【福島】会津西街道 DL大樹で「会津ごころ」と出会う旅
最近寒くなり持っていく服でリュックがかさばるようになりました、旅色LIKESライターの鉄道旅担当・なおです。今回、わたしは福島県会津地方で、この地に住みさまざまな営みをする方たちと交流を深め「会津ごころ」を知る1泊2日の旅に参加しました。2日目には10月25、26日のみ会津地方を走ったイベント列車「DL大樹」にも乗車して、車内でも会津の魅力を満喫します。会津人に宿る「会津ごころ」とは何なのか。旅を通じて探っていきます。
目次
東北の藩士が江戸に通った道、会津西街道
新白河駅はリニューアル工事中。
東北新幹線で東京から約1時間20分。福島県の新白河駅にやってきました。会津地方には何度か来たことがあるのですが、郡山駅からJR磐越西線に乗って会津若松駅に向かっており、新白河駅からのアクセスは初めてです。わたしはツアーバスの利用で、定期のバスは出ていませんが、レンタカーを借りれば新白河駅から会津地方へは約1時間で行くことができ、思ったほど遠くありません。
会津地方は福島県の西部、県の4割ほどの面積を持つ広大なエリアです。今回はそのうち、会津西街道沿いを巡ります。会津西街道は、江戸から日光東照宮まで延びる日光街道の途中、今市(いまいち)宿と会津若松市の鶴ヶ城を結ぶ街道でした。会津藩だけでなく、米沢藩、庄内藩も参勤交代で利用するなど重要な役割を果たします。現在はほぼ同じルートで国道が整備され、鉄道も東武鉄道、野岩(やがん)鉄道、会津鉄道、JR東日本4社によって街道の跡を結んでいます。
田んぼの中の民家を訪ねて南会津の食文化を体験する
最初に訪れたのは、南会津町田島地区の農家・湯田さんのお宅。米づくりの様子を見せてもらい、昼食にお招きいただきました。コシヒカリのほか、宇都宮大学と共同で無農薬で栽培した「ゆうだい21」は2021年に世界最高米に認定されています。田んぼでは稲刈りや、稲を支柱に架けて、天日で自然乾燥させる「はさかけ」など普段できない体験もさせていただきました。
田んぼから帰ったあとはテーブルいっぱいに食事が用意されていました! 玄関先では、えごまと味噌を混ぜた福島伝統の「じゅうねん味噌」を、米をすりつぶして餅状に丸めたものに塗って炭火で焼いた「しんごろう」を焼いてくれています。南会津町に4つある酒蔵の地酒と合わせて、大変なおもてなしを受けました。この地域はかつて宿場町として発展し、遠くからの旅人をもてなしてきた場所。何世代か経ても失われていない会津人の気心に触れた気がしました。
牧場で謎のペットボトルふりふり体験!?
次に訪ねたのは、下郷町(しもごうまち)の金子牧場。ホルスタイン種のほか、乳脂肪分の高い牛乳を生むジャージー牛の飼育や、工場でバターやヨーグルトの生産も行っています。さっそく手渡されたのはジャージー牛乳の入ったペットボトル。これを振るとバターができるそう。ツアーの参加者みんなでペットボトルを振ること約15分。不思議なことに脂肪分が固まってバターができました! 塩も何も入っていない新鮮なバターは、ふわふわで幸せを感じる味でした。
バターをいただいた後、牛に会いに行きました。金子牧場では約80頭の牛を飼育しています。東日本大震災発生後から福島の子どもたちのために牛とのふれあい体験やバター、チーズづくりの体験を受け入れてきました。ご自身で周辺のサイクリングロードを作るなど観光開発も地道に行われています。周辺には観音沼や日暮(ひぐらし)の滝などトレッキングに最適です。
今が旬! 会津藩士の魂の宿るりんご「緋の衣」をジュースでいただく
南会津町の白井康友さんが運営するしらい農園に伺いました。ここでは「ふじ」をはじめ、「王林」や「ジョナゴールド」、会津特産「あいづのほっぺ」など数々の品種を栽培しており、バラエティに富んだりんご狩りを楽しむことができます。食べ比べると甘さや酸味、実の固さなどそれぞれの特徴がよくわかりました。白井さんは幻の品種「緋の衣」の生産にも取り組んでいます。「緋の衣」は戊辰戦争で新政府軍に敗れた会津藩士が明治時代に流された北海道余市町で収穫に成功したりんごです。1863年に孝明天皇に謁見した会津藩主が、天皇より賜った「純緋の御衣」にちなんで「緋の衣」と命名しました。白井さんは余市町で1軒だけ生産を続ける吉田農園から苗木を譲り受け、苦労の末収穫に結び付けました。昔の品種で品質が不ぞろいなためジュースや菓子にすることが多いそうで、今回はジュースでいただきます。甘いですがくどくなく、ほど良い酸味ですっきりとした味わい。会津藩士が精魂こめて栽培したりんごが120年の時を経て会津で実を結ぶ。心折れることなく見知らぬ地で生き抜いた会津藩士、そして苦労に耐えて実を結ばせた白井さんの魂に「会津ごころ」を感じました。
はちみつ専門店直営のイタリアレストランで夕食を
会津若松市内のはちみつ専門店「Boutique del miele(ブティック・デルミエーレ)」は、創業80年以上の松本養蜂総本場が営むはちみつ専門店。10以上の異なる花から採れたはちみつを常時用意しており、はちみつコンシェルジュが商品の説明をしてくれます。これまではちみつは、アカシアやれんげの花から採れたものくらいしか知りませんでした。こちらでは栃の木や菩提樹、藤、そばなど初めて聞く種類のはちみつを販売しています。
◆Boutique del miele
住所:福島県会津若松市柳原町4丁目10-47
電話:0120-144-832
営業時間 :10:00~17:00
定休日:無
アクセス:JR磐越西線会津若松駅から車で約11分
松本養蜂総本場が運営する「b kitchen」は、夕方までの営業です。会津産の有機野菜や福島牛など自慢の地元の食材を使ったイタリア料理をいただきます。代表取締役の松本さんは、イタリアで長年過ごし、東日本大震災後に風評被害などで経営が芳しくなかった家業を継ぐために帰国。一から養蜂を学び、はちみつを採る大変さを味わい、また蜂蜜の世界の奥深さを知りました。夜明け前から仕事が始まり、蜂の越冬のために冬は房総まで蜂を運ぶ。これだけの苦労をして生産するものが廉価で売られていてはもったいない、と高級化に努めるとともに、味わい方も発信していくために「b kitchen」を始めたそうです。
◆B kitchen
住所:福島県会津若松市柳原町4丁目10-47
電話:0242-26-2515
営業時間:10:00~17:00(LO16:00)
定休日:水・木曜日
アクセス:JR磐越西線会津若松駅から車で約11分
「ヒューマンハブ天寧寺倉庫」で会津の伝統産業を学ぶ
翌朝、会津若松市郊外の東山温泉近くにある「ヒューマンハブ天寧寺倉庫」を訪ねます。漆塗りや徽章製造、空間デザインなどしている株式会社関美工堂は、旧本社・工場をリノベーションし、カフェや会津の工芸品のショップ、シェア工房、シェアキッチン、シェアオフィスが備わった施設を作りました。会津塗には興味あるけれど工具が整えられないなど、若手育成の課題を解決するため誰でも使える工房です。集った人同士の交流で、イノベーションが生まれています。地元の産業を持続させ、さらに発展させたい、関さんの情熱を感じました。
◆ヒューマンハブ天寧寺倉庫
住所:福島県会津若松市天寧寺町7-38
営業時間:ストア10:00-17:00、カフェ 11:00-17:00、コワーキング・シェアキッチン ・シェア工房は24時間利用可能
定休日:年中無休(年末年始除く)、コワーキング・シェアキッチン ・シェア工房は無休
アクセス:JR磐越西線会津若松駅から車で約10分
観光列車「DL大樹」で会津西街道を下る
いよいよ会津を離れるときが来ました。会津若松駅から栃木県の新今市駅まで、観光列車「DL大樹」に乗ります。普段、新今市駅と鬼怒川温泉駅、東武日光駅間を走る「SL大樹」が、10月25日、26日の2日間だけ牽引車をディーゼルカー(DL)に変えて会津若松駅まで延長運転されました。会津若松駅ではお見送り隊が待機していて歓迎ムードが最高潮に達しています。
わたしたちを乗せて走るDL大樹はこちら。機関車、客車はいずれもかつて国鉄、JR東日本やJR四国で活躍したのち東武鉄道に譲渡されたものです。全国の鉄道でも今はほとんど見ることができなくなった固定式のボックスシートがオールド鉄道ファンの旅愁を誘います。展望車は柵のみの構造なので、走行時の心地よい風も、トンネル内の冷気もそのまま感じることができます。但し、SL走行時は煤で汚れることもあるので注意が必要です。今日は車内でも途中の停車駅でも「会津ごころ」を感じるイベントが行われるというので楽しみです。
会津若松駅を出発して約40分で芦ノ牧温泉駅に到着しました。その名の通り芦ノ牧温泉の最寄り駅で、「さくら」という猫駅長がいます。不定期出勤のため、さくらに会うことはできず残念でしたが、さくらの写真入りの記念入場券を手売りで販売していました。停車中の約5分で完売。今回停車時間がわずかでしたが次は下車して温泉に行きたいです。
下郷町の湯野上温泉駅では約10分停車。昨日食べたしんごろうがモチーフのゆるキャラ「しもごろう」や、南会津町田島地区の祇園祭で行われる花嫁行列の花嫁に扮した女性に出迎えてもらいました。茅葺き屋根の駅のすぐ近くには足湯があって、列車を待つ時間を足湯で過ごすことができます。また、ねぎそばで有名な大内宿はここからバスでアクセスすることが可能です。
湯野上温泉駅前後では何度か阿賀川(大川)を渡り、車窓からは秋色に染まりつつあるダイナミックな景色を望むことできます。湯野上温泉の近くには川の流れにより地層のうち軟岩部のみ削られて特異な形となった「塔のへつり」。駅からも徒歩で行けるところにあるので、秋は紅葉見物に多くの観光客が集まります。
会津田島駅では1時間45分ほど停車。あいにくの雨模様でしたが、創作太鼓、会津田島太鼓の演奏が行われ、DL大樹で訪れた私たちを華々しく出迎えてくれます。駅前広場ではマルシェも開かれており、鮎の塩焼きや名物のくじら汁、南会津町の4つの蔵元の地酒飲み比べセットも販売していました。長い時間の停車でしたがツアーの参加者と食事を取りながら歓談して楽しい時があっという間に過ぎていきます。
旅はいよいよクライマックスへ
会津田島駅を出たDL大樹は再び終点下今市駅に向かって走ります。会津高原尾瀬口駅で会津鉄道が終わり、野岩鉄道となります。いくつかのトンネルを抜ければそこはもう栃木県。会津とはお別れです。ただ栃木県に入っても会津のおもてなしは続き、トマトの栽培が盛んな南会津町の南郷トマトを使ったクラフトビール「Two Mate」や、赤べこと並ぶ会津の郷土玩具「起き上がり小法師」をプレゼントしていただきました。
途中、新藤原駅で野岩鉄道から東武鉄道に入り、日本を代表する大温泉街、鬼怒川温泉を横に見つつ終点、下今市駅に到着しました。10:06に会津若松駅を出発して下今市駅到着は16:11、乗車時間は6時間以上。途中停車駅でのイベントなど仕掛けたっぷりの楽しい鉄道旅でした。
おわりに
ツアー中、「会津ごころ」を綴ったカードを贈られました。
会津の方たちとの温かいおもてなしが印象的な1泊2日。旅人を温かく迎え、誠実で人を思いやる心に溢れた人たち。その人たち全てが会津を愛し、会津の伝統文化に誇りをもって一人ひとりがその文化を次の世代につなごうと役割を果たしていました。触れ合うたびに「会津ごころ」を感じられる暖かい心を感じられる場所。会津をぜひ訪れてみてください。














