やんばるの奥、大宜味村・東村へ。まだ辿り着いていなかった深い沖縄の旅

沖縄県

2025.11.27

LINEでシェア
はてなでシェア
pocketでシェア
やんばるの奥、大宜味村・東村へ。まだ辿り着いていなかった深い沖縄の旅

旅するように暮らし、暮らすように旅したい旅色LIKESライター・リリが綴る沖縄の旅。やんばるの森に抱かれた大宜味村・東村には循環する暮らしの知恵が息づいています。パイナップルの葉が布に変わり、芭蕉の幹が美しい織物になる。シークヮーサーの収穫やコーヒー豆の焙煎、満点の星空の下で波の音を聴く。観光地から少し離れた静かな村で、ディープな沖縄に出会いました。

目次

閉じる

観光地じゃない沖縄へ──やんばるの静かな村

シークヮーサーとパイナップル──実りの村を巡る

芭蕉布とパイナップル繊維──手しごとと循環の知恵

コーヒー、海の幸、満点の星空──宿と食を楽しむ

「まだ知らない沖縄」がここにある

観光地じゃない沖縄へ──やんばるの静かな村

那覇空港から車で約2時間、国道58号線を北上すると、沖縄本島北部・やんばる地域に到着します。リゾートホテルが立ち並ぶエリアを抜けると、深い森と静かな集落が広がる大宜味村エリア。大宜味村は「長寿の里」、東村は「花と水とパインの村」として知られています。どちらもゆったりとした時間が流れていました。
ここには、有名観光地にはない「本当の沖縄」があります。シークヮーサーとパイナップルの実り、伝統的な芭蕉布づくり、パイナップルの葉から生まれる繊維、コーヒー農園での焙煎体験、地域住民との交流、そして満点の星空。この2つの村で体験できるディープな旅の魅力を紹介します。

シークヮーサーとパイナップル──実りの村を巡る

今年は大豊作! 機械化できず人手不足が課題

ヘタを残して収穫するのがポイント

初搾りはノビレチン(ポリフェノールの一種)が最も豊富で、様々な健康効果が期待できる

初搾り限定100%ジュースは人気のお土産品

大宜味村は沖縄県内のシークヮーサー生産量の約半分を占める「シークヮーサーの里」です。「大宜味シークヮーサーパーク」では、蛇口を捻ると併設の工場で皮ごと絞ったシークヮーサージュースが出てきます。シークヮーサーの収穫時期は9月から12月。収穫時期によって、味や栄養素が変わります。9月の初搾りと12月の完熟、それぞれの違いをぜひ飲み比べて体感してみてください。歴史や効能を学んだ後、道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンターの生産組合会長の大城さんの畑で収穫体験をしました。沖縄ではサトウキビやパイナップルの栽培が盛んですが、どちらの栽培にも適さない傾斜地で育てられてきたのがシークヮーサー。土地の特性を活かした先人の知恵が感じられます。

◆大宜味シークヮーサーパーク
住所:沖縄県国頭郡大宜味村津波1424-1
電話:0980-50-5850
営業時間:10:00〜17:00 土日祝日 10:00〜18:00

「大宜味シークヮーサーパーク」公式HPはこちら

シークヮーサーは「道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター」でも購入できます。

◆道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター
住所:沖縄県国頭郡大宜味村津波95番地

「道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター」公式HPはこちら

パイナップル畑に沈む夕日は東村ならではの景色

沖縄在住者も「こんなパイナップル食べたことない!」と大絶賛

パイナップルを漫画肉のようにかぶりつく日が来るなんて

広大なパイナップル畑

1つの株から1〜2個しか収穫できない

東村のパイナップル農家・宮城さんの畑では、広大なパイナップル畑が夕陽に染まる絶景を楽しめます。そして何といっても体験して欲しいのが、大胆にカットしたパイナップルの塊に豪快にかぶりつくこと。
パイナップルは1つの株から生涯でたった1〜2個しか収穫できません。苗を植えて数年、丁寧に育てられた果実だからこその濃厚な甘さです。完熟したパイナップルは驚くほど甘くジューシーで、芯まで食べられてしまうほど。贅沢に丸ごと1個いただきました。

東村のパイナップル収穫体験はこちら

東村ふれあいヒルギ公園ではマングローブの自然が楽しめる

絶景を目指してサイクリングへ

サイクリングロードの両側にはバナナやパイナップル畑が広がる

トンネルの向こうには絶景が待っている

サイクリングの後はヒルギ公園近くの食堂「あいうえお」でランチ

パイナップルを堪能した後は、サイクリングへ。東村ふれあいヒルギ公園を出発し、小高い丘を登り、バナナなどの畑が広がる坂道を駆け下り、たどり着いたのは観光客が少ない静かな海岸・ウッパマビーチ。亜熱帯特有のアダンが茂るトンネルを抜けると、絶景が待っています。サイクリングで乾いた喉を潤すのは、やっぱり搾りたてシークヮーサー入りのミネラルウォーター。爽快な酸味が身体中に染み渡り、パワーチャージ完了!サイクリングは「やんばるサイクルツーリズム」プログラムで体験できます。

透明度の高いウッパマビーチ

透明度の高いウッパマビーチ

芭蕉布とパイナップル繊維──手しごとと循環の知恵

1着に必要な芭蕉はなんと200本

工房の織り機

取り出した繊維

大宜味村喜如嘉(きじょか)は、沖縄の伝統工芸「芭蕉布」の産地です。芭蕉布は芭蕉の木の繊維から作られる織物で、国の重要無形文化財に指定されています。
芭蕉布工房風苧では織り手さんが制作過程を見せてくれました。芭蕉の幹から繊維を取り出し、細く裂いて結んで糸にする――気が遠くなるような手仕事ですが、完成した布の美しさは格別です。透けるような軽やかさと独特の風合いは、沖縄の暑い夏を快適に過ごすための知恵が詰まっています。実際に細く裂いて結ぶ工程を体験させてもらいましたが、想像以上の難しさに伝統工芸の奥深さを感じずにはいられません。

住民たちが祈りを捧げる喜如嘉の七滝(ななたき)

光と影が織りなす静かな廊下

大宜味村の精霊「ぶながや」。村人に親しまれるこのキャラクターが、あちこちで旅人を迎えてくれる

月桃(げっとう)を使ったワークショップの様子

集落の奥にある「喜如嘉の七滝」は、水音だけが響く静謐な空間。この地域の自然崇拝を感じさせる神聖な場所でした。また、築100年を超える廃校になった小学校を改装した「喜如嘉翔学校」は宿泊施設としても利用可能で、月桃(げっとう)など地域の植物を使った草編みのワークショップも開催されています。大宜味村に伝わる精霊「ぶながや」が宿る廃校は、お洒落だけどどこか懐かしい素敵な空間に生まれ変わりました。

◆喜如嘉翔学校
住所:沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉2083

「喜如嘉翔学校」公式HPはこちら

パイナップル繊維は最も細い繊維といわれる

パイナップルの繊維を取り出しキーホルダー作りを体験

「OH, GIVE ME LOVE 大宜味産シークヮーサー100%ジュース」のオリジナルキャラクター「おばぁ」をデザインしたTシャツは人気のお土産

大宜味村の「FOOD REBORN(フードリボン)」では、通常なら廃棄されるパイナップルの葉から繊維を取り出し、布や紙、クラフト製品を作る取り組みを行っています。ここでは繊維を取り出す工程を見学でき、パイナップル繊維を使ったキーホルダーやアクセサリーを作るワークショップに参加できるほか、オリジナルグッズなども購入できます。
芭蕉布もパイナップル繊維も、この地域には「捨てない、循環させる」という共通の知恵が息づいていました。

「FOOD REBORN」公式HPはこちら

コーヒー、海の幸、満点の星空──宿と食を楽しむ

沖縄でコーヒ栽培が始まったのは150年ほど前。台風や日差し、温度管理に気を配る

1本の木から10〜20杯分が収穫できる

バナナの木がコーヒーを強い日差しから守っていた

福地ダムを見下ろす美しい農園

沖縄ではコーヒー農園も増えています。東村の「Harmony Farm」で農園を見学し、「又吉コーヒー園」で生豆を自分で焙煎し、オリジナルの1杯を作り上げる体験をしました。網を揺らしながら豆の色が変わり、香りが立ち上がる様子を楽しめます。焙煎したてのコーヒーの味わいと香りは格別。コーヒー好きにはたまらない、特別な体験です。11月からは収穫体験もできます。生産者さんたちの想いや加工の工程を知ることで、コーヒー1杯への価値を考えさせられる貴重な機会となりました。

生豆を焙煎する

焙煎完了の瞬間。立ち上る香りに包まれる

オリジナルコーヒーの完成

コーヒーチェリーのジャムはこの体験でしか味わえない

コーヒーの葉のお茶は薬効茶のような味わい

「Harmony Farm」公式HPはこちら

◆又吉コーヒー園
住所:沖縄県国頭郡東村慶佐次718−28
電話:0980−43−2838
営業時間:10:00〜17:00 土日祝日 9:30〜17:00

「又吉コーヒー園」公式HPはこちら

民泊に対応する農家さんのお宅にお邪魔した

おばぁと作った沖縄そばの夕食

天の川や流星も見えた

東村では「農家民泊」という取り組みがあり、地元の家庭で食卓を囲みながら交流できます。家ごとに個性があり、それぞれの暮らしに触れられるのが魅力です。夕食後は外に出て星空観察を。街灯が少ないこの地域では、満天の星空が広がります。波の音だけが響く静かな夜は、都会では決して味わえない贅沢な時間です。

農家民泊体験はこちらから

滞在の合間には、塩屋の静かな集落を散策するのもおすすめです。昭和の面影を残すようなノスタルジックな路地や商店、昔ながらの家並み。観光地化されていない、ありのままの沖縄の暮らしが残っています。

サングァー(魔除け)づくりをする地元のおじぃ

塩屋湾の祭祀「ウンガミ」を紹介する屋外写真

おじぃ、おばぁがゆんたくに集まるという塩谷売店

大川共同店はノスタルジー溢れる温かい空気が流れる場所

循環と助け合いを感じる店内

大宜味村根路銘(ねめろ)にある「海と星空の小さな宿 WASSA WASSA」は、道の駅おおぎみから車で約6分という好立地ながら、海も星も独り占めできるかのようなプライベート感。
料理人だったオーナー夫妻が作る食事は、辺土名漁港の朝採れ鮮魚をはじめとした、その日の食材を使った料理。イタリアン出身のご主人、和食出身の奥様、それぞれが得意とする料理で素材の持ち味を引き出します。沖縄の食の豊かさを存分に味わうことができました。

窓の向こうに広がる海を眺める至福の時間

目の前に広がるビーチ

鮮度抜群の夜光貝は絶品

沖縄らしいイラブチャーの刺身

新鮮な海鮮料理や天ぷら、グラタン、フルーツに大満足

朝ごはんはイラブチャーのバター焼き。やちむんの使い方も参考になる

ルーフテラスでいただく食事は格別でした。食後も、満天の星空と波の音だけが響く静寂の中で、ゆっくりと時間が流れていく。「チムワサワサ(胸がドキドキ・ワクワクする)」という沖縄の言葉が宿の名前の由来ですが、まさにその通りでした。
連泊してゆっくり過ごすなら、オーナーと一緒に早朝の競りへ出かけたり、海を感じながらSUPやヨガ、アーユルヴェーダを体験したり。目の前の海ではシュノーケリングで熱帯魚やウミガメに出会えることも。波の音を聞きながらのんびり過ごす、穏やかな時間が流れる宿です。

◆海と星空の小さな宿 WASSA WASSA
住所:沖縄県国頭郡大宜味村根路銘97
電話:0980−50−2500

「海と星空の小さな宿 WASSA WASSA」公式HPはこちら

「まだ知らない沖縄」がここにある

穏やかな塩屋湾

穏やかな塩屋湾

やんばるの森に抱かれた大宜味村、東村。この旅で出会ったのは、まだ観光パンフレットには載っていない、けれど確かにそこにある沖縄の営みでした。「捨てない、循環させる」という先人の知恵は、今も静かに息づいています。急ぎ足で名所を巡るのではなく、ゆったりと土地の空気を吸い、鳥の声や波の音に耳を澄ませる──そんな旅がしたくなったら、やんばるの静かな村を訪れてみてください。
まだ知らない沖縄が、きっとあなたを待っています。

Related Tag

#収穫体験 #伝統工芸 #沖縄穴場 #農家民泊 #沖縄県

Author

フォトエッセイ リリ

フォトエッセイフォトエッセイ

リリ

東京都在住の会社員。カメラを片手に街歩きをしたりカフェ巡りをすることが趣味です。大好きな建築やアートなどを中心に、旅先で得た気づきや体験を感じたままに独自の感性で綴ります。

Articles

フォトエッセイ リリ

【福井・三国湊】風を待つ町で、文化の層を歩く旅

フォトエッセイ リリ

旅と日々のあいだで

フォトエッセイ リリ

金継ぎの美学と黄金の糸が紡ぐ、人生のつながりを見つめた金沢・加賀の旅【石川県】

New articles

- 新着記事 -

熊本県山鹿(やまが)の 「不動岩」で、新年の誓いを“不動”にする新春開運旅【巨石パワースポット探訪記】
  • NEW

熊本県

2026.01.14

熊本県山鹿(やまが)の 「不動岩」で、新年の誓いを“不動”にする新春開運旅【巨石パワースポット探訪記】

トレンド旅 おんり

おんり

トレンド旅

【2月8日締切】お酒を通して“自分だけの物語”を醸す「ちゃんと旅を考える学校」第2期開講
  • NEW

全国

2026.01.10

【2月8日締切】お酒を通して“自分だけの物語”を醸す「ちゃんと旅を考える学校」第2期開講

tabiiro 旅色編集部

旅色編集部

tabiiro

大人も子どもも楽しめる! 2026年行きたい学びのスポット4選
  • NEW

全国

2026.01.10

大人も子どもも楽しめる! 2026年行きたい学びのスポット4選

大人の社会科見学旅 さっか

さっか

大人の社会科見学旅

【青森在住のJALふるさとアンバサダーが教える!】絶品グルメ満喫!下北・津軽半島1泊2日ドライブ旅のおすすめ
  • NEW

青森県

2026.01.09

【青森在住のJALふるさとアンバサダーが教える!】絶品グルメ満喫!下北・津軽半島1泊2日ドライブ旅のおすすめ

JAL JALおでかけ便り

JALおでかけ便り

JAL

【福井・三国湊】風を待つ町で、文化の層を歩く旅

福井県

2026.01.03

【福井・三国湊】風を待つ町で、文化の層を歩く旅

フォトエッセイ リリ

リリ

フォトエッセイ

【体験レポート】鬼と共に一昼夜、吉野山で過ごしてきた。日本で唯一の金峯山寺の「節分会・鬼の祭典」について

奈良県

2026.01.02

【体験レポート】鬼と共に一昼夜、吉野山で過ごしてきた。日本で唯一の金峯山寺の「節分会・鬼の祭典」について

旅色LIKES メンバー

メンバー

旅色LIKES

More

Authors

自分だけの旅のテーマや、専門的な知識をもとに、新しい旅スタイルを提案します。

トレンド旅 おんり

トレンド旅トレンド旅

おんり

tabiiro 旅色編集部

tabiiro

旅色編集部

大人の社会科見学旅 さっか

大人の社会科見学旅大人の社会科見学旅

さっか

JAL JALおでかけ便り

JAL

JALおでかけ便り

フォトエッセイ リリ

フォトエッセイフォトエッセイ

リリ

旅色LIKES メンバー

旅色LIKES旅色LIKES

メンバー

歴史旅 長月あき

歴史旅歴史旅

長月あき

出逢い旅 ふみこ

出逢い旅出逢い旅

ふみこ