プロのガイド推薦! 浅草観音裏のツウな楽しみ方

週末は通訳案内士として東京を中心にガイドしている旅色LIKESライターのふみこです。国内外からの観光客でにぎわう仲見世、浅草寺、浅草神社の浅草エリア、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で人気が高まっている吉原エリア。その間の中間に「浅草観音裏」と呼ばれるエリアがあるのをご存知でしょうか。浅草寺参拝の後、外国人ゲストを案内すると、必ず喜ばれる、その魅力に迫ります。
目次
浅草観音裏とは
花街として栄えた歴史を持つ閑静な地域。料亭の名残を感じさせる建物や昔ながらの飲食店、新しいビストロやカフェが点在する。地域の人達の息遣いを感じる下町情緒と洗練された雰囲気が共存。観光客も少なく、ゆっくりともう一つの浅草を楽しめる。
花街を感じる浅草柳通り
両側に柳並木が広がり、店舗の名前が書かれた提灯が並ぶ浅草柳通り。しっとりと落ち着いた雰囲気の中心にあるのが、浅草見番(けんばん)。大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で安達祐実扮するりつのセリフに「見番でもつくろうかと思って」とあった。東京力車の車夫のスズキさんによると、芸者さんの置屋ではなく、一階は事務所、二階は稽古場とのこと。芸者衆による「浅草おどり」などの伝統芸能が披露されるほか、地域の文化を継承する催しも開催されるのだとか。
季節のおまかせ料理と土鍋ごはん「にし座わ」
人力車で向かったのは、浅草見番からちょっと路地を入ったところにあるこじんまりとした和食の店へ。静岡生まれ、浅草で修行をはじめ、ミシュラン店などで腕を磨いてきた大将が2024年1月に開店した。観音裏にお店を構えたのは、浅草見番が近く、飲食店が多いので料理を楽しむお客さんが多いからだとか。カウンター4席、テーブル席12席で、木のしつらえと、こだわりの食器が並ぶ落ち着いた空間は、隠れ家的な雰囲気だ。カウンターから丁寧な仕事を眺めながら、大将との会話が楽しい。
メニューは、全て対象のおまかせコース(8,800円~)。土鍋ごはんは鯛、名残の筍(春の旬のシーズンが終わってから採れる筍のこと)の具材と、ほんのりとかぼすが香る。土鍋の蓋を開けると、自然と歓声があがる。季節の食材やこだわりなどの料理に対する思いを聞きながら、味わっていると、あっという間に2時間半が過ぎていった。
◆にし座わ
住所:東京都台東区浅草3-34-10 ロワール浅草 101
電話:050-8881-7620
営業時間:17:30 - 23:00 定休日:不定期
地元の常連さんとの交流も楽しいとんかつ屋「とん将」
ガイドを始めるまで知らなかったけれど、とんかつは日本料理。外国人ゲストからのリクエストも多く、お連れするのは「とん将」。50年以上も浅草っ子に愛されている昔ながらのとんかつ屋。店に入ると「いらっしゃい! 」と迎えてくれるのが、お神輿大好きな2代目大将。カウンター6席、テーブル10席は、いつも、満席で天気の良い日には店の前の通りにもテーブルが並ぶ。伺うといつもの席にいつもの常連さんが座っている。通っているうちに常連さんにもよくしていただいて、案内した外国人ゲストから、とんかつだけでなく地元の方とも交流できて大満足と好評の声をもらうことが多い。外はカラリ、中はしっとりと揚げるために、油に入れる直前に衣をつけるのが秘訣なのだとか。「スタッフも同じレシピで揚げるんだけど、同じにはならないんだよね。俺の腕かな。」と大将。おいしいとんかつと浅草の粋な雰囲気を味わいに立ち寄ってみては。ちなみに三社祭の三日間はお休み。
◆とん将
住所:東京都台東区浅草3-22-4
電話:03-3872-7645
営業時間:11:30~22:00 定休日:火曜日
昔ながらの中華そばが味わえる町中華「中華料理 あさひ」
外国人ゲストが食べたい日本料理の一つがラーメン。浅草にはラーメン店がたくさんあり、どこに行ったらいいのか困っているときに、とん将の大将から教えていただいたのが「中華料理あさひ」。浅草見番の小路を挟んだお向かい、行ってみてびっくり、よくテレビで紹介されている町中華ではないか。カウンター8席と4人用テーブル席が3卓のみの店だが、店前には常に列ができている。「いつから始まったのかよくわからないんだよね。俺が4代目でこっちが5代目。」と大将がチャキチャキと説明してくれた。イチオシは昔ながらの出汁が聞いた「支那そば」。一口食べると「ああ、懐かしい味」としみじみする。外国人ゲストも「リーズナブルな値段で、これぞ日本のラーメンを食べられて満足」昔から変わらない日本の良さを楽しんでいた。また、「パクパクパクチーそば」や「しょうがそば」など伝統を守りながらも新しさも取り入れている。この混在感が観音裏の魅力。
◆あさひ
住所:東京都台東区浅草3-33-6
電話:03-3874-4511
営業時間:11:30 - 15:00/ 17:00 - 21:00 定休日:月曜 第三火曜
フランス家庭料理を味わう「フランス食堂 CaVa」
歩いていると、赤いチェックのカーテンがかかったおしゃれな店が目にとまる。長い間フレンチで腕をふるってきたシェフが、「フランスの普通」を味わってもらいたいと20年前に開いたフレンチビストロ。花柳界のお姉さま方にいろいろ教えてもらいながら、この場所でお店を続けてきたとか。日本の食堂で肉じゃがやカキフライを楽しむのと同じ感覚でフランス料理を楽しんでほしいそう。カウンター8席、テーブル4席をシェフとマダムの二人で切り盛りしているアットホームな雰囲気。個人主義のフランスでは、日本料理のようにおまかせコースはないそう。自分の食べたいものを自分で選ぶ時間を楽しむために食前酒があるのだとか。いろいろな知識を教えてくれるシェフとの会話も楽しい。ならばと前菜にウフマヨネーズ、メインに白いんげん豆のキャスルを選び、白のグラスワインを注文した。ワイングラスではなくフランスで一般的に使われているデュラレックスのガラスコップで出てきて、フランスの食堂で食事をしている気分だ。ランチは、前菜+メインで1,600円。グラスワインは500円ほどとリーズナブル。
◆フランス食堂 CaVa
住所:東京都台東区浅草3-34-1
電話:03-3874-0020
営業時間:月・火・水・金:17:00 - 22:00 土・日:12:00 - 14:30/17:00 - 22:00 定休日:木曜
歴史を感じるきんつば「徳太楼」
観音裏でおつかいもの(贈り物のこと)と言ったら、徳太楼のきんつば。甘すぎない粒あんがモチモチの薄皮にぎっしり包まれている。店の2階で毎朝小豆を炊いて、皮を焼きているそう。売上の7割がきんつばで、地元方や噂を聞いてやってきたリピーターがほとんどと。この日も本で見つけたからと小さな男の子を連れたお母さんが遠方から来ていた。1個160円から購入可能。館林藩の江戸詰め侍だった初代が、明治維新で職を失い、よろず屋を始めたのが店の始まりだったが、なかなか繁盛しないので、息子を老舗和菓子店の榮太郎に修行に出して和菓子屋を始めた。徳川家の徳と榮太郎の太郎。ご主人のこだわりで楼の漢字を使い、徳太楼の屋号に決まった。歴史を感じるお菓子だ。
店内はイスが置いてあるので、ここでいただく事もできる。チュニジアからの友人と伺った時には、大女将が英語でガイド泣かせのこしあんと粒あんの違いを英語で説明してくれた。「お店にいるだけではつまんないでしょ。英会話学校に10年通ったのよ。うふふ。」と大女将は笑顔で答えてくれた。花柳界が華やかな時代は、お客様へのお土産へと注文が入り、夜の11時頃にきんつばを配達に行っていた。日曜日がお休みなのはその名残だとか。
◆徳太樓
住所:東京都台東区浅草3-36-2
電話:03-3874-4073
営業時間:10:00~17:00 定休日:日曜
店舗:https://tokutarou.sakura.ne.jp/
伝統をつなぐ街
徳太楼の天井にふと目をやると、隅に小さなお札が貼ってある。穴八幡宮の「一陽来復御守」。お札を貼れるのは冬至、大晦日、節分の三が日の日付が変わる24時ちょうど。その時間にその年の方角に貼らないと商売繁盛のご利益が得られないため、どんなに眠くてもお札に糊を貼ってタイミングを待つのだとか。ほかのお店にも、神棚、酉の市の「かっこめ熊手守り」などが飾られている。古くからの伝統大事にする浅草を地元とする人達の「粋」を感じる「浅草観音裏」。浅草寺や浅草神社のお参りの際には足を延ばしてみては。