1日7組限定! 秩父の隠れ宿 「二百年の農家屋敷 宮本家」で元力士が紡ぐ唯一無二のひととき
埼玉県秩父郡小鹿野町には、大相撲元幕内力士の剣武(つるぎだけ)で12代目当主・宮本一輝(かずてる)さんが運営する「二百年の農家屋敷 宮本家」があります。幕末から続く農家屋敷を改修した旅館で、相撲文化と秩父の里山の魅力を融合させた特別な場所です。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で埼玉県初の入選を果たしました。囲炉裏で味わう地元食材の料理や、こだわりの貸切風呂、BARで楽しむ自家製山の実酒で贅沢なひとときを過ごした旅色LIKESライター・相撲旅担当のさっちもが大人の癒し旅をご紹介します。
目次
「埼玉県おもてなし大賞」にも輝いた、「二百年の農家屋敷 宮本家」
バスの大きな窓から眺める秩父の美しい景色は格別。
西武秩父駅から無料送迎バスで約20分。秩父市街を抜け、山々を眺めながら宮本家がある小鹿野町へ向かいます。あいにくの雨模様でしたが、晴れた日の道中は、夏の日差しに輝く深い緑や、キラキラと光る荒川の清流が美しいのだそう。
宮本家に到着すると、「ただいま」と口にしたくなる、どこか懐かしい安心感に包まれました。広大な敷地に建てられた「二百年の農家屋敷 宮本家」は、1975年に宮本さんの父、猛治(たけじ)さんが民宿として開業。約200年前からある母屋を客室に、馬屋はフロント、蔵はBARに改修され、畑で採れた新鮮な野菜を使った里山料理で豪農文化を体現する宿に。その後、大相撲の世界を離れた宮本さんが経営を引き継ぎ、力士の風格を活かした「日本の原風景」を感じる旅館へと発展させました。
一着一着、趣の異なる特別な館内着
フロントで貸し出される館内着は、力士が実際に着用する浴衣の生地で仕立てられた特別な一着。力士の四股名や相撲部屋の名前が入った反物は、力士がお中元として贈り合うのが習わしとされています。この希少な生地を使った浴衣を着られるのは、宮本家だけ。
フロントの入口には、樹齢約50年の秩父産杉で作られた「てっぽう柱」※1があり、宮本家にあるパワースポットのひとつとして存在感を放ちます。その柱に触れて、エネルギーを感じてみてください。
※1 相撲の伝統的な稽古方法「てっぽう」をするための柱。力士は、柱に向かって左右のつっぱりを繰り返す。相撲部屋には必ずあるもの。
2つに折りたたんで座る力士座布団はフッカフカ。
宮本さんが現役時代に使用していた力士座布団※2もフロントの中央に展示されています。大きさは約90~100センチメートル四方で、厚さ約20センチメートル、重さ約4キログラムという堂々とした姿は、滅多に見られない貴重な品。じっくりとその風格を味わいました。
※2 土俵下の控えで、幕内力士だけが使う事を許されるしこ名入りの座布団。出世の証。
同じ部屋は2つとない、個性豊かな客室
宮本家の客室は全部で7部屋。母屋に3部屋、宮大工仕立ての別邸には4部屋あります。
私が宿泊した客室は、母屋にある「力士の間」。2024年に改装され、6畳と8畳の和室に加え、フローリングの寝室が備わり、壁面を飾る大きな力士の絵は圧巻です。名前の通り、部屋の随所に相撲や力士にちなんだ品々がちりばめられ、相撲ファンの心を掴んで離しません。
他にも、戦国武将・小田原北条氏ゆかりの装飾品が華やかな「武将の間」や、著名人がひそかに訪れる最上級客室の「隠居の間」、庭園を望める客室露天風呂が魅力の「嫁の間」など個性豊かで、唯一無二のものばかり。何度泊まりに来ても楽しめそうです。すべての部屋に宿泊して「宮本家マスター」になりたい! そんな思いが湧き上がりました。
約50種類の自家製山の実酒が楽しめる蔵BAR
庭園には約150年湧き続けている井戸(写真右)がある。
夕食前に案内されるのが、蔵を改修した「蔵BAR」です。棚には約50種類ある自家製の山の実酒や、「キハダ」「黒文字※3」といった珍しいお酒がずらり。愛らしい力士のイラストが描かれたグラスで提供され、相撲好きの心を盛り上げます。山の実ジュースも用意されているので、アルコールが苦手な方でも安心。
※3 クスノキ科の植物。殺菌消毒作用があり、昔は、枝を歯ブラシとして使用していた。
「蔵BAR」の2階は展示室になっており、宮本家に代々伝わる骨董品や、力士時代の貴重な品々が飾られています。
絶品ちゃんこ鍋と秩父の郷土料理を堪能
食事は、1960年代前半の農家の食文化を体感できる、素朴だけど、色とりどりのごちそう。「おなかいっぱい食べてもらいたい」という当主の心遣いから、懐の深さとボリュームはまさに横綱級。野菜はすべて直営農園「秩父ふるさと村」で採れたものです。なかでも、感動したのは囲炉裏で焼き上げた大きなピーマン。肉厚でみずみずしく、ピーマンとは思えないほどの甘みがあり、とてもおいしかったです。
ちゃんこ鍋のスープは季節ごとに替わる。この日は塩ちゃんこ。
新鮮な野菜がふんだんに使われたちゃんこ鍋は絶品。相撲部屋のちゃんこ鍋は、力士の体重を増やすために砂糖をたっぷり加え、稽古で大量の汗をかくため塩も多く使用します。そのため、濃いめの味付けになっているのが特徴ですが、宮本家のちゃんこ鍋は、豊富な野菜から出た自然な甘みと、鶏出汁の深い旨味がおいしさの秘訣。調味料に慣れた舌をリセットしてくれるような秩父の恵みに、思わず笑みがこぼれます。農家屋敷ならではのヘルシーなちゃんこ鍋は、ここでしか出合えない特別な一品です。
当主自慢の貸切風呂で、心を解き放つ極上の時間
館内には4つの貸切風呂があります。薪で沸かす五右衛門風呂の「大釜風呂」、相撲部屋に入門したかのような「力士風呂」、母屋と別邸にひとつずつある「庭園風呂」は、入浴しながら四季折々の景色が眺められ、どれも宮本家のこだわりを感じました。
現在も14代武蔵川部屋の流れを汲む相撲部屋では、稽古後に唱えられている。
また、力士風呂に掲げられた「力士修業心得」は、私の生活にもそのまま取り入れたくなる文言ばかり。力士の気持ちを味わって、1日の終わりに唱えてみませんか?
五右衛門風呂の「大釜風呂」は、その希少性から大人気。薪で湯を沸かしているので、耳を澄ませばパチパチと心地よい音が聞こえてくるかもしれません。釜は大人2人が入れる大きさです。初めての五右衛門風呂はぜひ一人占めでゆったりとしてみてください。お湯が熱いと感じたら差し水で調節でき、釜のフチも触れる温度なので安心です。
おわりに
色紙にサインと志の言葉をリクエストしたところ、当主の粋な計らいで、手形入りの特別な色紙に書いてもらえた。
当主の宮本さんが志とする言葉は「唯一無二」。その言葉が示す通り、宮本家は歴史ある農家屋敷と相撲文化が結び合う「日本にただひとつの力士の宿」。ここでしか味わえない貴重な体験に、心も体も癒されました。現在、宮本さんは「二百年の農家屋敷 宮本家」のほかに、団体の受け入れが可能な温泉旅館「宮本の湯」、農場体験・ふるさと体験・自然体験の3つのツーリズムが楽しめる「秩父ふるさと村」、貸切ペンション「森の風みやもと」を経営しています。力士時代に培った不屈の精神で、敏腕実業家として伝統を守りながら、「前へ前へ」と攻め続けます。宿泊は1日7組限定なので、予約はお早めに!
◆二百年の農家屋敷 宮本家
住所:埼玉県秩父郡小鹿野町長留510
電話:0494-75-4060(9: 00~21: 00)
定休日:年中無休
※小学生未満のお子様の受け入れは「母屋 力士の間」のみ
※日帰りプランあり















