地元ライターおすすめ! 春と福を呼び込む大和の節分行事5選
2月3日は節分の日。「鬼は外、福はうち」と言いながら豆まきをする日です。この日は立春の前日。奈良県内のさまざまな社寺でも春を、そして福を呼び込む節分行事が行われています。大和の節分は各社寺で習わしも鬼もそれぞれで個性的。奈良県在住LIKESライターの神奈月みやびが、春と福を呼ぶおすすめの節分行事を紹介します。
目次
「福は内、鬼は内」のかけ声で行う元興寺(がんこうじ)の節分会(せつぶんえ)
元興寺は、南都七大寺(※1)の一つに数えられる由緒あるお寺です。奈良時代には、現在の「ならまち」のほとんどが元興寺の敷地でしたが、江戸時代には境内地に民衆が住む町ができ、元興寺と言われるお寺も3つに分かれ、点在してしまいました。そのうちの一つ、真言律宗元興寺(極楽坊)は、元は僧坊だったところで、今も残る極楽堂と禅室が国宝指定を受けており、これらが1998年に世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産に登録されています。
そんな元興寺の節分会では、元山上千光寺の修験者による星祭(※3)・厄除け・招福祈願として「柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)」と「火渡り修行」が行われます。「柴燈大護摩供」は炎の中に不動明王を勧進(※4)し、願い事を書いた護摩木を炎に投入して燃やし、願いを聞いていただく儀式です。「火渡り修行」では護摩木が燃える煙のなか、まだ熱い木の上を修験者が裸足で歩きます。修験者の後には一般の観客も体験できます。
これらの儀式のあと、年男・年女が舞台に上がり、豆まきを行います。かけ声は、「福は内、鬼は内」。実は元興寺は鬼とのゆかりがある寺でもあります。その昔、元興寺の鐘楼に鬼が出て、都の人たちを怖がらせていたそう。その時、尾張国から雷の申し子である大力の童子がやってきて、この鬼の毛髪をはぎとって退治したのだとか。この話から邪悪な鬼を退治した童子八雷神(やくさいかづちのかみ)、鬼を元興神(がごぜ)とし、「鬼は自分の内から出るように」「福は家の中に入るように」という思いを込め、「福は内、鬼は内」というかけ声になったそうです。
※1南都七大寺(なんとしちだいじ):奈良時代に平城京(南都)を中心に朝廷の保護を受けた東大寺、興福寺、元興寺、大安寺、西大寺、薬師寺、唐招提寺の七つの大寺院の総称。(唐招提寺の代わりに法隆寺を入れる説もあり)
※2元山上千光寺(もとさんじょうせんこうじ):奈良県平群町にある修験道の霊場で、修験道の祖・役行者が大峯山を開く前に修行した場所(元の山上)として知られる。
※3星祭(ほしまつり):真言密教系の寺院などで節分(2月3日頃)に行われる、個人の運命を司る星(本命星・当年星など)を供養し、一年の除災招福(災いを避け福を招く)を祈願する法要。
※4勧進(かんじん):本来は「仏道を勧める」という意味だが、修行の場に仏様(不動明王)を招き入れる、呼び覚ますという際にも使われる。
◆真言律宗元興寺(極楽坊)
住所:奈良市中院町11番地
電話番号:0742-23-1377拝観時間:9:00~17:00 ※最終受付16:30
拝観料:大人700円、中高生500円、小学生300円
※時期・展示内容によって時間・料金に変動あり
舞台の上から豆と鈴が飛んでくる!? 東大寺二月堂で行われる儀式
大仏様で知られる東大寺の境内にある「二月堂」は、旧暦2月に行われる修二会(しゅにえ)の舞台として有名です。南都の古寺では、正月に行う法会を「修正会(しゅしょうえ)」、二月に修する法会を「修二会」といい、各寺の方式で行われています。東大寺の修二会は、1270年以上絶えることなく続く伝統行事で、本尊である十一面観世音菩薩に参籠(※5)する僧侶が人々に代わり罪を懺悔し、国家の安泰と万民の豊楽を祈ります。「お水取り」の別名でよく知られ、現在は3月1日から2週間にわたり行われていますが、もとは旧暦の2月1日から行われていました。「二月堂」の名前の由来は、「二月に修二会を行うお堂」なのです。
そんな東大寺二月堂では、節分の日には、「還宮(げんぐう)」、「豆まき」、「星供養(ほしくよう)」という三つの儀式が行われます。「還宮」は10時から行われ、昨年お祀りしたお札やお守りなどをお焚き上げします。次に、二月堂の舞台の上から「豆まき」が行われるのですが、豆だけではなく、福鈴や落花生にお菓子まで飛び交うのがほかと違うところ。「豆まき」の後は二月堂下の法華堂前広場で福豆や福鈴の手渡しがあるのですが、人数が限定されていますのでご注意を。最後、18時から星に除災与楽を祈る「星供養」で締めくくり。万灯明(まんどうみょう)の明かりのもと、修法のささやきと祈祷簿(※6)を繰る音だけがする神秘的な儀式です。
※5参篭(さんろう):祈願や修行のために一定期間、神社やお寺にこもり、世俗との接触を断ち、心身を清めて礼拝や読経などの修行を行うこと。
※6祈祷簿(きとうぼ):お寺で行われる法要(特に星供養など)で、参拝者の願い事や名前が書かれ、僧侶がそれを読み上げて(繰って)祈りを捧げる、祈願の内容が記された帳簿のこと。
◆東大寺二月堂
住所:奈良市雑司町406-1
電話:0742-22-5511
拝観時間:自由
拝観料:無料
幻想的なきらめき! 春日大社の「節分万燈籠(せつぶんまんとうろう)」
世界遺産に登録されている「春日大社」は、全国各地にある春日神社の総本社です。その敷地は春日山原始林を含めて全体で32万坪と広大。62の摂末社(※7)があり、縁結び、夫婦円満、安産、厄除けなど幅広くご利益があるとされています。
そんな春日大社の節分では、18時~20時ごろまで境内にある約3,000基の燈籠に灯りが灯され、諸願成就を祈念する「節分万燈籠」が行われます。灯籠の多くは平安時代末期から貴族や武士、一般庶民の人々などから奉納されたもので、参道には石燈籠が約2,000基、回廊には釣燈籠が約1,000基あります。以前は燈籠の奉納代に油代も含まれていたため毎晩灯りを灯していましたが、諸事情により中断。現在は節分の日とお盆の8月14日、15日の3日間のみ灯されるので、とても貴重です。「節分万燈籠」の時にはぜひ、特別拝観もしてみてください。通常時も特別拝観で回廊に入り、本殿の近くまでお詣りできるのですが、この日は特に幻想的な風景を目にすることができます。息が白くなるほど寒い中、暖かな燈籠のきらめきに酔いしれていると、世の中の憂さや厄も払われるような気がします。
※7摂末社(せつまつしゃ):神社の境内やその周辺にあり、本社(本殿)に付属する小規模な神社の総称で、本社のご祭神と縁故の深い神を祀る「摂社(せっしゃ)」と、それ以外の神々を祀る「末社(まっしゃ)」を合わせた呼び方。
◆春日大社
住所:奈良市春日野町160
電話番号:0742-22-7788
拝観時間:詳細はHPにて
拝観料:詳細は公式HPにて
金峯山寺(きんぷせんじ)の節分会「鬼の調伏式」
さて、奈良市内を離れ、遠く吉野山へ。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産の1つ金峯山寺は役行者(※8)が開いた修験道の聖地。現在の建物は『豊臣兄弟!』でおなじみの豊臣秀吉・秀長の支援によって再建されたもので、1592(天正20)年頃に完成しました。境内にある蔵王堂は国宝に指定されていて、東大寺の大仏殿に次ぐ規模の巨大な木造建築です。400年前に建てられたもので、柱には製材されていない原木のままの木が使われています。
ここでの節分会「鬼火の祭典」はとてもユニーク。役行者の法力により悪いことをする鬼を呪縛し、仏法を説いて改心させ、弟子にしたという故事にちなんでいます。そのため「福は内、鬼も内」のかけ声で全国から追われてきた鬼を迎え入れます。さらに、蔵王堂で行われる「鬼の調伏式」では、荒れ狂うそれらの鬼を経典や豆により「よい鬼」へと改心させ、最後は鬼が頭をたれて平伏するという儀式が行われます。
儀式が終わると、ここでも「福は内、鬼も内!」のかけ声とともに鬼も一緒になって福豆撒きが行われます。(ああ、君たちはよい鬼になったんだね!)
なお、吉野山では節分会に合わせて関連するイベントがたくさん行われています。吉野山観光協会が主催する鬼とともに宿泊するプランなどもあるのでぜひチェックしてみてください。
※8役行者(えんのぎょうじゃ):日本独自の山岳宗教「修験道(しゅげんどう)」の開祖とされる飛鳥時代の伝説的な呪術者・修行者。葛城山や大峯山などの霊山で修行し、鬼神を使役したり、空を飛んだりするような数々の超人的な伝説が残されており、後世には「神変大菩薩(しんべんだいぼさつ)」の尊称で信仰されるようになった。
◆金峯山寺
住所:吉野郡吉野町吉野山2498
電話番号:0746-32-8371
拝観時間:本堂蔵王堂・塔頭脳天大神龍王院8:30~16:00
拝観料
【通常時】大人800円、中高生600円、小学生400円
【秘仏御本尊特別ご開帳時】大人1,600円、中高生1,200円、小学生800円
鬼が暴れるのは節分じゃない! 2月14日長谷寺(はせでら)の「だだおし」
奈良県桜井市にある長谷寺は686年創建の真言宗豊山派(しんごんしゅうぶざんは)の総本山。「僧侶の息づく寺」や「読経の漂う寺」といわれ、約60名の僧侶が在籍。日々修行に勤め、早朝から夕方まで読経の声が聞こえています。
また、「花の御寺(はなのみてら)」として知られていて、季節折々に花が美しく、中でも、3月下旬の桜、4月から5月にかけて見頃になるぼたんが最も注目されています。
見所たっぷりな長谷寺では、「節分会」ではなく、「修二会」の最終日である2月14日に行われる「だだおし」で鬼を退散させます。赤鬼、青鬼、緑鬼の三匹が登場する勇壮な火祭りで、大松明をもって暴れまわる鬼を追い込み、僧侶の法力を込めた「牛王札(ごおうふだ)」で封じます。そのため、節分会では「福は内」のみで、「鬼は外」のかけ声はしないそうです。ちなみに、大松明は長さ約4.5メートル、重さ約120キロもある巨大なものです。
◆長谷寺
場所:桜井市初瀬731-1
電話:0744-47-7001
入山時間:4月〜9月8:30〜17:00、10月〜11月、3月9:00〜17:00、12月〜2月9:00〜16:30
入山料:大人500円、中・高校生500円、小学生250円
さいごに
今回紹介した寺社以外にも、奈良には鬼がらみ、節分がらみの行事をするところがまだまだたくさんあります。人は昔から春を待ちわびて、鬼という厄を払うための節分行事をしていたのでしょう。そんな思いを感じながら、ぜひ節分時期の奈良を旅してみてくださいね。
















