日本で唯一の締込職人に出逢うスー女の滋賀県長浜市弾丸日帰り旅
滋賀県長浜市には、力士たちを支える締込(絹製まわし)の工場があります。歴史遺産も多い町で、琵琶湖畔にある相撲町(すまいちょう)や慶雲館などをレンタサイクルで巡ってきました。旅色LIKESライター・相撲旅担当のさっちもがスー女ならではの視点で長浜の魅力を深掘りします。
目次
レンタサイクルで気ままに探検
長浜駅に降り立つと、琵琶湖の爽やかな風が迎えてくれます。長浜市の滞在時間は約9時間です。首都圏からの日帰り旅行を満喫するため、小回りが利くレンタサイクルで気ままに町を巡ることにしました。長浜駅東口直結の「えきまちテラス長浜」1階にある長浜観光協会ツアーセンターで電動自転車をレンタル。身分証を提示し、簡単な申込書にサインをするだけで、手続きは約5分で完了します。ヘルメットをかぶり、軽快なペダルを踏んで自由な冒険に出発です!
◆長浜観光協会ツアーセンター
住所:長浜市北船町3-24えきまちテラス長浜 1階
電話:0749-53-2500
営業時間:9:00~17:00
定休日:年末年始
料金:普通自転車500円、電動アシスト自転車1,000円 ※別途保証金800円(自転車返却時に返金されます)
静かに時を刻む「相撲町」を訪ねる
長浜観光協会ツアーセンターを出発し、電動自転車で北西に約10分。琵琶湖畔に位置する「相撲町(すまいちょう)」に到着しました。町の名前は、かつて朝廷で行われた相撲の儀式の費用を賄う田地だったことに由来します。江戸時代には稲作や桑栽培とともに養蚕で大きく発展し、自然の豊かさと歴史に彩られた風情ある町です。
目の前に広がる田んぼの鮮やかな緑を前に、清々しい空気を体いっぱいに吸い込むと、地元に帰ってきたような心地よさを感じました。木造の町家が並ぶ通りは、どこか懐かしく、雪駄を履いた力士のザリッザリッという足音が今にも聞こえてきそうな雰囲気。自転車を降りて細い路地を進むと、相撲神社が見えてきます。こぢんまりとした境内は、時間が止まったような静寂に包まれていました。その中に佇むどっしりと根を張った大きな欅は存在感があります。相撲町の穏やかな魅力に癒され、長浜の隠れた美しさを見つけました。
滋賀県名物「サラダパン」で知られる「つるやパン まるい食パン専門店」でランチ
まるい食パンの立体的な看板が目を引く。
15分ほど自転車の乗って長浜駅東口に戻り、駅から5分ほど走ると「つるやパン まるい食パン専門店」に到着しました。まるい食パンは、長浜市木之元にある本店で約60年間作られている看板商品「サンドウィッチ」に使われていました。特に焼き立てのおいしさが格別で、そのままちぎって食べたり、厚切りのトーストにしたり、さまざまな具材をサンドして楽しんでほしいという店主の思いから、2016年4月にオープンしました。
店内には、まるい食パンをはじめ、まるい食パンを使った惣菜パンやスイーツ系のパンが15種類ほど並んでいます。視線を左右に何往復もさせた末、一番人気の「フレンチトースト」と「まるい食パンハーフ」を選びました。「フレンチトースト」は驚くほどふわふわでしっとりとした食感。卵のまろやかなコクと甘さが口いっぱいに広がり、贅沢な一品でした。まるい食パンは、焼き立てを丸かじり。バターもジャムもつけずに、食パンそのものの甘さをぜひ感じてみてください。お店の奥にはイートスペースもあり、焼き立てのパンの香りに包まれながら楽しめます。
◆つるやパン まるい食パン専門店
住所:長浜市朝日町15-31
電話:0749-62-5926
営業時間:9:00~17:00
定休日:水曜日、第3日曜日
「慶雲館」でタニマチの存在感に圧倒される
慶雲館は1887(明治20)年に、明治天皇皇后の行在所(お出ましの時の仮の御殿)として、長浜の豪商・浅見又蔵が私財を投じて建設しました。迎賓館としても使用され、1935(昭和10)年の国史跡指定に伴い、翌年に長浜市へ寄付されました。現在は一般公開されており、格調高い日本庭園や、2階に設けられた玉座、息をのむほどの美しさを放つ襖絵に目を奪われます。
慶雲館には常陸山が何度も訪れていたそう。
なかでも、私が心惹かれたのは、庭園に立つ「横綱像」です。浅見又蔵は大の相撲好きで、明治の大横綱・常陸山(ひたちやま)のタニマチ※1として贔屓にしていました。贔屓の横綱を石像として残すほどの愛と財力に、羨ましさを感じずにはいられません。「私がもしタニマチだったら、移動用の車数台と専用駐車場をプレゼントしたい」と夢のある妄想に浸ったのでした。
※1 相撲界の隠語で、贔屓にしてくれる客、援助してくれる人のこと。語源は大阪の「谷町」にいた相撲好きの医者から。力士を無料で治療したり、小遣いをあげたりしていた。
◆慶雲館
住所:長浜市港町2-5
電話:0749-62-0740
開館時間:9:30~17:00(最終入館16:30)
開館期間:3月中旬~12月上旬(無休)
観覧料:大人300円 小中学生150円
※1月上旬から3月上旬は「長浜盆梅展」を開催しています。
詳細は公式HPでご確認ください
日本で唯一の手織りの締込工場「おび弘 山門工場」で職人技にふれる
手織り締込の伝統を継ぐ石井工場長。
レンタサイクルを返却後、北陸本線と湖西線を乗り継いで永原駅へ。永原には、日本で唯一の手織り「締込(しめこみ)」を制作する「おび弘 山門工場」があります。締込とは、関取が本場所で締める色鮮やかな絹製まわしのことです。京都西陣織を営むおび弘が、1949(昭和24)年に得意先の依頼を受けて締込の制作を始めました。工場のある山門地区は、適度な湿気が必要とされる絹織物に最適な気候で、機械織では再現できないしなやかな風合い(見たり触れたりして感じる材質感)、強度、光沢を生み出します。
締込1本の制作には、糸の染色に約3日を要し、糸掛け、織りの工程を経て完成まで10日間ほどかかります。幅は約80センチメートル、長さは力士の腹回りで変わりますが、約8~10メートルあり、重さは約8キログラム。この締込を、縦に6つ折りにして締め、力士はスピード感あふれる取組を繰り広げます。工場長が経糸(たていと)を巻いた舟形の杼(ひ)を滑らせ、かまちで真っすぐに打ち込むと「ガシャンガシャン」と重厚感のある音が響きます。約40キログラムもあるかまちを操るのは男性でも重労働。1本1本の糸に目を凝らし、一切の妥協を許さず織りあげます。しなやかで強靭な締込は、職人から生まれる芸術であり、土俵で戦う力士への無言のエールだと感じました。
精巧な文様を織りだす西陣織の帯の機。
また、おび弘 山門工場では、京都西陣織の帯も制作しており、熟練の職人が織りなす繊細な手仕事を間近で見ることができます。相撲の迫力に魅了される方も、着物の奥深い魅力に心惹かれる方も、伝統技術の息吹を体感しに、おび弘山門工場を訪れてみませんか?
◆おび弘 山門工場
住所:長浜市西浅井町山門917
見学可能時間:10:00~15:00 所要時間:60~90分程度
見学受付日:月~木曜日
見学受付期間:5~12月
見学料:500円
※JRで向かう場合は、山門工場最寄り駅より送迎あり
おわりに
締込職人に会うため訪れた長浜市は、期待を超える感動の宝庫でした。古い町並みが静かに語る歴史、遠くに連なる伊吹山の稜線と、風に揺れる稲穂の緑が琵琶湖畔に彩りを添え、五感を優しく刺激します。日帰りでも心を満たす長浜へぜひ訪れてみてください。

















