やんばるの奥、大宜味村・東村へ。まだ辿り着いていなかった深い沖縄の旅
旅するように暮らし、暮らすように旅したい旅色LIKESライター・リリが綴る沖縄の旅。やんばるの森に抱かれた大宜味村・東村には循環する暮らしの知恵が息づいています。パイナップルの葉が布に変わり、芭蕉の幹が美しい織物になる。シークヮーサーの収穫やコーヒー豆の焙煎、満点の星空の下で波の音を聴く。観光地から少し離れた静かな村で、ディープな沖縄に出会いました。
目次
観光地じゃない沖縄へ──やんばるの静かな村
那覇空港から車で約2時間、国道58号線を北上すると、沖縄本島北部・やんばる地域に到着します。リゾートホテルが立ち並ぶエリアを抜けると、深い森と静かな集落が広がる大宜味村エリア。大宜味村は「長寿の里」、東村は「花と水とパインの村」として知られています。どちらもゆったりとした時間が流れていました。
ここには、有名観光地にはない「本当の沖縄」があります。シークヮーサーとパイナップルの実り、伝統的な芭蕉布づくり、パイナップルの葉から生まれる繊維、コーヒー農園での焙煎体験、地域住民との交流、そして満点の星空。この2つの村で体験できるディープな旅の魅力を紹介します。
シークヮーサーとパイナップル──実りの村を巡る
大宜味村は沖縄県内のシークヮーサー生産量の約半分を占める「シークヮーサーの里」です。「大宜味シークヮーサーパーク」では、蛇口を捻ると併設の工場で皮ごと絞ったシークヮーサージュースが出てきます。シークヮーサーの収穫時期は9月から12月。収穫時期によって、味や栄養素が変わります。9月の初搾りと12月の完熟、それぞれの違いをぜひ飲み比べて体感してみてください。歴史や効能を学んだ後、道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンターの生産組合会長の大城さんの畑で収穫体験をしました。沖縄ではサトウキビやパイナップルの栽培が盛んですが、どちらの栽培にも適さない傾斜地で育てられてきたのがシークヮーサー。土地の特性を活かした先人の知恵が感じられます。
◆大宜味シークヮーサーパーク
住所:沖縄県国頭郡大宜味村津波1424-1
電話:0980-50-5850
営業時間:10:00〜17:00 土日祝日 10:00〜18:00
シークヮーサーは「道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター」でも購入できます。
◆道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター
住所:沖縄県国頭郡大宜味村津波95番地
東村のパイナップル農家・宮城さんの畑では、広大なパイナップル畑が夕陽に染まる絶景を楽しめます。そして何といっても体験して欲しいのが、大胆にカットしたパイナップルの塊に豪快にかぶりつくこと。
パイナップルは1つの株から生涯でたった1〜2個しか収穫できません。苗を植えて数年、丁寧に育てられた果実だからこその濃厚な甘さです。完熟したパイナップルは驚くほど甘くジューシーで、芯まで食べられてしまうほど。贅沢に丸ごと1個いただきました。
パイナップルを堪能した後は、サイクリングへ。東村ふれあいヒルギ公園を出発し、小高い丘を登り、バナナなどの畑が広がる坂道を駆け下り、たどり着いたのは観光客が少ない静かな海岸・ウッパマビーチ。亜熱帯特有のアダンが茂るトンネルを抜けると、絶景が待っています。サイクリングで乾いた喉を潤すのは、やっぱり搾りたてシークヮーサー入りのミネラルウォーター。爽快な酸味が身体中に染み渡り、パワーチャージ完了!サイクリングは「やんばるサイクルツーリズム」プログラムで体験できます。
透明度の高いウッパマビーチ
芭蕉布とパイナップル繊維──手しごとと循環の知恵
大宜味村喜如嘉(きじょか)は、沖縄の伝統工芸「芭蕉布」の産地です。芭蕉布は芭蕉の木の繊維から作られる織物で、国の重要無形文化財に指定されています。
芭蕉布工房風苧では織り手さんが制作過程を見せてくれました。芭蕉の幹から繊維を取り出し、細く裂いて結んで糸にする――気が遠くなるような手仕事ですが、完成した布の美しさは格別です。透けるような軽やかさと独特の風合いは、沖縄の暑い夏を快適に過ごすための知恵が詰まっています。実際に細く裂いて結ぶ工程を体験させてもらいましたが、想像以上の難しさに伝統工芸の奥深さを感じずにはいられません。
集落の奥にある「喜如嘉の七滝」は、水音だけが響く静謐な空間。この地域の自然崇拝を感じさせる神聖な場所でした。また、築100年を超える廃校になった小学校を改装した「喜如嘉翔学校」は宿泊施設としても利用可能で、月桃(げっとう)など地域の植物を使った草編みのワークショップも開催されています。大宜味村に伝わる精霊「ぶながや」が宿る廃校は、お洒落だけどどこか懐かしい素敵な空間に生まれ変わりました。
◆喜如嘉翔学校
住所:沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉2083
大宜味村の「FOOD REBORN(フードリボン)」では、通常なら廃棄されるパイナップルの葉から繊維を取り出し、布や紙、クラフト製品を作る取り組みを行っています。ここでは繊維を取り出す工程を見学でき、パイナップル繊維を使ったキーホルダーやアクセサリーを作るワークショップに参加できるほか、オリジナルグッズなども購入できます。
芭蕉布もパイナップル繊維も、この地域には「捨てない、循環させる」という共通の知恵が息づいていました。
コーヒー、海の幸、満点の星空──宿と食を楽しむ
沖縄ではコーヒー農園も増えています。東村の「Harmony Farm」で農園を見学し、「又吉コーヒー園」で生豆を自分で焙煎し、オリジナルの1杯を作り上げる体験をしました。網を揺らしながら豆の色が変わり、香りが立ち上がる様子を楽しめます。焙煎したてのコーヒーの味わいと香りは格別。コーヒー好きにはたまらない、特別な体験です。11月からは収穫体験もできます。生産者さんたちの想いや加工の工程を知ることで、コーヒー1杯への価値を考えさせられる貴重な機会となりました。
◆又吉コーヒー園
住所:沖縄県国頭郡東村慶佐次718−28
電話:0980−43−2838
営業時間:10:00〜17:00 土日祝日 9:30〜17:00
東村では「農家民泊」という取り組みがあり、地元の家庭で食卓を囲みながら交流できます。家ごとに個性があり、それぞれの暮らしに触れられるのが魅力です。夕食後は外に出て星空観察を。街灯が少ないこの地域では、満天の星空が広がります。波の音だけが響く静かな夜は、都会では決して味わえない贅沢な時間です。
滞在の合間には、塩屋の静かな集落を散策するのもおすすめです。昭和の面影を残すようなノスタルジックな路地や商店、昔ながらの家並み。観光地化されていない、ありのままの沖縄の暮らしが残っています。
大宜味村根路銘(ねめろ)にある「海と星空の小さな宿 WASSA WASSA」は、道の駅おおぎみから車で約6分という好立地ながら、海も星も独り占めできるかのようなプライベート感。
料理人だったオーナー夫妻が作る食事は、辺土名漁港の朝採れ鮮魚をはじめとした、その日の食材を使った料理。イタリアン出身のご主人、和食出身の奥様、それぞれが得意とする料理で素材の持ち味を引き出します。沖縄の食の豊かさを存分に味わうことができました。
ルーフテラスでいただく食事は格別でした。食後も、満天の星空と波の音だけが響く静寂の中で、ゆっくりと時間が流れていく。「チムワサワサ(胸がドキドキ・ワクワクする)」という沖縄の言葉が宿の名前の由来ですが、まさにその通りでした。
連泊してゆっくり過ごすなら、オーナーと一緒に早朝の競りへ出かけたり、海を感じながらSUPやヨガ、アーユルヴェーダを体験したり。目の前の海ではシュノーケリングで熱帯魚やウミガメに出会えることも。波の音を聞きながらのんびり過ごす、穏やかな時間が流れる宿です。
◆海と星空の小さな宿 WASSA WASSA
住所:沖縄県国頭郡大宜味村根路銘97
電話:0980−50−2500
「まだ知らない沖縄」がここにある
穏やかな塩屋湾
やんばるの森に抱かれた大宜味村、東村。この旅で出会ったのは、まだ観光パンフレットには載っていない、けれど確かにそこにある沖縄の営みでした。「捨てない、循環させる」という先人の知恵は、今も静かに息づいています。急ぎ足で名所を巡るのではなく、ゆったりと土地の空気を吸い、鳥の声や波の音に耳を澄ませる──そんな旅がしたくなったら、やんばるの静かな村を訪れてみてください。
まだ知らない沖縄が、きっとあなたを待っています。













