【ツアーレポート】写真家・石川直樹さんと旅した知床で発見。“一期一会”を見つけることで撮影できる「いい写真」
9月21日(日)~23日(火)の2泊3日で開催された、「ちゃんと旅を考える学校 修了旅 in 北海道知床」。この旅では学校の第一期のテーマ・アドベンチャートラベルを体感するだけでなく、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら作品を発表しつづけている石川直樹さんと写真を撮りに出かけることも目的でした。世界的に活躍されている石川さんに、「写真とは」ということを基軸に、参加者たちが3日間で撮った写真を振り返りながらお話を伺いました。
目次
“自分がいいと思ったら、いい写真なんじゃないですか”。写真を「作品」として撮る石川さんだからこそ語る、写真撮影の醍醐味
大荒れの天気のなか終了した初日の夜、石川さんが参加者に向けて語ったのは「写真とは」という基本的で深いテーマについてでした。参加者に強く伝えていたのは、カメラの扱い方や技術や構図などではなく、“自分がいいと思ったものを撮る”ということです。
「僕は自分が撮りたいと思ったものを撮る『写真作家』です。誰かにおもねったりもしないし、忖度もしない。旅をしているなかで、体が反応したものをそのまま撮っています。みなさんも、何を撮ろうが、自分の思いが込もっていればOKです」
被写体だけでなく、機材も自分に合うものであれば一眼レフでも、デジカメでも、スマートフォンでも、なんでもいいとのこと。ただ、それぞれ撮れる写真が異なるため、いま撮っている写真がしっくりこないのであれば、カメラを変えてみればいい、と教えてくれました。
そんな重要な前置きを経て、一日目に参加者が撮った写真を見た石川さんのコメントを一部紹介します。
K.Kさん撮影
「スマホで撮るとデフォルトが縦位置なので、今は縦で撮る人が多いですよね。横よりも、縦のほうが構図が際立ちます。この2枚は水平・垂直もはっきりしていて、より分かりやすいです」
M.Tさん撮影
「3枚セットで今日という日がよくわかり、ストーリー性がありますね。1枚目の写真は雨そのものではなく、ガラスについた雨粒を写すことで天候を想起させるのが、いいですね」
M.Sさん撮影
「対照的な2枚になっていますね。1枚目は揺れているバスの車内で撮っているのに写っているものの水平と垂直が保たれていて、落ち着いた印象もありつつ、動きもあります。曇り空や荒れた海をフロントガラス越しに撮影することで、内と外の違いがはっきり写っていていいですね」
N.Kさん撮影
「2枚目の写真右側に、ガイドさんの手元が写っているのがいいですね。静止画だけど旅の動きが伝わってきて、雰囲気もわかります」
K.Sさん撮影
「ガラスの反射でしょうか。両側に魚が写っているのがいいですね。カメラと鏡は写真を撮る上で切っても切れない関係性があります。一眼レフにはレンズを通った光を光学ファインダーに導くための鏡があり、一方、ミラーレスカメラにはそれがない。写真と鏡の関係性というのは、いろいろな意味で面白いテーマです」
H.Aさん撮影
「クリオネのように動く生き物や、暗い部屋の中で撮影するときはピントが合わせづらいものですが、焦らずタイミングを待って、自然光を活かしていていいですね」
H.Kさん撮影
「荒れた海の水平線を斜めにすることで動きが出ています。雲の形がはっきり写っていて、下の方の波がブレている感じに写っているのも臨場感がありますね」
M.Mさん撮影
「撮りなれていますね。1・2枚目はF値を開放気味に設定することで、一か所に焦点が合って、まわりがぼけています。これは一眼レフならでは。5枚目は四方を少し暗くしていることで、人物が浮かび上がってきていて、雰囲気のあるポートレートになっています」
※F値(えふち):カメラのレンズが取り込む光の量を数値で表す値であり、レンズの明るさや写真の背景のボケ具合に影響する。F値を小さくすると、レンズが大きく開き光が多く入るため、背景が大きくぼけた写真になる。逆にF値を大きくすると、レンズが絞られ光が少なくなるため、背景もピントが合ったようにくっきり写りやすくなる。
W.Sさん撮影
「二枚目の足元に敷き詰められた木材チップの写真。ずっと正面を見ているのではなく、顔を上げたり下げたりしていて、いいです。美しい風景だけでなく、自分がピンときたものを撮っていることが伝わってきます」
最初に石川さんが語った通り、大事なのは「自分にとって何がおもしろいか」。それによって垂直を保ってみたり、あえて斜めにしてみたり、目線も変えてみたり……。写真に正解がないことを参加者全員で嚙み締めました。
「一期一会」の写真を撮るおもしろさと、「自分ズーム」で映せる被写体との“心の距離感”
石川さんがツアー中に使われていたフィルムカメラ(Mamiya7Ⅱ)
「自分に合うのであれば、機材ななんでも」と冒頭に語った石川さんは、これまでほとんどすべての作品をフィルムカメラで撮ってきました。
「ぼくが使っているフィルムは、『KODAK PORTRA』で、ぼくのカメラでは1本で10枚しか撮れないので、一期一会の出会いがきちんと写る感覚があります。いまはAIで本物らしい画像が作れてしまいますが、8,000メートル峰の登山でもなんでも、自分が意図しないものが写ってくるのが面白いんです」
また、フィルムカメラで撮る写真は、薬品による化学反応で像が現れるため、自分の技術だけではコントロールできない側面があります。だからこそ、自分が旅して目にしたものが、後から驚きをもって浮かび上がってくるのが良いのだそう。
さらに、ズーム機能についても「自分ズーム」を推奨する石川さん。
「最初は、ズームレンズを使わず、単焦点のレンズを使い、自分自身が動くことで寄り引きをするのが大事です。それが写真がうまくなる秘訣でもあります」
たとえば、初対面の人を撮影するとき、恥ずかしいからといってズームレンズで遠くから撮るのではなく、自分が動ける範囲で撮影し、恥じらいを忘れてぐっと近づいたりすることで、“被写体との心の距離感”のようなものが写真に現れ、より作品としておもしろさが増すそう。鳥や動物といった被写体を撮る際は難しいかもしれませんが、まずは自分が動き、その結果、失敗した写真になってもそれがいい味を出す、と語る石川さんの言葉に、参加者全員が何度も頷きました。
おわりに
約1時間に亘った振り返り会を経て、翌日からも精力的に写真を撮っていた参加者たち。時には石川さんに直接アドバイスを求めたり、石川さんのスタイルをマネしたりしながら撮影した作品の一部を紹介します。
石川さんのアドバイスの通り、水平と垂直を意識したり、自分から被写体に寄って見たり、目線を変えたりすることでさまざまな写真が出来上がりました。なにより、参加者全員が意識していたのが「自分にとってのいい写真を撮る」ということ。美しい景色だけでなく、足元や、時には人工物まで、旅先での一期一会の出会いを「写真を撮る」という行為で楽しんでいました。みなさんもぜひ、旅先での「一期一会」を写真で楽しんでみては?
















