東北で紅葉を見るなら石川町へ! 知られざる福島の郷で見つけた豊かな時間
福島県といえば、福島市? 会津? それとも、いわき? いえいえ、石川町です。パッと名前が挙がるような場所ではありませんが、甲子園の常連校「学法石川(学校法人石川高等学校)」と聞けば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。桜の名所として春に賑わう石川町ですが、秋から冬が穴場のシーズン。紅葉に染まる山々を眺めながら、名湯・母畑温泉に浸かれば芯から温まる贅沢な時間が待っています。今回は、旅色LIKESライターのさっちもが、石川町の親戚を訪ねた後に、せっかくなので家族水入らずの1泊旅をしてきました。見慣れた町の景色も、歴史や文化を知ると、まるで初めて訪れたような新鮮な感動に変わりました。
目次
温泉と桜が癒す石川町
石川町は、福島県の中通り南部、阿武隈高地の西側に位置し、母畑(ぼばた)、猫啼(ねこなき)などの温泉郷を有する町です。JR水郡線が南北に走り、福島空港から車で約20分とアクセスも抜群。町の中心部を流れる北須川と、今出川沿いには約2,000本の桜が植えられ、春には多くの観光客で賑わいます。樹齢500年以上の「石川の高田桜」や、町内全域に桜の巨木が多く見られることから、¨桜の町¨として親しまれています。1967(昭和42)年には、大相撲の巡業が開催され、当時使われた土俵が、地元の石川小学校に移設されていたことや、母畑温泉に力士たちが湯治に訪れるなど、相撲との縁も深い町です。
「石川町立歴史民俗資料館イシニクル」で、石川町の歴史に触れる
「石川町立歴史民俗資料館イシニクル」は、1974(昭和49)年に、町民の教育、学術、文化の発展を目的として設立された歴史民俗資料館です。2024年4月に移転オープンし、新たな資料館では、石川町の原始、古代から近代までの歴史や、民俗資料、国内外の鉱物標本を展示しています。
石川町は、岐阜県苗木(なえぎ)地方、滋賀県田上(たなかみ)地方と共に、「日本三大ペグマタイト鉱物の産地」といわれています。ペグマタイトは、大きな結晶からなる花崗岩の一種。なかでも石川町のペグマタイト鉱物は、苗木、田上と比べて結晶が大きいのが特徴です。石川町の産出鉱物は約130種あり、そのうちペグマタイトからは約80種の鉱物が見つかっています。特殊な石英、長石、サマルスキー石などの希少鉱物が産出され、明治から昭和40年代にかけて鉱石採掘が町の主要産業でした。石の標本を見ていると、「石英、長石って中学の時に習ったよなぁ」と、当時、理科が得意科目だったことを思い出して、わくわくしてきました。のどかな田園風景の裏に、ダイナミックな大地の歴史が隠れていたことを知り、石川町の魅力を再発見。知的好奇心をくすぐるイシニクルに、ぜひ足を運んでみてください。
◆石川町立歴史民俗資料館イシニクル
住所:福島県石川郡石川町長久保96
電話:0247-26-3768
開館時間:9:00~17:00(最終入館 16:30)
休館日:月曜日 ※祝日の場合は翌平日、12月28日~1月4日
入館料:一般・学生 300円、小中学生 150円
石川町グルメは、峰清館の「海老丼」に決まり!
ランチで訪れた「峰清館(ほうせいかん)」は、石川町の中心部にある老舗食堂です。店内はテーブル席と座敷の個室があり、子連れでもゆっくり楽しめます。
メニューは、海老やとんかつを軸にした12種類。なかでも丼からはみ出るほど大きな海老天が2尾のった「海老丼」が一番人気です。ほのかに甘みを感じるサクサクの衣とプリプリの海老は、甘さ控えめのタレとの相性が抜群。通常の海老丼でも十分お腹が満たされますが、ガッツリ食べたいなら「海老3尾丼」がおすすめです。ご飯をすっぽり隠す大きな海老天は迫力満点。
◆峰清館
住所:福島県石川郡石川町新町92
電話:0247-26-1115
営業時間:11:00~14:00、17:00~19:00
定休日:不定休
伝統と格式のある温泉旅館・八幡屋に宿泊
1880(明治13)年に創業した八幡屋は、3日入れば効能を実感できる「母畑温泉の三日湯」のいい伝えがあり、町民に長く親しまれてきました。1975(昭和50)年ころからは、筋肉痛や関節痛の治療に最適と力士たちの間で評判となり、お忍びで訪れる隠れた名所でもあります。
館内は、吹き抜けの天井で優雅に回る風車と、豪華絢爛な浮き舞台が織りなす幻想的な空間。見上げれば荘厳な美しさに心を奪われ、見下ろせば細部にまでこだわった装飾が目を楽しませます。また、「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」のモデルなのでは? とファンの間で話題になり、独特な世界観を体感しようと訪れる方が増えているそうです。私の家族もその1人。浮き舞台の周りを、さまざまな角度から撮影していました。
温泉は、本館に大浴場と露天風呂、別館「帰郷邸(ききょうてい)」には、展望大露天風呂と4つの貸切風呂を備えています。女性用の露天風呂には自然石をくりぬいた大小3つの石風呂があり、それぞれ湯温が異なるため、自分の好みに合わせた湯船を楽しめます。泉質はアルカリ性単純温泉で、滑らかでとろりとしたお湯が肌に優しく、温浴効果で入浴後も体はポカポカ。「3日入れば効能を実感できる」といわれる八幡屋の温泉ですが、1日だけでも首のコリがやわらぎ、すっきりとした感覚がありました。かつて力士たちが関節痛や怪我の治療のため、ひそかに湯治に訪れていたという話も、この心地よい効能を体感すると納得できます。
夜の露天風呂は、オレンジ色の温かな灯りに照らされ、虫の声や山の緑の香りに包まれながら、心身ともに深い癒しを感じられるひとときでした。
夕食は、阿武隈の厳選された山海の食材を使用した会席料理です。お造りや鮑の焼き物、和牛のしゃぶしゃぶなど、素材の持ち味を生かした料理が彩り豊かに並びます。なかでも印象的だったのは、しゃぶしゃぶに合わせる特製ごまだれです。濃厚で香ばしいごまの風味が際立ち、出汁を加えて最後の一滴まで飲み干したくなる深い味わいに、すっかり魅了されました。
朝食は、和洋折衷のバイキングで、旬の野菜を取り入れた体に優しい総菜が約40品並びます。新鮮なマグロのぶつやイカソーメンなど、海の幸も充実していて、刺身好きには最高の朝食。カニや魚のアラを使用した郷土料理の「ざっぱ汁」で体を温めれば、心地よく1日をスタートできますよ。
◆八幡屋
住所:福島県石川郡石川町母畑樋田75-1
電話:0247-26-3131
おわりに
子どもの頃は、夏休みか冬休みに訪れていた石川町。いつも見ていた町が、地質を通じて町の歴史を深く学ぶことで、見え方が変わる面白さを知った旅となりました。紅葉の穴場スポットでもある石川町。11月末頃に見ごろを迎えるそうです。ぜひ訪れてみてください。

















