温泉観光地は想像以上におもしろい。別府温泉で“ちゃんと旅を考える”

旅色LIKESライターのちゃん旅担当・美娜です。今回のちゃん旅は大分県別府温泉。温泉地観光からは想像できない過ごし方をしてきました。温泉の成分を五感で感じられる? 「地獄めぐり」だけじゃない別府温泉の新しい観光? もっとたくさんの方々に知ってほしい、別府でのちゃん旅を紹介します。
目次
日本の温泉の1割は別府にあり? 旅前に知ればおもしろくなる豆知識
大分県は日本有数の源泉地と湧出量を誇る温泉県です。源泉総数は5,086、湧出量は29,121リットル/分でともに全国第1位。日本の温泉の1割は大分県に集中しているといわれています。なかでも別府市は源泉総数2,832、湧出量101,910/分で、別府市内には「別府八湯」とよばれ、8つの温泉があります。それぞれ効能も違うので、温泉巡りのしがいがあるのも魅力のひとつです。立ち寄り湯から大衆浴場、湯治湯、温泉の噴気を利用した料理が食べられる食事処などもあり、まさに温泉と人々が共存しています。
「明礬(みょうばん)温泉」で大地の恵みを五感で感じる

別府一の高台に位置する明礬温泉は、「別府八湯」のひとつで江戸時代から続く温泉です。「明礬」の採取地として栄え、やがて他県産や輸入品が現れたことから明治前期に湯の華製造と旅館の開業に転向。以降は湯治湯として発展しました。現在は世界唯一の技術で作られている天然の入浴剤「湯の花(※)」を軸に、ただ温泉に浸かるだけでなく、五感で大地の恵みを感じられるスポットが豊富。その中から今回は二つ紹介します。
※湯の花:別府温泉の湯の花は、青粘土と温泉の噴気ガスが「湯の花小屋」という製造施設の中で作用して結晶化したものを採取し、製品化してたもの。
大地の恵みを味わって、目の当たりにできる「明礬温泉 岡本屋売店/明礬地獄」
1875(明治5)年創業の旅館・岡本屋が運営している売店で、温泉の噴気(別名:地獄)を利用して調理される「地獄蒸したまご」や大分名物のとり天などが食べられます。特に「元祖地獄蒸しプリン」は、1988(昭和63)年から地獄蒸し製法、いわば“マグマの力”を使って職人が一つひとつ手作りしている、まさにここだけの味。売店前には藁葺の三角屋根の湯の花小屋があり、噴気と硫黄の香りを肌で感じながら、湯の花の製造過程を見学できます。明礬温泉の湯の花はほかの温泉地とは異なり、温泉蒸気を結晶させて作られています。この製法は世界唯一で、2006(平成18)年には国の重要無形文化財に指定されました。小屋の中では噴気で高温になった地面や硫黄の香り、藁葺小屋の中で咲く湯の花など、生きている自然の力を実感できます。
◆明礬地獄 岡本屋売店/明礬地獄
住所:大分県別府市明礬3組
電話:0977-66-3228
営業時間:8:30~17:30
定休日:無休
二種類の泉質でじっくり体を癒せる「別府明礬温泉 えびすの湯」
明礬温泉には家族風呂や共同浴場が多く点在しており、人混みもなく静かに温泉に浸かれるエリアもあります。そのなかで「えびすの湯」は、硫黄泉と単純泉の二つの泉質を有した施設です。ほのかに香る硫黄と白く濁った湯が特徴の硫黄泉は、硫化炭素ガスが含まれるため、血圧を下げる効果があるそう。また疲労回復、皮膚病などの治癒にもいいそうです。熱すぎないので、長湯してもあまり疲れませんでした。一方、単純泉は無色透明の弱アルカリ性で、疲労回復、ストレス解消に効果があるそうです。どちらもお湯がとてもやわらかく、お湯の流れる音や吹き抜けてくる風が気持ちよく、とてもリラックスできます。
◆別府明礬温泉えびすの湯
住所:別府市明礬4組
電話:0977-67-5858
営業時間:10:00~22:00 ※最終受付21:00
定休日:不定休(月に一度メンテナンスあり)
日帰り料金:大人1,300円、中学生600円、小学生400円
別府温泉の新名所は香水作り!? 「大分香りの博物館」

「別府八湯」の一つ、「鉄輪(かんなわ)温泉」から徒歩約10分の場所には「大分香りの博物館」があります。ここでは全国でも珍しい「香り」をテーマにした博物館で、世界中から集めた香水コレクションをはじめ、歴史的に貴重な香水にまつわる品を鑑賞できます。が、なんとここは見学だけでなく、香水作りも体験できるのです! 一体どのように香水を作るのでしょうか。
化学実験のような香水作り

まずはスタッフの方から香水について簡単なレクチャーを受け、その後好きな香りを選びながら調香し、香水を作ります。香水は時間の経過とともに香りが変化するのが特徴で、香りの成分の発揮速度(香りの飛び方)の違いから「トップノート」、「ミドルノート」、「エンドノート」と呼ばれています。トップノート、ミドルノートは6種類、エンドノートは4種類あり、各ノートからお気に入りを決めます。匂いがわからなくなったら、コーヒー豆か、自分の手首を嗅ぐとリセット。迷いながらも3種で20ミリリットルになるように量を決めます。配合は自由ですが、各ノートから必ず1種類を入れると、バランスが取れやすくなるそう。一連の作業はまるで子どものころ経験した化学実験のようでした。どういう結果になるかを想像しながら目の前にある香水とにらめっこです。
化学実験で得られたのはほかでは得難い”充実感”
次は全部で30ミリリットルになるように量を足していきます。ここでは全てのノートから香りをチョイス。分量は自分の直感と感覚で決めます。私は最初の香りからあまり離れず、迷っていたもう1種類の香りを少し足して完成。体験時間は約50分でしたが、あっという間でした。調香中はとにかく夢中で、頭の中で想像もできない香りをずっと探して、迷って、どの香りが1番良くなるだろうか、どれが私の香りだろうか、と考えていました。完成した時は「香水作ってしまったぞ」という満足感と「私の作った香水が1番いい香りだぞ」という誇らしい気持ちで、とても満たされた気持ちになりました。
◆大分香りの博物館
住所:別府市北石垣48-1
電話:0977-27-7272
営業時間:10:00~18:00(カフェテリアは10:00~18:00)
料金:入館料一般700円、高校生500円、小・中学生300円、体験料2,800円(持ち帰りの香水30ミリリットル、香水ビン含む)
今回の「ちゃん旅」の気づき
今回のちゃん旅では、日本の温泉の1割を占める別府の特徴は、名所だけでなく特産品などからもっと多角的に感じられることがわかりました。別府温泉、もったいない……。ですが決してマイナスの意味ではありません。「もっとたくさんの方々に知ってほしい」と痛感したのです。別府温泉というと、「湯気がブクブク浮き出る地獄めぐりが楽しい」「湯気を使ったグルメがおいしい」など、すでに有名な観光コンテンツがたくさんあります。しかし、目玉スポットの背景には世界唯一の製法でできる湯の花があるんだ、とか、新しいスポットも誕生しているんだ、など旅に出る前の下調べで、疑問を持ったり興味を持ったりできます。温泉観光地への先入観や固定概念を脱ぎ捨て、ぜひ足を運んでみてください。体験しないと気づけない、楽しいことや知らないことが待っています。