返礼品が家電!? 宮城県角田市に注目したらふるさと納税の本質が見えてきた
ふるさと納税の返礼品に、なにかおもしろいものないかなーと思っていたら、家電を見つけました。
総務省による、ふるさと納税制度の改正が続いている昨今。
「返礼品は地場産品(その土地で生産されたもの)とすること」に適合した、地場産品の電化製品なんてあるの? と思っていたら、ふるさと納税の指定をしっかりと受けていました。その自治体は、宮城県角田(かくだ)市。
「なぜ家電を返礼品に?」「人気の商品は?」とお話を伺ってみると、ふるさと納税の本質が見えてきました。
目次
お話を伺ったのはこの方々
角田市ふるさと納税係・樋田さん(写真 左)、角田市観光物産係・佐々木さん(写真 右)
お話を伺ったのはこの人!
ふるさと納税担当・樋田さん(写真:左)
角田市に出向中の宮城県職員。外からの視点で角田市の魅力を発掘中。個人的に好きなのは、市内の中華料理店「清華園」のチャーハン。
観光物産担当・佐々木さん(写真:右)
宮城県亘理町生まれながら小学生のときに角田市へ。以来、角田市在住。個人的に好きなのは、道の駅かくだの味噌ラーメン。「あれは専門店の味です」
ふるさと納税の返礼品に家電がある理由
――恥ずかしながら、角田市に初めて来ました。返礼品に、「家電」を扱っているってかなりユニークですよね?
樋田さん「まさに狙いどおりといいますか(笑)。まずは返礼品に注目してもらい、ふるさと納税をきっかけに角田市自体の認知度を上げていければと思っています。ふるさと納税の返礼品にできるものは、総務省のルールで決められており、家電などの加工品は市内の製造等により返礼品の価値の過半が生じているものとなっています(※編集部注)。角田市内にアイリスオーヤマ製品のものづくりの中枢を担う工場があることから、返礼品として提供することが可能となっています」
※ 編集部注:市内で、その返礼品の価値の50%以上が生み出されているかどうか。例えば製造や加工がそれにあたり、単なる選別や組み立て、梱包だけでは認められません。
角田市ふるさと納税担当・樋田さん
樋田さん「角田市は全国でも有数の家電返礼品の取り扱い数を誇り、その数は“ナンバーワン”。自称ですが(笑)。掃除機、オーブンレンジなどの定番の電化製品はもちろん、フライパンなどの日用品や冷凍庫なんかもあります。返礼品を目的に角田市へふるさと納税をして、角田市に興味を持ってもらったり、ほかの地元の事業者さんに注目したり、別の特産品を頼んだり、実際に旅に来てくれたりすることが理想なんです」
――納税した市のことは知りたくなります! 特産品といえば何ですか?
樋田さん「角田市は宮城県内有数の米どころです。そのほか、香りと甘みが強い「秘伝豆(ずんだ)」や昔ながらのしょっぱくて、すっぱい、でもおいしい梅干しなどですね。角田市では総務省の要件に加え、返礼品の提供者には“事業者登録制度”という独自のルールを設けています。昨今、産地偽装などの問題もあるので、角田市が認定した事業者の商品のみ扱うことで、安心安全な体制を徹底しています」
「宇宙」と「グルメ」が共存!? 角田市のアイデンティティ
――確かに返礼品が、市への印象にも大きな影響を及ぼしますもんね。では角田市ではどんな旅ができますか?
佐々木さん「市の魅力については私から。角田市の大きな特徴は、宇宙航空研究開発機構(通称・JAXA)があることです。JAXAの施設があるのは、角田市を含めて全国で5市2町。それらが「銀河連邦」というのを結成し、一緒にイベントを開催したり交流を図ったりしています。見学施設としてはJAXA 角田宇宙センターにある宇宙開発展示室やスペースシャトルの発射棟をイメージした角田市スペースタワー(展望塔)、JAXAの関連施設・コスモハウス(宇宙展示館)にはめったに見られないロケットエンジンなど珍しい展示もあって、見応え満点です。
角田市スペースタワー・コスモハウス
――「宇宙」を感じられる場所がたくさんありますね!
佐々木さん「ほかには、みやぎ蔵王三十六景にも選定されている四方山(しほうざん)もおすすめです。角田市は米どころなので、土地が開けていて、頂上から360度のパノラマが広がっています。天気がいい日は気持ちいいですよ。ほかには、5つの“め”を推しています。
四方山頂上からの展望
――“め”とはなんですか?
佐々木さん「先程お話したとおり、まずはこめ(米)。あと、まめ(豆)。角田市では秘伝豆という品種の枝豆を生産しており、角田の秘伝豆は味よし、色よし、香りよしの三拍子揃っています。採れる時期も9月末だけなので、10月に行われる道の駅などでの販売会は午前中に完売になるほど人気です。3つ目は、うめ(梅)。角田市は梅花の里として知られ、6月の梅まつりはかなりの賑わいを見せています。その梅をシソと塩のみで漬け込んだ、昔ながらのすっぱい味が角田の梅干しの特徴です」
角田市観光物産係・佐々木さん
――滋味深い食が揃っていますね! 残りの「め」とは?
佐々木さん「ゆめ(夢)と、ひめ(姫)です。「ゆめ」は、JAXA角田宇宙センターやスペースタワーなどに象徴されるような宇宙への夢や、角田の未来を切り拓くキーワードです。ひめ(姫)は、江戸時代初期に角田を治めていた石川家の三代当主に嫁いだ、伊達政宗の次女・牟宇姫(むうひめ)様をシンボルに、角田市の豊かな歴史を指しています」
牟宇姫(むうひめ)様が愛用していた筆の妖精のおふでちゃんを囲む樋田さんと佐々木さん
のんびり自分だけの旅プラン! おすすめスポット&ローカルグルメ
――それが、角田市のアイデンティティなんですね。角田市に訪れる方の目当てはなんですか?
佐々木さん「食べ物を目当てにする方が大半なように思います。秘伝豆の販売会や梅まつりがあると、わざわざ仙台から買いに来てくださったり、近隣の都市から集まってきてくれるんです。
角田市の名産品たちを手に
――実際に角田市を訪れるとしたら、どんな過ごし方がおすすめでしょうか。
佐々木さん「正直に言うと、角田市は『ザ・観光地』という場所は多くありません。しかし、その分のどかで自然豊か。各コンテンツを自分でつなぎ合わせる、のんびりとした旅がおすすめです。グルメでいえば、角田駅前の中華料理店・光華飯店の“角田ブラック”と呼ばれる濃い醤油味が特徴の黒いスープのラーメンがソウルフードです。ほかにも、地元の特産品である梅を使った梅スパゲッティが人気の喫茶店・たまやなど、地元の人に愛されている個人のお店が多いのも特徴ですね。梅スパゲッティをはじめ、角田ならではのメニューを提供しているお店が多数。純喫茶のような雰囲気を持つ個人店が多いのも特徴です」
樋田さん「プランにできるほど多彩ではないけれど、コスモハウスで知識欲を満たして、美しい景色の中をドライブしたり、のんびりする旅はいいですよね。そのためにも、まずは角田市を知ってもらうことが大切かなと思っています」
返礼品が目当ての人を角田市のファンに換える
――序盤にもそのお話をしてくださいましたが、そのためにも、電化製品を返礼品にしているんですね! 見事な伏線回収……。
樋田さん「アイリスオーヤマさん、ほかの事業者さんにもご尽力いただき、年々返礼品の納税額も増加してきています。返礼品として人気なのは、お米や季節物でいえば梨など。そうやって角田市の魅力ある返礼品が並んでいるので、これからもぜひ注目していただきたいなと思っています。返礼品を選んでもらって、いずれ角田市に旅行に来てもらうなど、返礼品への興味を、角田市への興味に転換していただきたいと思っています。」
――ふるさと納税のお得さや返礼品選びに夢中になってしまいがちですが、それが「ふるさと納税」の本質ですね。今年は、返礼品だけでふるさと納税したとしても後ろめたさをもたず、それをきっかけにその自治体のことを勉強したいと思います。
樋田さん「ぜひ! 角田市の返礼品も見てみてくださいね」
おまけに
取材時、「道の駅 かくだ」で角田市出身の大学生がプロデュースしたクラフトビール「角田のまど」の販売会が開催されていました(人気で午後には売り切れていましたが)。名物などの商品をきっかけに、角田市の魅力を発掘・発信するのに民間も自治体も、熱意は変わりません。今年は「返礼品に目がくらんで……」と後ろめたさを感じず、商品を入口にでもまずは興味をもってまちを知ることから始めてみたいと思います。














