みくらじま)で、周りにイルカファミリーが生息していることで有名ですよ。それにしても驚くのは数。なんと160頭あまりものイルカが気ままに泳いでいるそうで。個体の識別もだいぶ進んでいて、お名前もついていたりします。
いつかはあっちにも行きたいなぁ〜。ホエールスイムで溺れた経験のあるわたしは、ちょっぴりびびってドルフィンスイム未経験なのですが、今後必ず行きますとも。

頂上に到着して、周りの島々を一望。右のつんとした三角型が利島で左が新島。うーん兄弟! 海の真ん中にポツンと浮かぶ離島だけど、こうやって島々がお互いを見守っていてくれる感覚、視界にいてくれる感覚、それだけでこんなにほっと安心するなんてね。離島に来て心細さを感じていた認識はなかったけど、安らぎを感じることでそれが浮き彫りになった気がしました。人ってどうしても繋がりを求めてしまうものなんだなぁ、しみじみ考えたりしてね。
そんな風にぼんやり眺め浸っていて気づいたんです、びっくり案件。はじめだいぶ目を疑っちゃったんですけど、利島と新島の間にあるさらに三角の影、わかりますか。あれ、富士山ですよ。すごいなー! こんな海の奥の奥からも、太平洋と伊豆諸島、伊豆半島を超えて姿を示すってどういうことでしょう、直線距離にして120kmほども離れてるのに。さすが、富士は日本一の山だなぁと拍手を贈るのでした。
活火山の島は、大地が見事に真っ黒だった
三宅島の最大の特徴は、活火山があることでしょう。かといって、青い海とかっこいい山を目にした段階では知識以外で火山島だと思うことはなかったのですが、あーやっぱりここは火山島でした。こちらの情景をどうぞ!

なんって猛々しい風景でしょう。黒くて黒い、地面が真っ黒! そしてゴッツゴツ……いかにも溶岩が流れてきた感がたっぷり、すごいことが起こったんだろうなぁと一気にブルッとさせられます。そうして仕上がったこの異世界感。もしも東京から目隠しをして連れてこられ、ここで目隠しを外すなら、火星に連行されたと思うのではないでしょうか。あー強そう、強そうだしかっこいいし、共感とはほど遠い未知の魅力を最大限に発揮する大地です。それにしてもここで転んだら痛そうだなぁ(笑)。
ビーチがまた独特で! なんですかこの砂の黒さは。砂の概念がひっくり返ってしまうではないですか。ここは島の北にある大久保浜で、ぐーんと2kmも伸びています。
海は黒みがかった独特の青、砂はきっぱり真っ黒、激しく打ち寄せる波しぶきは真っ白。美しいコントラストを全身で感じつつ、このまま視線をぐーんと北上させれば東京に着くんだなぁ、なんならもっと上れば日本海突き抜けて大陸だなぁ。結局地球はひとつなんだなぁと思いがけない大きな視点を授かるのです。
そんな海での、波との掛け合いをどうぞご覧ください。

こちらは島の南西、岩ゴツゴツの錆ヶ浜(さびがはま)。どこもかしこも黒いや。自然界の昼間に黒がこんなに美しく主張してくるなんて、想像していませんでした。
三宅島から授かる、力強いエネルギー
わたしが感じる三宅島の魅力は、ひとことでまとめるなら「力強い」に尽きるのですが、防波堤も桟橋も、たいそう力強かったんですよ。

ここは島の北部に位置する大久保漁港の防波堤。サイズはそんなに大きくないものの、波しぶきがめっちゃかかり、ここに立ちつくしている自分自身に力強さを感じます。こういうことなんでしょうか、土地の効果とは、場所のエネルギーとは。‟離島の超絶な美海“は他にもたくさんあるけど、土地ごとに自分の中にわいてくる感覚の幹が変わるんですよね。優しさだったり、楽しさだったり、力強さだったり。

そうしてこちらは大久保漁港から車で約10分ほどの「伊ヶ谷港」の桟橋。ずいぶんドーンとしたセメント板ですね。こののっぺり具合はたいそう大胆不敵で強そうです。
風向きや波によっては、大型客船がこの港にも到着することがあるからこんな造りになっているのだとは思いますが、この海の中のステージ感は特別すぎて上がります。思わず走り出したくなる率120%! それにしても、カチコチの巨大な無機物が舌みたいにベーッと海に突き出ている様子はやっぱり大胆不敵でしょ。
大自然に何かを組み込もうとがんばる人間と、そんなの気にもとめずただそこにある大きな大きな海の包容力。不思議でかっこいい融合にクラっとくるばかりです。
曇っていても、輝く瞬間はきっとある

さらに南に車を走らせること約10分。「メガネ岩」と呼ばれる岩の間の海に、太陽が落っこちました。このとき台風が徐々に近づいてきていて、空は雲でいっぱいでしたが、向こうの世界へ消えゆく瞬間に隙間から顔を見せてくれた太陽。ものすごくエネルギッシュなオーラが水平線に広がります。
島の天気は変わりやすいし、台風が近づくと影響は長引くけど、どんな表情にもキラリとひかる瞬間が待っています。どうぞ見逃さないでいただきたいなぁ、ぜひとも備えて受け取ってください。
【番外編】海ごと怪獣になった! 離島での大型台風の過ごし方
三宅島に滞在中、巨大台風がやってきましたよ。島の方々は慣れっこかもしれませんが、新参者の自分にとってはそうとうなハラハラ案件、心拍数は爆上がりです!

台風最接近の数時間前、高台から撮った波はこんなです。右奥の崖の高さは十数メートルだと思うので、どえらい波だってこと伝わりますか?! 海がこんなに揺れ動くとは、もう海ごと怪獣にみえてきます、食べられるー‼︎
その数時間前には宿の窓には外側から板を打ちつけて、内側からはガラスにガムテープをバッテンに貼り、漫画で見たような対策を講じます。停電に備えてろうそくを用意し、パソコンやスマートフォン、その他のバッテリーをせっせと充電し、冷凍庫のアイスは食べ切ります。おこもりタイムを楽しむためのトランプやボードゲームなどアナログな遊び道具のありかも確認しないとね。しばらく物資を積んだ船も来ないだろうからと買い蓄えていた食料をチェックするとなんだか不安になってきて、すでに品薄になっているスーパーへ再度行って生き残りをかけた(おおげさ)食料を追加。さらにはチョコなど甘いものとお酒を台風真っ只中の時用に。不安な時間には少しでも幸せになれそうなもので気分を上げないとね。
そうこうするうち、雨風がガンガンと家にアタックしてきて家ごと揺れはじめるんです。怖っ。そしてあっという間の停電。宿の居間にろうそくの火を灯すと、なんだか神秘的な気分に。ひとつの小さな炎に宿のみんなが集まってくる様子は、まるで神の教えをこうような……なんて思ったのも束の間、トランプ大会で大盛り上がり、あっという間に怖さを忘れて酔っぱらうのでした。
翌朝の日の出は最高でした。海がまだまだ揺れ動くも、ともに嵐をやり過ごした運命共同体の海山大地がすがすがしく照らされます。ひと仕事終えた安堵と希望に満ちた空気感がたまりません。岩に打ちあがる波がクジラの潮のように吹き上がり、暴れる嵐の神の置き土産かなぁなんて見惚れるのでした。美しいなぁ。
さよなら三宅島、虹が見送ってくれた

台風が去り、わたしも島を去る日がやってきました。船に乗り込み、小さくなっていく島をしみじみ眺めていると、あらら虹がかかったんです! ほんと気が抜けないなぁ。いつだって世界のどこかにラッキーが降りてきているんだもの、受け取らないわけにはいきません。まぁ、気づいたタイミングが受け取るタイミングとも言えるから、気張りすぎずない程度にアンテナは立てておきたいなぁって思いました。去る者にすら気づきを与えてくれる三宅島、またきっと訪れるつもりです。
広くて広くて力強い三宅島で過ごした時間は、体の中のいろんな毒素を抜いてくれたような気分にさせてくれました。ぜひあなたも、すぐそこの別世界を訪れて、三宅島特有の心地よさを味わってみてくださいね。