今こそ注目したい! マンホーラー・白浜公平がおすすめする“マンホールのふた”起点の旅
ここ数年、マンホールのふたが話題になることがよくありますが、その楽しみ方は多種多様です。マンホールのふたには風景・歴史・名産品など、その土地ならではのものが描かれていることが多く、旅のヒントを得るきっかけになることも。今回は、改めて知っておきたいマンホールのふたを旅の起点とする楽しみ方と、写真の撮り方を幾つかご紹介します。
目次
マンホールのふたを旅の起点に
マンホールのふたにはご当地自慢のものが詰め込まれていることが多いです。どこを観光するか、お昼に何を食べようか、迷ったらマンホールのふたを起点としてみませんか?
例えば、伊東のふたにはつり橋と灯台のある岸壁がデザインされています。「伊東市・灯台」などと検索をすれば、それが城ヶ崎海岸にある門脇埼灯台であることがわかりますね。このことから、門脇埼灯台が伊東市一押しの風景であるといえます。
そして実際にその場所を訪ねてみると、絶景が広がっていました。写真を撮る際はぜひ、ふたのデザインと同じ画角を探してみましょう。マンホールのふたにデザインしてしまうほどのご当地一押しの構図になるはず。ふたになった風景、それは間違いなく感動を呼ぶ風景です。ドラマやアニメに出てきた風景を実際に訪ねて巡ることを「聖地巡礼」と呼びますが、これも正に聖地巡礼ですね。
聖地巡礼と似た撮影方法を紹介します。ふたになった風景と、そのマンホールのふたとを一枚の写真に収める撮影方法。これを「ご本人登場」と私が命名しました。この写真の場合、マンホールのふたを「さそり座の女」を歌うコロッケさんに見立て、後ろにそびえ立つ瞰望岩を美川憲一さんに見立てることで、ものまねをするコロッケさんの背後から本家・美川憲一さんが登場する風景が浮かびます。「ご本人登場」は、お城や橋などの建築物、鹿や鳥などの動物がデザインされたマンホールのふたでも同じように撮影することができます。ただ、よい位置にマンホールのふたが無い場合が多く、撮影には苦労することも少なくありません。しかし、うまく一枚の写真に収めることができた時の達成感は格別です。
静岡の稲取にあるふたにはキンメダイがデザインされています。稲取は他にも海の幸や山の幸、つるし雛も有名ですが、それらを差し置いてマンホールのふたにデザインされています。つまり、ご当地の一押しがキンメダイなのだとわかりますね。
ここまで推されたら食べてみないわけにはいきません。そして間違いなく美味しい。ふたに従えば後悔することはありません。マンホールのふたは「優れた旅の案内人」とも言えるでしょう。
何気ない風景にマンホールのふたを足してみる
ここまでは、マンホールのふたを起点とした旅の仕方を紹介しました。ここからは、より美しくマンホールのふたを撮る方法を見ていきましょう。どこにでもあるマンホールのふたですが、そのふたを含む風景を切り取ってみると、ハッとするほど美しいと感じることがあります。
マンホールのふたは動かない被写体ですが、その日の天気や時間帯によってさまざまな表情を見せてくれます。晴れた日は青い空を入れて撮影してみるのも良いですね。
雨の日や雪の日にもそれぞれ表情があります。水が溜まったマンホールのふたに浮かぶ波紋も綺麗ですし、水面に映る空や雲を写しても、また違った面白さを感じられます。雪の日は降り始めが狙い目。凹凸の窪みと表面とで温度差があるせいか、上の写真のように切り絵のような鮮烈な表情を見せることもあります。
ふたに思いっきりカメラを近づけると、鋳肌の様子が分かる写真を撮ることができます。図柄の無い地味に見えるふたでも、錆びの様子や砂の詰まった様子から、その場所で長く働いてきたことを感じ取ることができ、愛着さえ湧いてきます。
中には草や苔が育って箱庭のような小宇宙を形成している場合もあります。「ふた庭」と呼んで愛でていますが、これも寄って撮影するのがいいですね。
影が写真に入ったり照り返しがきつ過ぎたりすると、太陽の光を邪魔に感じることがあります。しかし、照り返しが最も強くなる方向からふたを撮影することで、写真のように地面に輝いて見えるふたを撮影することができます。この照り返しを利用した撮影方法は「ギラリ」と呼ばれており、鉄道写真用語からの輸入だとのことです。
おわりに
新しく設置されたふたを求めて全国を飛び回ったり、正体不明の古いふたの謎を解くために資料を探し回ったり、歴史資産となりうる貴重なふたの保護・保存活動を行ったり、この趣味はとても深い沼です。楽しみ方は人それぞれ、正解はありません。その中でも、今回はマンホールのふたを旅の起点とする楽しみ方を紹介しました。ふたを起点に旅をすることで、その土地を知るきっかけにもつながります。マンホールのふたの旅を始めるときは、始めに自分の身近にあるところから目を向けてみるのもいいかもしれません。たまには下を向いて歩いてみて、気になるふたを見つけたらそこから旅をしてみてくださいね。
◆白浜 公平(しらはま こうへい)
マンホールふた愛好家。マンホールナイト実行委員。日本橋高島屋セミナー・マンホールのふた担当講師。出演したテレビ番組に「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)、「マツコの知らない世界」(TBS)、「次課・長州の力旅」(BS フジ)、「ピエール瀧のしょんない TV」(静岡朝日テレビ)など。「下水道協会誌」、「東京人」、「日本観光ランニング」などに連載・寄稿。