【吉祥寺】旅好きにおすすめ! 「手織り工房Jota」で「さをり織り」体験
こんにちは。ゆるりとしながら文化を感じる旅が好きなLIKESライター・じゅんです。旅に出てこんな経験はありませんか? 始めはドキドキしていたのが、いつの間にかワクワクして夢中になっていること。時には非日常的な景色が、感性に触れて新しい発見をしたこと。そんな旅とそっくりな体験が織物を通してできるのが、日本生まれの「さをり織り」。なぜ旅好きな人におすすめなのか、歴史や作業工程などとともにレポートします。
目次
失敗がない「さをり織り」とは?
さをり織りの織機は木を使用したシンプルな構造
日本には、全国各地に歴史と文化から生まれた伝統的な織物がいくつもあります。職人技が受け継がれる一方で、機械化が進み大量生産が進んだ日本の織物は、世界的にも有名で高い評価を受けていました。世界文化遺産にも指定されている富岡製糸場や鹿児島紡績所跡は、織物が日本の近代化にも深くかかわっていた証です。そんなバックグラウンドと比べたら「さをり織り」の歴史はまだまだ浅いもの。織機は昔話の『鶴の恩返し』にでてくるような木製で、織るための規則や技術は全く必要ありません。どんな織物よりも簡単で誰でも織ることができるのに、表現力は無限大なんです!
工房に飾られている、城みさをさんが描かれている絵
「さをり織り」創立者、城 みさをさんのエピソード。自分が織った帯の縦糸(※1)が一本抜けていたことで「キズ物」と言われてしまいました。しかし、これを個性と捉えたみさをさんは縦糸をもっと抜いてみたり、自分の感性のまま好きなように織ってみたりすることに。そうして織り上げた反物への反応は一転、驚くほどの高評価を受け、呉服屋で取扱われたそう。「誰でも好きなように織れば、自分らしい良い物が織れる」と感じたみさをさん。自分が持っている感性を織物で表現する面白さを、もっとみんなに知ってもらいたいと考えるようになりました。こうして1969年に始まったのが「さをり織り」です。長い間受け継がれてきた織物文化に「誰もが自由に個性を織る」という斬新な風を吹き込み、多くの人に親しまれ広がっていきました。
※1縦糸:織物で帯を織る際に、縦方向に通される糸のこと。帯の骨格となる部分であり、緯糸(横方向に通される糸)と組み合わさることで帯の生地が作られている。
工房の壁に掛けられている"さをり四つのねがい"
"さをり四つのねがい"とは、「差を織る」という意味が込められている「さをり織り」のスローガン。一つひとつ想像してみると「布を織るのではなく自分を織る」という、感性を大切にするみさをさんの想いが伝わってきます。「さをり織り」は人それぞれの差が個性となり、自分だけの作品が出来上がる織物。それが魅力でもあり、目的でもあるのです。今では国内だけでなく世界的にも「SAORI weaving」と呼ばれ、年齢・性別・障害の有無にとらわれないダイバーシティ(多様性)な日本の織物として注目されています。
非日常の入口! 井の頭公園を抜けて「手織工房Jota」へ
工房は吉祥寺駅から徒歩約10分。賑やかな駅前から離れ、井の頭公園の中に入るとたちまち緑に囲まれた散歩道に変わります。家族連れや犬の散歩をしている人、ジョギングをする人など穏やかな時間を感じる園内。途中、池に映る神秘的な弁財天を通り過ぎ公園を抜けるとひっそりと佇む建物が見えてくるのが、白い壁と大きな窓が印象的な「手織工房Jota」です。
工房に入ると、両側の壁には色とりどりの糸が並び、大きな窓から木漏れ日が差し込んでいます。そんな自然の温もりを感じる心地良い室内には木製の織機が並べられています。数えきれないほどの糸に囲まれるなか、BGMは織機の音だけ。一歩入るだけで非日常的な時間に浸れます。スタッフの方から「さをり織り」の特徴と「もし考えてきた構造があったら、それは忘れて感じるままに好きな糸で織って下さい」というアドバイスをもらい、体験スタートです。
一期一会の糸に夢中。感性のままに織るカシミヤ体験
今回は冬に備えてカシミヤのマフラーコースを体験。織機には青や赤、白やグレーなどさまざまな色がベースとなった縦糸が張られています。早速、自分の感性に従い、好みの縦糸が張られている織機を選択。スタッフの方から織機の使い方やボビン糸(※2)の巻き方などを教えてもらい、次は横糸選び。今回はカシミヤ以外にも工房内にあるウールやコットン、化繊なども自由に選ぶことができました。目の前にあるカラフルでずらりと並ぶ糸を自分で好きなように選ぶ。ただそれだけでもワクワクしてきます。
※2ボビン糸:ミシンの下糸として使用される、糸を巻いた糸巻きのこと。
選んだ糸はボビン(※3)にくるくると巻き取ってからシャトルという木の舟形に入れます。縦糸にシャトルを横に滑らせ横糸を通し、正面のバーを手前へ引く。横糸が程よく縦糸に押し込まれたら、足元のべダルを踏みかえてまたシャトルを横に滑らせる。この繰り返しで織り続けます。単純作業なのに飽きるどころか、「あんな色いれてみたい」とひらめいたり、同じ色をひたすら織りたくなったり、といろんなアイディアがどんどんわいてきます。ボビン糸を巻くときも、ときには2色の糸を巻き……、と、思いつくままに織り続けます。余り糸などの不揃いな残糸(ざんし)も織り込んでみるとワンポイントになり、思いがけないかけ合わせがさらに面白さを掻き立てます。そんな糸との一期一会の出会い夢中になっていると、いつの間にか3時間くらい経っていてビックリ。私、こんなに集中力あったんだ (笑)。体験中は休憩するのも、途中でランチに行ったりするのも、気晴らしで周辺に散歩へ行くのも全て自由です。
※3ボビン:糸や電線、ケーブルなどを巻き付けるための筒状の道具。
今回の体験ではマフラーを最長2メートルまで織れます。織機から縦糸を緩め全体の状況を確認しながら、自分の好みの長さまで織りあげます。休憩をしながら約6時間。織り終えたところでスタッフの方が縦糸を切って全体を見せてくれました。「何度織っても自分のイメージとは違うものができる」というスタッフの方の言う通り、自分が想像していたものとは違う風合いに。でも鏡の前で首に巻いてみると、持っている洋服には合いそうな色合いです。横糸が緩んでしまった部分に自分らしさを感じたり、一方で、普段ならしない配色が新しい自分らしさを発見したり。集中していた時間から解放され、気持ちもスッキリ。頭を空っぽにして自分自身と向き合いながら、織物で表現することがこんなに楽しいとは。「さをり織り」の魅力を実感しました。
最後に縮絨(しゅくじゅう)をして完成。縮絨とは、編み上げた繊維を洗うことで縮めて絡ませる作業。その後、両端の房の処理や縮絨の作業の説明を受けて終了です。
仕上げは躊躇せず大胆に洗濯機で洗う
縮絨は自宅に持ち帰ってから行います。作業前に、まずは端の糸がほどけてしまわないように縦糸を切った部分の房の処理から始めます。雑誌等の重しを載せて房の部分を結ぶのですが、玉止めや三つ編み、ツイストなどの方法はさまざま。ここも感性でツイストに決め、ひたすら糸の束ねじり、両側をやっと結び終えた時はちょっとした達成感がありました。
何時間もかけて織ったマフラーを洗濯機でネットなしで洗う作業はちょっとだけ勇気がいりますが、おしゃれ着洗いの洗剤を少し入れ、約30分ガラガラと洗濯機で洗ったあとに軽く脱水。そっと蓋を開けてみると、あからさまに縮んだ様子もなく少しモフっとしたマフラー。濡れていても手触りはふんわりと柔らかさを感じるカシミヤマフラーに変身しました! 房の部分はマッチ棒に火が付いたようなフワっと暖かさのある風合いに。手のひらで形を整えながら、風通しの良い所で日陰干しをして出来上がりです。
さいごに
私が旅好きな人に「さをり織り」をおすすめしたい理由。それは旅で感じる面白さと同じものがあるから。旅の行き先を決めるのも糸を選ぶのもワクワクがあって、旅に出ている時(織っている時)は、自由気ままにとにかく楽しむ。旅での失敗が後から笑い話になるなら、織物の失敗は風合いにてなって個性となる。そしてどちらも充実感で心が満みたされるところ。旅も「さをり織り」も感性を大切にするからこそ楽しめる。そんな発見があった今回の体験。自分自身と見つめる旅に出るように「さをり織り」を体験してみませんか?
◆手織工房Jota 吉祥寺工房(本店)
住所:三鷹市井の頭5-17-29
電話:0422-27-2595
営業時間:10:00~17:00
定休日:月曜日、第1日曜日、祝日
※カシミヤでの体験は10月〜12月の期間限定

















