仙台巡業で気づいた地方巡業の魅力【宮城県】
大相撲の醍醐味を気軽に楽しめる地方巡業は、ファンにとって特別なイベントです。本場所が東京や大阪など大都市中心なのに対し、地方巡業は郊外で開催されることが多く、普段は相撲を生で観られない地域のファンに熱戦を届けてくれます。関東に住んでいるさっちもが、少し足をのばして「東日本大震災復興支援仙台場所」に参加してきました。そこで気付いた地方巡業の魅力に迫ります。
目次
過去の記事で巡業の概要を紹介しています。併せてご覧ください。
イス席は力士にグッと近づくアクティブ派の特等席
両横綱(豊昇龍、大の里)の貴重な稽古風景。
仙台巡業の会場は、本山製作所青葉アリーナ。仙台駅から在来線で2駅いった北仙台駅から徒歩約5分の好立地で、関東圏であれば日帰りも可能です。本場所のチケットは人気で、なかなか取りづらく、今季は友人を誘って仙台巡業へ。土俵近くの迫力を味わえるタマリ席を狙いましたが、2席並びで取れず、1階のイス席を取りました。このイス席こそが、地方巡業の魅力を満喫できる隠れた名スポットだったのです。
イス席は、ストレッチをしている力士や稽古の準備をしている力士たちが並ぶ壁側に近いため、タマリ席とは異なる臨場感が味わえます。推し力士や、人気力士との写真撮影やサインをもらうために移動がしやすいのもイス席の魅力。「割(取組表のこと)、見せてもらってもいいですか? 」と、急に声を掛けられたと思ったら力士だった! というサプライズに遭遇するかもしれません。
夫婦、カップル、友人同士で楽しめるペアマス席。
タマリ席、マス席には巡業記念座布団が敷かれており、お土産として持ち帰ることができます。イス席には座布団がありませんが、会場によっては記念座布団を販売していることも! 座布団付きの席が取れなくても入手するチャンスがあります。仙台巡業は1枚1,500円で販売されていました。数に限りがあるため、早めの購入をおすすめします。
なお、2階のイス席は、1階の場内に入ることができないため、力士との記念撮影やサインを希望する場合は1階席のチケットをご購入ください。
地方ならではの巡業グルメ
新鮮な「蒸し牡蠣」(2個500円)。
会場の外にはキッチンカーや売店があるので、お弁当を買いそびれても安心です。新鮮な「蒸し牡蠣」をいただきました。巡業は午前9時から午後3時まで。遠征勢にとって、会場でその土地ならではのグルメが味わえるのもうれしいポイントです。また、相撲には欠かせない「ちゃんこ鍋」も販売しています。巡業に参加している力士も同じちゃんこ鍋を食べているので味はお墨付き。混雑する昼食時には、人気力士が助っ人販売員として登場し、待っている間もお客さんを飽きさせません。食欲をそそるちゃんこ鍋の香りと、力士のびんつけ油の香りに包まれて幸せな気分に浸れます。
相撲甚句(すもうじんく)と初切(しょっきり)で一味違った相撲文化に触れる
美声にうっとり。
相撲甚句は、七五調の囃子歌で、土俵上で数人の力士が輪になり、中心で独唱する力士に合わせて周囲の力士が「あ~どすこいどすこい」と合いの手を入れます。歌唱力に優れた力士が集まり、稽古見学で熱気高まる観客を落ち着かせ、心地よい時間が流れていました。普段は流行りの歌をカラオケで歌っていそうな若者ですが、甚句の発声はポップスとは全く別の物。胸に響く感覚を、ぜひ会場で味わってみてください。
初切は、2人の力士が相撲の禁じ手をコミカルに紹介する催し物です。江戸時代から行われており、厳格な相撲道からは想像もつかないような型破りな技で会場を爆笑の渦に巻き込みます。土俵に近いタマリ席を「砂かぶり席」といいますが、初切が始まると「塩かぶり席」に。どこまで塩が飛んでくるかわからないスリルも楽しみのひとつ。
心が熱くなる地方巡業ならではの声援
相撲界には、「江戸の大関より土地の三段目※1」という言葉があります。地位や知名度に関係なく、地元の力士を応援する相撲文化を表す言葉です。番付表には出身地が記載され、取組前のアナウンスでも全員のしこ名と出身地が紹介されます。地元出身力士が土俵に上がると拍手と声援で会場は大盛り上がり。力士養成員といわれる幕下以下の力士でも、地元の巡業では大きな声援を浴びて力強く土俵に上がります。この声援が若手力士にとって、「今度は関取※2として故郷に帰る」という原動力にもなっていると思いました。
※1 大相撲における6つある階級(幕内・十両・幕下・三段目・序二段・序ノ口)のうち、上から4番目の階級。
※2 幕内・十両力士。1人前の力士として認められる地位の総称。
巡業バスに乗って次の巡業場所に向かう力士たち。
2025年10月の秋巡業はロンドン公演のため開催されませんが、例年12月に九州・沖縄で開催される冬巡業は、九州を皮切りに中国、四国、関西、中部、関東と多彩な地域で開催されます。地元の方も、近県にお住まいの方も、ぜひ会場に足を運び、力士たちの迫力ある取組を楽しんでみませんか? 日程や詳細は日本相撲協会公式HPでご確認ください。
巡業先のちゃんこ屋さんで感動と興奮の余韻に浸る
仙台駅から車で約10分の場所にある「相撲茶屋かちかち山」で、本格的な力士料理を堪能しました。店主は二子山(ふたごやま)部屋に所属していた元力士。全国から集まった力士たちは、ちゃんこ場※3で磨いた料理の腕を活かし、引退後に地元で飲食店を営む方が多くいます。なかでも、「相撲茶屋かちかち山」は仙台で約40年にわたり愛される名店。気さくな親方と、明るいおかみさんが温かく迎えてくれました。
※3 ちゃんこを作る場所、台所。力士は当番制で全員分の食事を作り、当番をちゃんこ番という。
店内は相撲甚句が流れ、横綱の綱、明け荷(関取のまわしや道具を入れるつづらのこと)、懸賞金袋など、なかなか近くで見ることができない貴重な品が飾られています。まるで相撲博物館のよう。メニューは宮城県の珍味をはじめ、手の込んだ一品料理や、ファミリー向けのセットメニューもありました。初めて訪れる方には、親方イチオシの料理が揃った満足必至のセットメニューがおすすめです。
二子山部屋直伝の「ちゃんこ鍋(塩)」は、野菜、油揚げ、ちくわぶ、鶏肉や豚バラ肉のほかに、宮城の新鮮な魚介類(カニ・帆立・メヌケ・魚のつみれ)がたっぷりと入った贅を尽くした一品です。ちゃんこ鍋には決まったレシピがなく、部屋ごとに味が受け継がれているため、塩ちゃんこひとつとっても味わいが異なります。そのため、ちゃんこ屋さんの「〇〇部屋直伝」の文言は、相撲部屋探訪をしている気分になり、相撲好きの心をくすぐります。
「気仙沼ホルモン」
新鮮なホルモンを味噌だれに漬けて焼いた「気仙沼ホルモン」は絶品。大ぶりのモツに甘みがあり、噛むほどに旨味が口の中に広がります。厚みのある豚タンも入っていて、1人分とは思えないほどのボリューム。お腹を空かせてきて良かった!
仙台巡業の際には、相撲観戦の興奮を締めくくる最高のスポットとして、ぜひ訪れてみてください。味も雰囲気も、忘れられない思い出になりますよ!
◆相撲茶屋かちかち山
住所:宮城県仙台市若林区志波町18-30
電話:022-236-4764
営業時間:17:00~24:00(LO23:30)
定休日:不定休
おわりに
地方巡業は、相撲の普及と力士を身近に感じられる機会であると同時に、地元の方々に故郷の力士の活躍を届ける便りでもあると感じました。力士たちを歓迎する熱のこもった声援に鳥肌が立ち、若手力士の生き生きとした表情も印象的です。お住まいの地域で巡業が開催された際は、ぜひ地元の力士に熱い声援を送りましょう!













