出会えたら超ラッキーな“弾き逃げ”って? 木村裕子のおもしろ鉄道旅
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この頃、全国の駅構内にグランドピアノが突然ドーーン! と出現する現象が起きているんです。どのピアノにも共通することは、「ご自由にお弾きください」という看板が立っていること。
駅構内に? ピアノ……???
気になる! ってことで、私はこのピアノの謎に迫ってみることにしました。
出現率No.1は九州の駅
この、ピアノ出現現象(勝手に名付けました。笑)は、なぜか九州に多く、私が確認した箇所だけで3駅。佐賀県の新鳥栖駅と小城駅、福岡県の筑前前原駅です。
筑前前原駅にピアノが置かれたのは、地元のピアニストが、オランダ・アムステルダム中央駅にピアノが置かれているのをテレビで見て、駅に提案したことがキッカケで実現したそうです。実は海外では、駅構内にピアノがあるのはもう何年も前から日常の光景となっているんだとか。
最近、知り合いの鉄道ファンがたまたまこの駅に行って発見して、「駅でピアノが弾けるなんて貴重過ぎる!」と、実際に弾いてみたと報告してくれました。ピアノ経験がないためビクビクしながらチャレンジしてみたものの、「誰も足を止めずに素通りでした……」とのこと(笑)
人を幸せにする“弾き逃げ”が浜松に出現
赤面チャレンジした知り合いとは打って変わって、面白い情報をキャッチしました。東海道新幹線浜松駅で、置いてあるピアノを演奏し終了後そそくさとその場を立ち去る“弾き逃げ”が現れたんです。その様子を撮影した動画をYouTubeにアップしたところ、なんと350万回再生を突破したそうですよ! 気になった私は、その方にお話しを伺ってきました。
「大木エンジニアリング」という名前で登録している会社員の大木さん。ピアノ前にスッと現れては、松任谷由実さんの「春よ、来い」など数々の名曲をプロ級の腕で弾き、駅構内で急ぐ人々の足を止めていきます。演奏が終わって最後に拍手をもらうと、恥ずかしそうな顔をして逃げるようにその場を立ち去っていく……。
「偶然居合わせたバイオリンやチェロ奏者の方とセッションしたこともありますよ。お互いが言語ではなく、音楽で探り合いの会話をするのが楽しいです」と大木さん。おお……すごい……。
私もこんな素敵な探り合いをしてみたいなぁ。
X JAPAN・YOSHIKIさんの大きなポスターの前で「Forever Love」を弾く
浜松にピアノが置いてあったのは、大手楽器メーカーの河合楽器製作所、ヤマハ、スズキがPRのために設置したのが理由だそう。過去には、人気ロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKIさんが演奏したものと同型モデルのクリスタルピアノ(640万円)もあったみたいです。大木さんはその当時そのピアノで「Forever Love」を演奏したらしいですよ! ご本人のポスターとはいえ、視線を感じながらも堂々と弾く姿はまさに勇者ですね……! 「さすがにこの時は特別な意味を感じた」と、当時の印象を教えてくれました。
最後に木村ポイント!
大木さんはピアノを習った経験がなく、楽譜も読めないんだとか。すべて“耳コピ”で覚えて弾くそうなんです。そのキッカケは小学生の時に見た北野武監督の映画「菊次郎の夏」。ピアノの音と情景をすり合わせることの美しさに刺激され、世界観に感化されたそうです。
皆さんも、ピアノのある駅を見つけたら演奏チャレンジしてみてはいかがでしょうか!?