「ちゃんと旅を考える学校」第1期レポート──旅の概念が揺さぶられた、濃密な“大人の学び舎”
4年間の「旅色LIKES」の活動を通して見えてきたのは、“知っているようで知らない日本の豊かさ” と “大人になってから学ぶことの面白さ”。その気づきをさらに深める場として誕生したのが、「ちゃんと旅を考える学校」です。2025年5月から約2ヶ月間にわたり開校、第一線の実践者から学ぶ全8回の講義は、少人数だからこそ講師との距離が近く、課題に対する個別のフィードバックも充実。大テーマであるアドベンチャートラベルの魅力、地域への貢献のしかたを探りました。
目次
開校──第1期のテーマは「アドベンチャートラベルってなんだ?」
第1回:講師・『ソトコト』編集長指出一正さん「街づくりしている人が、実は一番街を楽しんでいた」6月12日(木)
第2回:講師・俳優山口智子さん「地球を“体感”する旅~風土が育む音の力~」6月14日(土)
第3回:「文章を書いて発信するフィードバックこそが、旅を深掘りできる?」6月19日(木)
第4回、第5回:講師・日本アドベンチャーツーリズム協議会 チーフディレクター 山下真輝さん「アドベンチャートラベルの作り方(講義編・ワークショップ編)」6月25日(水)/7月2日(水)
第7回:講師・星野リゾート代表 星野佳路さん「旅をヤバくする日本の自然観光」7月15日(火)
開校──第1期のテーマは「アドベンチャートラベルってなんだ?」
「地域の本質に触れる旅をしたい」、「仕事として旅に関わっていて、学び直したい」──そんな想いをもつ20代~60代までの39人が渋谷に集まり、第1期がスタートしました。
第1期のテーマは アドベンチャートラベル(AT)。「アクティビティ・自然・文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」と解釈が幅広いため、旅色では「AT=地域貢献できるアクティビティ」と定義しました。旅先の自然・文化について学び、その土地に精通する人々と交流をすることで、楽しみながら地域への貢献ができると考えているからです。この定義のもと各講座で事前課題を設定し、講師陣がここだけのカリキュラムで講義いただきました。
第1回:講師・『ソトコト』編集長指出一正さん「街づくりしている人が、実は一番街を楽しんでいた」6月12日(木)
講座は主に平日19:00~開催
5月22日(木)のオリエンテーション後初となる講義は、地域のプロジェクトに多く携わり、大阪・関西万博日本館の基本構想クリエイターも担当された指出一正さん。
「たまたまおもしろいと思ってやっていたことが、気づいたら社会性を伴ったものになっていた」といった人たちを「関係人口」と名付け、関係人口になることで今までの旅では出会えなかった地域のおもしろい人たちに出会える方法、さらに出会えたからこそ得られる“じわじわくる幸せ”を実例を交えて解説。さらに、指出さんは「ウェルビーイングな未来」を目指されていますが、ATはウェルネスも内包している旅のありかたです。ATの捉え方を知ることで、ATの魅力を深掘りしました。
事前課題は 「旅先での経験を自分の街や好きな地域にフィードバックする方法を考えよう」。
受講生らの案に対して、指出さんはご自身のプロジェクト事例を交えて全員にフィードバックするという贅沢な時間に。
「ラフティングとかアドレナリンがものすごい出るアクティビティとは違うけど、出会いでもアドレナリンは出る。自分の中に変化がもたらされる出会いができたらそれは AT。そういった出会いができるようになるために関係人口の考え方が役立つ」
「外から来た旅人の気づきが、地元では宝になる」
といった言葉に、多くの受講生が強く頷いていました。
第2回:講師・俳優山口智子さん「地球を“体感”する旅~風土が育む音の力~」6月14日(土)
10年かけて世界の美しい音楽文化をライブラリーに収めるプロジェクト『LISTEN.』に取り組まれ、2023年「兼高かおる賞」を受賞した山口智子さん。
事前課題は 「山口さんにアピールしたい、日本の面白さを再発見できる地域」。
講義では、山口さんが旅先で出会った人々や文化、そして音楽への情熱を語り、“地球を体感する” という言葉の意味が静かに広がる時間となりました。
受講生の感想では「人の営みを、相手の気持ちを、自然の摂理を、動物の生態を、それらを知る、理解するということが「旅」の目的になっていると思いました」「山口さんと直接話すことで、自分の町の不思議な伝統や風習も「そういうことだったのか!」と腑に落ちました」という声が寄せられました。
第3回:「文章を書いて発信するフィードバックこそが、旅を深掘りできる?」6月19日(木)
今回は課題をそれぞれ5つにカテゴリ分けし、フィードバックしてもらいました
1回目に引き続き講師に登壇いただいた指出さん。「これまでは記事は憧れの時代だったけど、これからは共感の時代。旅先でもその地域ならではのやりとりや住んでいる人にフォーカスすることが大切」と説く指出さん。実例を交えてその重要性を解説してもらいます。さらに、事前課題「読者の共感を呼ぶ、地元や好きな地域の紹介文を160字で書く」に設定した理由をATの観点も交えながら、雑誌編集長として、文章術・編集術をレクチャーいただきました。
講義では指出さんが「良かったことを脚色せず抽出できるかで、人の幸せ度は変わる」
「撮れ高を期待しない、それを求めるとタスクになってしまう。「アドベンチャー」は、タスクじゃなく、小さな有事と移動。もっと小さい幸せを旅の成果にした方がいい」
など、実践者だからこその言葉を惜しみなく投げかけました。
受講生からは「文章を書くことが、旅を深く味わう行為になるという視点が新鮮だった」という声も。
第4回、第5回:講師・日本アドベンチャーツーリズム協議会 チーフディレクター 山下真輝さん「アドベンチャートラベルの作り方(講義編・ワークショップ編)」6月25日(水)/7月2日(水)
ワークショップでは1人5分目安で課題を共有、その後各班の代表者が発表共有
「トラベル(プラン)の作り方」は、旅色でも大切にしてきたテーマです。
6月25日の事前課題は
「自分が行ったことのある(行きたい)国内観光スポットを紹介する」。
続く7月2日の事前課題は
「好きなエリアで2泊3日のアドベンチャートラベルプランを作る」。
講義では、ATの本質である
・自然・文化への深い理解
・旅の価値をつくる「5つの旅行体験」
・能動体験だけでなく、前段の説明・関心喚起の重要性
などが丁寧に紹介されました。
受講生からは「ATを意識してるつもりは無かったが、旅行プランを作ってみて自分がとても興味を持っている事に気付きました」との声も上がりました。
第6回:講師:旅色編集部「情報発信の効用」7月8日(火)
旅色編集長・播磨が旅行メディアの裏側と“旅を伝える”という行為の本質を学びます。
・情報量は爆発している(各SNSの1分間の投稿量)からこそ、良い文章でも届かなければ存在しないのと同じ。
・SNS・メディアごとに特徴が異なり、媒体によって読み手の欲求が異なる。届け方を変える必要性。
・読まれる文章のポイント(旅色編集部ルール)
など、普段はなかなか知ることのできない編集の現場を覗き見する貴重な講義です。
講義の後半には「3つの記事の“タイトル”を考える」ワークショップ。意見交換の後、班で1つのタイトルに絞ってもらいました。受講生からは「プロでなくとも情報発信の奥深さを知る重要性を学びました」といったアウトプットすることの大切さを再認識した感想が出ました。
そしてこの回を終えた後に出されたのが、
卒業課題「この秋冬おすすめのアドベンチャートラベル(1500〜2500字)」。
2ヶ月の学びを総動員して、ひとつの旅を企画・言語化・可視化する。受講生たちは「旅を書く、写真を撮る」ことの難しさと楽しさを、あらためて体感しました。
第7回:講師・星野リゾート代表 星野佳路さん「旅をヤバくする日本の自然観光」7月15日(火)
事例紹介として「星のや軽井沢」など全国5施設からデュアル配信を行いました
第7回の講師は、日本の観光のトップランナー・星野佳路さん。星野リゾートでは、2019年に西表石垣国立公園内に「西表島ホテル」の運営を始めたところから日本初の「エコツーリズムリゾート」を目指し、ATに含まれるアクティビティを展開しています。そんな星野さんにATの楽しみ方の本質を理解する手立てを教えてもらいました。
事前課題は 「あなたが星野社長に薦めたい自然観光地」。
あえて “星野リゾートがないエリア” を選ぶ、という縛りに受講生たちは
・長崎県 壱岐島 原の辻遺跡探検
・秋田県にかほ市象潟町で鳥海山トレッキング
・北海道中川町で氷の川の雪鳴りを聞く
など、全国各地の自然観光を紹介し、「どのような楽しみ方ができるか」を自分なりに検討して提出しました。
講義では星野さんが、
「各ホテルのアクティビティ開発は、自然保護と活用のバランスを見極めることが肝要」
「「自然観光」の根源はエコツーリズムにも繋がる」
といった核心に迫る話を展開。
ATを観光業として営む難しさと、それだけではない旅がまだたくさん埋もれている可能性を感じる講義に「アドベンチャートラベルへの解像度が上がった」と語る受講生が多数いました。
第8回:講師・写真家 石川直樹「旅して写真を撮ること」7月30日(水)
講座終了後、授業で気になったところを石川さんに質問する場面も
最終回を飾るのは、世界の辺境や自然と向き合い続ける写真家・石川直樹さん。
事前課題は
「地域の文化に触れた体験写真を2〜3枚提出する」。
講義では、石川さんが旅で撮った写真を紹介しながら、
「量に勝る質はない。写真で絵本をつくるように出発から帰宅まで、すべてのプロセスを撮っていくことが大切」
「写真を撮っておくことで一つの旅が複数の旅になる感覚がある」
と語り、受講生たちの写真観がアップデート。
受講生の声──揺さぶられた“旅の価値観”
卒業式では、受講生が作成した旅行プランの優秀賞を発表するプログラムも
講座終了後、受講生からはこんな声が寄せられました。
「この世界こそ、私がずっと浸りたかった世界です」
学びの密度、講師の言葉、仲間との刺激。大人になってから出会えた“本気の学び場”に感動したという声。
「旅の概念が、いい意味で大きく揺さぶられました」
ただの観光ではなく、地域と向き合う旅の視点が育ったという実感。
「仕事に直結するお話で聞きたかったことでした」
観光・地域活性・メディアに携わる参加者からは、知識が仕事に直結したという評価も。
「ちゃんと旅を考える学校」第一期は、旅を“消費”から“共創”へと変えていく、大きな一歩となりました。
旅の学びは、
自然を見る目を変え、
地域を見る姿勢を変え、
文章や写真への向き合い方を変え、
そして自分自身のあり方を変える——。
そんな変化を、受講生一人ひとりが体感した2ヶ月間。第2期以降も、“深く旅する大人”と共に歩む学びの場として進化していく予定です。旅の新しい価値を探求したい方は、ぜひ次の期で体験してみてください。
第1期は修了旅として、北海道・知床エリアにて、石川直樹さんと行く2泊3日のフィールドワークツアーも9月に実施しました。
▽修了旅の詳細はこちら














