瀬戸内国際芸術祭開催中の瀬戸内海・阪九フェリーで行く船の旅
愛読書は時刻表、旅色LIKESライターの鉄道旅担当・なおです。岡山・香川両県では今、瀬戸内国際芸術祭2025が開催中です。今回は九州から神戸に向かって航行する阪九フェリーに乗って瀬戸内海を横断、12時間の船の旅を楽しんできました。非日常感が味わえる船の旅。どんな旅になったのでしょうか。鉄道でてきませんが、あしからずご了承ください。
目次
九州の海の玄関口・門司から非日常の船旅へ
金曜、18:45。仕事を定時で切り上げて博多駅から新幹線と在来線を乗り継ぎ門司駅までやってきました。今日はここから兵庫県神戸市まで向かいます。博多駅で乗った新幹線にそのまま乗っていれば20:40ごろには新神戸駅に到着しますが、私は今回あえて時間を使い、阪九フェリーで神戸に向かうことにしました。忙しなく働く日常から解放されるには、フェリーは最高の移動手段です。門司駅から新門司港フェリーターミナルへは無料の貸切バスが連絡しています。16:25と、18:55(月曜から木曜は17:35)に駅前から発車しますので乗り遅れないようにしましょう。
バスに揺られて20分ほどで阪九フェリーが出航する新門司港フェリーターミナルに到着しました。奈良にもありそうな神殿を模した建物。知らない人が見たらこれがフェリーターミナルとは思わないでしょう。ここからは神戸港のほか、大阪府の泉大津港にも毎日船が出ています。瀬戸内芸術祭だけでなく大阪・関西万博に行くにも便利です。
徐々に神殿が遠のいていきます。
20:00、いよいよ出発。12時間あまりの船旅の始まりです。普段は新幹線で駆け抜ける山陽路を、船を使ってゆったりと移動していきます。
気になる船内をご紹介
少し船内をご紹介しましょう。今回乗船したのは「やまと」。阪九フェリーはほかに「いずみ」「ひびき」「せっつ」を運航しており、「せっつ」と「やまと」は船内が同タイプです。船に入ると広々としたパブリックスペースがあって、テレビを見られるようになっています。最上階には何と露天風呂付きの大浴場があって船に乗りながらお風呂まで楽しめました。但し船が岸に近づいたときは外から見えてしまうかもしれないので注意が必要です。お茶やお土産、阪九フェリーのキャラクター「ふねこ」のグッズ売店は23:00(日から木曜は22:00)まで営業してくれるのでちょっとした買い物に便利です。
レストランも充実しています。夜の営業は21:00までですので早めに行くようにしましょう。サラダや小鉢などの一品物からハンバーグ、ステーキなどの肉料理まで豊富。朝は5:00から営業しており、明け方の海を見ながら食事を取るなんて非日常感を味わうことができます。
「やまと」には様々なタイプの部屋がありますが、今回私が泊まったのはデラックスシングル。コンパクトな室内には洗面台にデスク、ベッドにテレビもついていて一夜を過ごすには十分すぎる設備です。テレビは海上ではワンセグに切り替わり、概ね安定して見ることができました。
船内では今、船がどこを走っているか地図で案内がでています。「やまと」は新門司港から豊後水道を経て瀬戸内海を西から東に向かい、神戸港に向かうのですが、途中、来島海峡大橋、瀬戸大橋、明石海峡大橋の3つの橋の下を通過します。来島海峡大橋、瀬戸大橋は真夜中に通過するのですが、橋の下を通る機会はそうありません。頑張って起きることにします。
深夜、早朝の橋くぐりはこの船旅のハイライト
おはようございます。時刻は1:00を回りました。賑やかだった船内は人影が全くありません。ほぼ全員が眠りについている中、橋の下を通過するのを見るために展望デッキに向かいます。
船は愛媛県の今治市近海を東に航行していました。真っ暗ですが時折ライトを照らした船や島影を見ることができます。iPhoneで撮った写真はだいぶ明るめですが、実際はこれよりかなり暗いです。真夜中に静かに真っ暗な海を眺めるのもいいものです。
風の冷たい展望デッキでしばらく待っていると、来島海峡大橋が見えてきました。今治市と広島県尾道市を結ぶしまなみ海道の最南端の橋である来島(くるしま)海峡大橋。右手の今治川はインターチェンジがあってぐぐっとカーブしているのがわかります。本当は橋をくぐるところも撮ったんですが夜景の撮影は難しく成功することができませんでした。
3:30、今度は瀬戸大橋に近づいてきました。香川県宇多津町、坂出(さかいで)市あたりの瀬戸内工業地帯のコンビナートを眺めながらその下を潜っていきます。瀬戸大橋は瀬戸内海を渡る橋の中で最も大規模な橋。鉄道と道路の二層構造。その下を一瞬で潜り抜け、船は神戸に向かって走っていきます。このあと、船は明石海峡大橋を渡るのですがこちらは朝。きっとダイナミックな橋の姿を見ることができると期待していたのですが、
見えますか? 明石海峡大橋。
霧! 時間的に少し出遅れたのもあったんですが、濃い朝霧に包まれてうっすらとしか見ることができませんでした。この時期、瀬戸内海では晴れて風の穏やかな日には放射冷却で朝霧が出やすいそうで、気象条件がそろって濃い霧が出ました。「やまと」は定刻通り航行しましたが小型の定期便は欠航したものもあったようで、瀬戸内国際芸術祭に行く方は注意が必要です。
12時間の旅もラストスパートへ
時刻は8:00を回り、船は港町・神戸に近づいてきました。12時間の快適な船旅もいよいよ終わろうとしています。神戸にはフェリーターミナルがいくつもあるのですが、阪九フェリーは六甲アイランドに入ります。港からポートライナーの六甲アイランド北口駅までは無料で、阪急御影駅までは230円でバス送迎してくれます。
◆阪九フェリー
運航区間:新門司港から神戸港、新門司港から泉大津港
運航日:毎日運航
※運航時刻、運賃はホームページでご確認ください。
神戸からも瀬戸内芸術祭アクセスは可能!
最後に瀬戸内国際芸術祭へのアクセス情報をご紹介します。瀬戸内国際芸術祭は岡山県玉野市の宇野港や香川県高松市の高松港などから各島へ船で向かうのが一般的ですが、神戸からも小豆島に船が出ています。神戸三宮フェリーターミナルから土休日は11:20、平日は13:00に小豆島の坂手港までジャンボフェリーが出ていますので、神戸で少し観光したあと再びここから船旅に出ることができます。船の数が限られるのが難点ですが、ゆっくり時間を取れる方でしたらこの行き方もおすすめです。小豆島からは土庄港から豊島、豊島経由で直島、犬島などの各島にもアクセスできます。
瀬戸内国際芸術祭2025の会期は
春会期は4月18日~5月25日
夏会期は8月1日~8月31日
秋会期は10月3日~11月9日
となっており、この他の期間は芸術作品を見られないものもありますので注意が必要です。
おわりに
半日かけて九州から神戸までを移動した阪九フェリーの旅。忙しない現代社会にあっては目的地にいかに早く行けるかが重要視されていますが、せっかく旅するなら移動時間も楽しみたいもの。非日常感を味わえるフェリーでの移動は始終わくわく感が止まらない、最高の体験となりました。瀬戸内海は年中穏やかで船酔いしにくいのも安心です。日常的に船に乗らない方なら絶対楽しめる。そんなフェリーの旅を旅のスパイスにくわえてみてほしいなと思います。