川越の自然と日本酒に癒される! グリーンツーリズム体験記
普段は相撲旅で全国を巡る旅色LIKESライターのさっちもが、埼玉県川越市で、2025年10月4日に行われた「川越の日本酒体験」に参加してきました。酒米の稲刈り体験と、小江戸黒豚のバーベキュー、川越の日本酒「鏡山」を通してグリーンツーリズムを体験するイベントです。近年、都市部で暮らす人たちが、自然豊かな農村や漁村に滞在し、地元の人と交流するグリーンツーリズムが注目されています。都市部から日帰りで行ける街で体験したレポートをお届けします。
目次
食・体験・買い物すべてが揃う「川越市グリーンツーリズム拠点施設」
JR川越駅からバスで移動すること約20分。車窓からの景色は、賑やかな駅前の雰囲気や小江戸の情緒あふれる街並みから、徐々に秋の訪れを感じる田園風景へと変わります。今回やってきたのは、川越市グリーンツーリズム拠点施設。ここでは、農業体験や収穫した果物を使ったお菓子作り、川越のブランド豚を使用したバーベキューなど、多彩なプログラムを通じて地元の人々の暮らしと文化に触れることができます。都心から電車で約1時間弱とアクセス良好で、忙しい日常を忘れて自然を楽しみたい方に最適です。体験に必要な道具がすべて揃っているので、初心者でも気軽に参加できます。
館内には、スペシャルティコーヒーを提供するカフェ「glin coffee」があり、バリスタが一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーの深い味わいと豊かな香りが絶品です。
◆glin coffee伊佐沼グリーンツーリズム店
住所:埼玉県川越市伊佐沼887
電話:049-202-2008
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日
良質なお酒の源・酒米の収穫体験に挑戦
施設からあるくこと約5分、酒米「さけ武蔵」の田んぼに移動してきました。これから、この日集まった13名と協力して25メートルプール1レーン分ほどの収穫体験が始まります。稲穂がサワサワと揺れ、「早く刈り取って! 」と、私たちを手招きしているようでした。
黄金色の稲を鎌で刈り取り、藁の紐で束ねる作業は思っていた以上に重労働でした。完全にしゃがみ込んで稲刈りをすると、力が入らず上手に刈り取れません。両足をしっかりと開き、腰を低くして、稲の根元をしっかり掴むと一気に刈り取れます。普段は、ウォーキング程度の運動しかしないので、10分もすると額から流れた汗が土に滴り落ちていました。なかなか体に堪える作業でしたが、稲を刈り取った後の田んぼを眺めると、爽快感と達成感で心は晴れ晴れ! 「自然に触れてリフレッシュ」という、グリーンツーリズムの醍醐味を味わうことができました。
生産者に教わる酒米「さけ武蔵」
酒米「さけ武蔵」は、2004(平成16)年に埼玉県で誕生しました。酒米「若水(わかみず)」と「改良八反流(かいりょうはったんながれ)」を交配し、約12年かけて改良を重ねた品種です。大粒で、「心白(しんぱく)」とよばれる米粒の中心に円形の白い不透明な部分があるのが特徴。
山田英夫さん。作ったお米を皇居に献上したこともある。
生産者の山田さんにお話を聞くと、酒米作りは、天候に大きく左右され、猛暑や日照不足で収穫量が激減してしまうことも珍しくないとのこと。ある年は、猛暑と日照不足に加え、カメムシの被害も重なり、収穫量が例年の半分にまで落ち込んだこともあったそうです。常に課題と隣り合わせの酒米作りですが、蔵元に高品質な酒米を供給するために、害虫対策の薬剤散布は最小限に抑え、土壌管理を徹底し、弛まぬ努力を重ねています。「俺の作った米が酒になって、それも飲めたら、こんな幸せなことはないんじゃないか。健康でいられる限り『さけ武蔵』を作り続けたい」と語る山田さん。ご自身でも「素敵」という日本酒をつくり、伊佐沼農産物直売所で限定販売しています。山田さんの情熱に心を動かされました。
川越の誇り「鏡山」の復活物語
小江戸鏡山酒造株式会社の五十嵐昭洋(あきひろ)社長。
酒米「さけ武蔵」は、川越市にある唯一の酒蔵・小江戸鏡山酒造で使われ、「鏡山」という日本酒となります。小江戸鏡山酒造株式会社は、2007(平成19)年に創業しました。元々は1875(明治8)年に創立された酒蔵ですが、日本酒の消費量の減少と後継者不足のあおりを受けて、2000(平成12)年に惜しまれつつ廃業。その後、再興を望む行政や市民の声に応え、五十嵐社長を中心に川越市で伝統的な酒造りが復活しました。
現在、小江戸鏡山酒造株式会社の蔵人の平均年齢は29歳、杜氏の年齢は30歳と、若い力が伝統ある「鏡山」の酒造りを支えています。2019(令和元)年には、「さけ武蔵」を使用した大吟醸「鏡山 斗瓶取り雫酒(とびんどりしずくざけ)」が、全国新酒鑑評会で業界初となる金賞を受賞しました。専門的な話も、酒造りの苦労も、終始笑顔で親しみやすく語る五十嵐社長でしたが、「山田錦※1を使用した埼玉の日本酒で鑑評会に出品しても、山田錦はMade in兵庫。地元産の『さけ武蔵』でMade in 川越の酒を造りたかったんです」と話す瞳には、強い信念が宿っていました。
「鏡山」は川越の特産品が集まる「小江戸蔵里」で、購入・試飲ができるほか、オンラインショップでの購入が可能です。
※1 酒米の品種のひとつ。「酒米の王」ともいわれ、全国新酒鑑評会では山田錦を使用した日本酒が上位を占める。
「鏡山」と川越のブランド豚「小江戸黒豚」で至福のバーベキュー
「鏡山」に合わせるのは、川越市のブランド豚「小江戸黒豚」です。今回はバーベキューをしながら、5種類の「鏡山」をいただきました。大吟醸、純米大吟醸、純米酒、フランス産ワインの酵母を使用した純米酒、そして未発売の貴重な日本酒が振る舞われると、会場は和やかな雰囲気に。稲刈りで汗を流した後の最高のご褒美が、心地よい余韻を残しました。
日本酒といえば透明なイメージがありますが、「鏡山」は少し濁っていたり、ほのかに黄色みを帯びていたりします。通常の酒造りで行われる「炭素ろ過」という脱色工程を省いているためなのだそう。これにより、酒本来の味わいを損なわず、見た目でも違いを楽しめます。私が特に気に入った「鏡山 斗瓶取り雫酒」は、淡い月明かりのような、かすかに白濁した色合。白桃やマスカットを思わせる爽やかな香りが特徴で、上品で柔らかな口当たりが日本酒初心者でも飲みやすく、ついおかわりしたくなるおいしさでした。同じ日本酒でも、温度が5度変わるだけで味わいが異なるそうです。冷や、常温、熱燗など温度を変えて、自分好みの日本酒を見つける楽しみは、きっと特別な体験になりますよ。
おわりに
「鏡山」を通して、酒米を作る生産者や小江戸鏡山酒造の復活を願う町の人の思いから歴史に触れ、収穫やバーベキューもすることで街の魅力を存分に感じることができました。グリーンツーリズムという旅の形は、街の魅力を深掘りする旅にピッタリです。都市から少し足を伸ばして、リフレッシュついでにその街の魅力にもハマってみませんか。
◆川越市グリーンツーリズム拠点施設
住所:埼玉県川越市伊佐沼887
電話:049-226-6551
営業時間:農業ふれあいセンター9:00〜21:00、体験農園・緑地広場9:00~17:00、大屋根広場(バーベキュー場)10:00~18:00
休館日:月曜日 ※祝日の場合は翌日















